(ライター:向野 よし子)
環境保全、CO2削減がますます厳しく求められる昨今、ヨーロッパの都市では数年前から「車のない日」というイベントが行われています。大都会では、特別車両の許可証の発行、当日の環状線の取り締まり、市内のチェックなど大掛かりな準備が必要なため、毎年行うのは大変なことなのでしょうが、100万人都市のブリュッセルでは9月の第3日曜日の定例行事としてしっかり存続しています。

環境保全イベント「車のない日」の様子。街の自動車道路は歩行者でにぎわっている
その日は市内の公共交通機関は無料です。街の自動車道路は歩行者、自転車で走る人、ローラースケーターでにぎわいます。馬に乗った人までいます(ただし、緊急車両や路面電車(トラムウェイ)が通るので注意が必要)。
昨年、仲間たちと路面電車に乗った際は、ちょうど公共交通機関の記念年で、トラムウェイは50年代のアンティークでした。今はどこにも見かけない車掌さんがちゃんと当時の制服姿でチンチンと出発合図の紐を引っ張っていました。車掌さんは昔のトラムウェイの絵はがきの販売も担当していて、子どもやお年寄りと会話を交わしている様子が和やかでした。

公共交通機関の記念年には、アンティークな路面電車が登場。

車掌さんも当時の制服姿でお出迎え
わが家の子どもたちは、自転車で町を回り、トンネルだの、普段は通ることができない大きな自動車道路を走って面白かったとのこと。このイベントの最初の年、自転車に乗れない私は置いて行かれ、近くの公園に行くと、人っ子一人いないという経験がありました。後に「車のない日に普段から車のない場所に行く人はいない」と言われたのでした。
向野 よし子(こうの・よしこ)
東京都生まれ。青山学院大学文学部英米文学科卒業。在学中にエールフランスに就職。2年勤務の後、パリに留学。1969年にベルギー航空日本人スチュワーデス第一期生としてベルギーに渡り、以来ブリュッセルに居住。現在は通訳、翻訳業。