(ライター:小島 瑞生)

街の中心地や住宅地で牛たちが草を食べる姿。スイスではごく普通の風景
長く住んだアイルランドからスイスに引越して来た5年前、友人たちに「スイスの人たちは『音』に敏感だから、騒々しくしたら文句を言われるよ!」と警告を受け、ビクビクしながらこの国での生活を開始しました。
特にマンション等で暮らす場合、近隣の生活音が聞こえやすいからか、夜10 時以降にシャワーを浴びたり、トイレの水を流したりすると苦情が来ることもあるようです。私自身も一度、階下の住人から「夜に歩き回らないでほしい。歩く音がうるさくて眠れない」というお叱りを受けたことがあり、それ以後は昼夜問わず、忍者のように抜き足差し足で家の中を歩くようになってしまいました。
その一方で『伝統的』な音にはとても寛容なところがあるように思います。どの町・村にも教会の鐘が必ずあるのですが、夜間でも15 ~30分ごとに鳴り響くところがあり、果たして教会の近くに住む人たちは寝不足にならないのかと、他人事ながら心配になってしまいます。
また、以前住んでいたわが家の近くには牧場があり、そこに放牧されていた牛たちが付けている大きなカウベルが、夜が更けてもガランガランと音を立て続けるため、数週間後に牛たちが別の牧草地へ移動するまで、毎晩カウベルを子守唄に床に就く羽目になったのでした。

牛たちのカウベル。どこにいても居場所が分かるようになっている
やっとカウベルの音から解放されたと喜んでいたら、今度は高らかに響くアルペンホルンの音に起こされました。その日は隣接したレストランで披露宴があり、そのための演奏リハーサルを週末早朝から行っていたようです。こんな感じで次々と起こる、ユニークな『騒音』に苦笑いの日々です。

伝統衣装に身を包み、アルペンホルンを演奏する男性たち
小島 瑞生(こじま・みずき)
2009年からスイス・フリブール在住。1998~09年まではアイルランドを生活拠点とする。現在は、フランス語圏とドイツ語圏を日々行き来しながら、雑誌やウェブサイト、ラジオ、テレビといったメディアを通してさまざまな情報を発信中。