街のコト

変わりゆく マヤの伝統的な生活風景/ケツァルテナンゴ(グアテマラ)

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(ライター:片岡 恭子)

日本人にはコーヒーの産地としておなじみの中米グアテマラ。首都グアテマラシティに次ぐ第二の都市ケツァルテナンゴは標高2300m。スペイン語学校と語学留学で滞在する外国人相手の店が多いおしゃれな町だ。近郊には温泉が湧き、周囲は山に囲まれ、山間には村がある。

周囲を山に囲まれたケツァルテナンゴ

周囲を山に囲まれたケツァルテナンゴ

マヤの末裔である先住民の人々は、ウィピルという民族衣装を着ている。ウィピルは腰機で織った布を縫い合わせた貫頭衣だ。村ごとに特徴的な模様が織りこまれたウィピルは、コミュニティーのユニフォームであった。

しかし、交通の発達に伴い、まず男性が洋服を着るようになった。村同士の交流が生まれ、他の村のウィピルを着る者も現れた。近頃は安く手に入る中国製のミシン刺繍やレースをつけたものが好まれる。デザインに流行りすたりが見られるようになり、伝統的なものから現代的なものへと変わりつつある。

ウィピルと同じく、人々の生活も急速に近代化しつつある。例えばケツァルテナンゴ近郊のスニル村では、畑の野菜にスプリンクラーで散水している。農作物をアメリカに輸出した稼ぎで子どもをアメリカに留学させる家族も増えたそうだ。ちょっと前まで地方ではほとんどの家庭が薪で煮炊きをしていたが、煤が喘息の原因になるということもあり、プロパンガスが普及しつつある。

近代化しつつあるが、スニル村の月曜市にはまだまだウィピルを着た人々が大勢集まる

近代化しつつあるが、スニル村の月曜市にはまだまだウィピルを着た人々が大勢集まる

それでも、まだ地方都市から少し足を延ばせば、マヤの伝統的な生活を営む村があり、村の定期市には古来のウィピルを着た人々が大勢集まる。着物を脱いで洋服を着出したかつての日本が、今の変わりゆくグアテマラと重なって見える。

片岡 恭子(かたおか・きょうこ)
1968年、京都府生まれ。同志社大学文学研究科修士課程修了。スペイン留学後、3年に渡って中南米を放浪。2016年現在、50カ国を歴訪。著書に『棄国子女-転がる石という生き方』(春秋社)。

 

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