街のコト

鉄格子だってアート!/サンティアゴ・デ・クーバ(キューバ)

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(ライター:石田ゆうすけ)

キューバとアメリカが半世紀ぶりに国交正常化。そんな報が去年の7月に流れたとき、「キューバが変わってしまう」と少々慌てた。

それで、この1月に初訪問したのだが、マクドナルドやスターバックスといった大型チェーンの波はまだ来ておらず、40~50年代のクラシックカーや馬車が、中世を思わせる町の中を走り回っていた。話に聞いていたとおり、本当にタイムスリップ感覚が味わえる、おもしろい国だった。

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コロニアルな街並みの中をクラシックカーが走り回る

家も独特で、まず目を引くのは鉄格子だ。中南米では治安の悪さから、窓や戸に鉄格子のはまった家は珍しくなく、そのおかげでやはり多少殺伐としているのだが、キューバにはその物々しさがない。なぜなら鉄格子には凝った意匠が施され、それ自体がまるでアートのように華麗だからだ。

唐草模様が多いが、シマウマや魚など生物をモチーフにした遊び心溢れるデザインもよく目にするため、見ているだけでも楽しい。家ごとに意匠が違うから、専門の鉄格子職人がいるのかもしれない。

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キューバ中部のカマグエイで見かけたアートな鉄格子

社会主義で貧しいイメージのあるキューバだが、こと町を歩いている限りそれは感じなかった。列柱の並ぶコロニアル建築に、カリブ特有のカラフルな色使い。どの町も本当に美しい。さらには社会主義ならではの教育環境のよさは芸術方面にも当てはまるらしく、どの町もギャラリーが多いうえに、アート作品そのものが町に溢れていて、まるで芸術祭を見ているようだった。

鉄格子という元来不穏なものさえも、デザインによって、その意味を忘れさせ、町に華やかさすらもたらしている。キューバ人の『粋』を愛する力なんじゃないかな、と思えた。

石田 ゆうすけ(いしだ・ゆうすけ)
旅行作家。自転車世界一周の模様をつづった『行かずに死ねるか!』(幻冬舎)が20万部を超えるヒット作に。全国の学校や企業で夢ややる気をテーマに講演も。ブログ『石田ゆうすけのエッセイ蔵』

 

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