(Jタウンネットより)
季節によって景色が変化する富士山だが、山すそから中腹にかけて青くて、雪に覆われた山頂が白く見える――そんなイメージを持つ人が多いのではないか。
もちろん富士山は年中青く見えるわけではない。晩夏から初夏にかけてのシーズン、日光を浴びて山の地肌が赤く染まる「赤富士」もまた魅力的だ。ちなみに山頂に雪が積もったとき紅色に見えるときは「紅富士」という。
そんな夏の富士山をモチーフにした炭酸飲料が発売されている。木村飲料から2014年3月に発売された「赤富士サイダー」は、人工着色料ではなく山梨県産ぶどうの果汁を使用している。

赤富士サイダー(写真は全て編集部撮影)
ラベル正面に堂々と書いてある「山梨県産ぶどう 果汁10%未満」。夏シーズンに山梨に旅行したとき、現地で赤富士を目撃した人もいるだろう。筆者もその一人で、10年ほど前に見た景色が脳裏に蘇ってきた。
「山中湖行ったなー。楽しかったなー」。思い出に浸りながら製造者の情報欄を眺めていると、次のような記載が目に飛び込んできた。
「製造者:木村飲料株式会社 静岡県島田市宮川町××××番地」
さらに使用している天然水は静岡県富士市で採水していることも書いてある。

静岡と山梨の協調を象徴する商品かも
山梨で収穫した原料を商品のアピールポイントにしているのに、メイドイン静岡ってどういうこと? 調べてみると、製造元の営業本部が発行した「きむら新聞」68号に、商品開発の経緯が書いてあるではないか。
「既存の富士山サイダーは静岡県側から富士山をイメージしたもの。世界文化遺産登録を受け、お土産商品として人気が急上昇する一方、片側だけでは富士山の魅力を伝えきれていないのではと考えるようになった」
「赤富士と言えば山梨県。中味もこだわり山梨県のぶどう果実を使用した」
「水は、モンドセレクションにて最高金賞を受賞した点円錐(富士山萬年水)を使用、話題性とご当地性の二つが兼ね備えられている。魅力も2倍だ」
昨年は県境問題で世間を騒がせた静岡と山梨。しかし民間レベルではかけがえのない存在としてお互いを意識しているのかも――。
静岡製には正直びっくりしてしまったが、両県の関係の変化に日本人の1人として胸が熱くなる。少しクールになりたくて1本空けることにした。
サイダーの炭酸は結構強めだ。何気なく開封したところ泡があふれ出る。その勢いはしばらく止まらなかった。
さらっとした飲みごたえで後味が良い
普段ならビンのまま飲むところだが、撮影のためグラスに注ぐ。内容量が240ミリリットルしかなく、その上先述の通り若干あふれてしまったため、大きめのグラスはやや余った。

液体は若干紫がかった赤色をしている。本場のぶどう果汁を使用しているだけに、コクはそれなりにありそうな印象を持つ人もいるだろうが、飲んだあとに口の中がベタベタしないのは意外だった。良い意味で後を引かず、サラサラしている。
山梨のワイナリーを自家用車で巡るとき、酒の飲めないドライバーにはピッタリだろう。
それ以外のシーンでもお勧めできる商品なのは言うまでもない。

1年前に筆者が飲んだ「富士山コーラ」は人工的な印象を強く受けたが(参照:なぜ合体させた…緑茶とコーラが1つになった静岡のご当地ドリンクが摩訶不思議すぎる)、天然指数は赤富士サイダーの方が高いと思われる
。
ネーミングの面白さを基準に手に取った赤富士サイダーだったが、飲料として純粋に評価できる。上記の「きむら新聞」にも出てきた静岡県側の富士山サイダーはどんな味なのだろう。買いそびれてしまったが機会があれば飲んでみたい。