(Jタウンネットより)
東北のお土産屋でよく見かける木製の人形「こけし」は、リンゴのような丸い頭に円柱の胴体がくっついた形をしている。
一般に「伝統こけし」と分類されるタイプは東北6県に10系統が存在する。その表情や絵柄は産地によって様々な表情をしているけれども、こけし黄金比というか、頭と胴体の比率等は大差がない。遠くから見ても「あっ、こけしだ!」と分かるシルエットをしている。基本ラインを守りつつわずかな差異を出すことに、東北人は美を見出しているのだろうか。
一方で、型にとらわれない自由な発想で製作する「創作(近代)こけし」なるものも存在する。その本拠地は東北ではなく群馬だ。創作こけしで全国シェアの約8割を占めている。
ぐんまちゃんこけしを手がける「卯三郎こけし」(群馬県榛東村)の公式サイトによると、群馬でこけしが作られるようになったのは戦後からで、それ以前はケン玉・こま・玩具を作っていたという。
東北地方から見れば新参者だが、県や地元市町村、観光協会、生産者組合は、品質・意匠の改良と技術の向上のため、毎年コンクールを開催している。
群馬のこけしは手足もついている
過去54回実施されたコンクールは、「創作こけし」「新型こけしおよび木地玩具(市場性のある作品)」「一般の部(アマチュアの製作したこけし、木地玩具等)」の3部門に分かれる。
創作も新型も一緒のような気がしないでもないが、前者がオートクチュール、後者がプレタポルテということか。
いったいどんな作品が評価されているのか。2014年の受賞作品を紹介しよう。
内閣総理大臣賞を受賞した作品は、妖精が木に腰かけたような姿をしていて、手足も見える。伝統こけしを見慣れた人から見れば、「これはもう”こけし”の域を超えているのでは…」という言葉が口を突いて出てきそうだが、内閣総理大臣賞ということで、いわば首相のお墨付きだ。
次は経済産業大臣受賞作。母親がわが子を愛でている姿をこけしにしたのだろう。それにしても、頭部が2つあるこけしはコロンブスの卵的発想かも。
農林水産大臣賞は、ヘルメットのような髪型に、胴体部に葛飾北斎の浮世絵「富嶽三十六景」の1つ、「神奈川沖浪裏」を取り入れている。いかにも外国人ウケしそうだが、ポップなセンスを感じるのは筆者だけだろうか。
実は創作こけしの技法と人気キャラの融合は、以前から注目されている。
先に取り上げた卯三郎こけしは、木製フィギュアともいうべき作品を多く手がけていて、ミッキーやスヌーピー、ミッフィー、ドラえもん、スパイダーマンといった作品をオンラインショップ等で販売中だ。
同社のファンはツイッターにお気に入りの商品を投稿している。なるほど、これは欲しくなる。
ワシの父さんが買ったんだけど
卯三郎こけしなかなか可愛いね pic.twitter.com/ukGgXWf8vC
– into (110keutoi0w0) 2015, 1月 16
退院祝いにドラちゃんとドラミちゃんの卯三郎こけし 頂きました。本当にありがとう?こけしもらったの初めてだよ。笑 大切に飾らせて頂きます。 全部手作りなのがすごい pic.twitter.com/l3My6G7wHW
– fumi (fumi_TA_) 2014, 12月 6
今年のコンクールにはいったいどんな作品が披露されるのだろう。こけしマニアならずとも気になるところだ。
全群馬近代こけしコンクールの展示会には、死ぬまでに一度行っておかねばなるまいと思ってる
https://t.co/tG5zsA24Np
– Parent thief (Oyadorobou) 2013, 7月 21
2015年の「全群馬近代こけしコンクール」は、2月5日から9日までの5日間、群馬県庁県民ホールで開催される。200を超える作品が一堂に並ぶ予定だ。