街のコト

不動産価格が高騰中! 家を政府とシェアして購入/ロンドン(イギリス)

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(ライター:冨久岡 ナヲ)

イギリスの家は、古くなっても値段が落ちないどころか年々上がる。だから若いうちに小さなアパートを一つ買えば、買替えながらいつか大きな持ち家を手に入れることが可能だ。これはずっと、イギリス人の典型的ライフプランだった。

ところが最近、不動産価格の異常な高騰ぶりで、特にロンドンではこのプランが通用しない。高級百貨店ハロッズがあるナイツブリッジなどの一等地では、2DKのマンションが900万ポンド(15 億円)もする。普通の住宅地でも1億円を超えるのはざら。ロンドン住民の平均収入は3万4000ポンド(約550万円)。どう背伸びしてもワンルームのアパートですら手が出ない。

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イギリス人は新築よりも古い家が好き。だがロンドンでは、築250年位の憧れのテラスハウスは一軒4億円を超える高嶺の花

 

このクレイジーな現象は、海外の富裕層がこぞってロンドンの不動産に投資していることが一番の原因だ。国を挙げて投資家を歓迎した結果、若い世代が「最初の一軒」を買えなくなったばかりでなく、教師や看護師、消防士など、社会が必要とする職業の人々がどんどんロンドンを去ることに。

この対策の一つとして政府は、国(公団)と購入者が家を共同で買う「共同所有制度」を導入。家の価格の25%以上に相当する分を購入者が、残りを公団が購入し、公団所有分に対しては家賃を払う。頭金もローンの借り入れ金額も少なくてすむこの制度を利用すれば、若い世代が家を買いやすくなる。家の価値が上がるにつれ、持ち分も値上がりし、それを担保に所有分を増やせる仕組みだ。どんな家でもこの制度で購入できるわけではなく、専用に建てられた新築物件が多いが、買えるだけマシ。おかげで落ち込んだ持ち家率も何とか持ち直しそうな見込みだ。

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ロンドンオリンピック会場跡地に建つ新築マンションイメージ。共同所有制度の適応物件もある

冨久岡 ナヲ(ふくおか・なを)
ロンドン在住ジャーナリスト。イギリスのビジネスや文化など広範なテーマで記事を執筆するほか、日本からの投資用不動産視察コーディネートなども行っている。

 

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