街のコト

お腹にれんがを持って生まれてくる(ベルギー)

この「記事」が気に入ったらみんなにシェアしよう!

みんなにシェアしよう!

(ライター:栗田 路子)

ベルギー人にとって、家を持つことは、マンションや建売住宅を買ったり、住宅メーカーにお手軽住宅を発注することではない。その家づくりへのこだわりは周辺ヨーロッパ人とは比べ物にならず「お腹にれんがを持って生まれてくる」といわれているほど。実際、れんがどころか、屋根瓦、目地、タイルやフローリング、扉やドアノブまで、一つ一つ丁寧に調べあげ、吟味し、必要量を計算し、価格を交渉して自ら発注。そして左官、木工、電気工事など、あらゆる業者を自分で選び、工程を監督する。完成までに1年以上かかるのが普通だ。

人生3回目、老後生活用の住宅を吟味して建てているA氏。パッシブ・ハウス工法で冷暖房は不要だという

手先が多少器用なら、自宅の地下室には、コンクリートミキサーや、ダイヤディスクの電動カッターまで持っている。そこまでではない人でも、建築やインテリアの雑誌を穴の開くほど眺めまわし、年に一度の建材見本市にいそいそと出かける。30歳代前半であっぱれなマイホームを建てた友人は、「幼い頃から、親戚や友達の家に行く度に自分の好みを築き上げて育つから、30歳にもなれば、理想の家ははっきりしていて妥協はできない」という。

若いころ、片田舎のガラクタ屋で見つけたステンドグラス、そんな逸品のために家をつくる人も少なくない

昨今では、暖房をほぼ必要としないゼロエネ住宅「パッシブ・ハウス」といった、経済的で環境に配慮した住宅への関心が高まっている。だが、新しいものばかりを好むわけでもない。「古城解体に伴う廃材オークション」などを見つけては、いつか建てるマイホームのために、古いれんがや扉を格安で買い落とし、祖父母の納屋などに保存しておくような人も多い。ベルギーのれんが造りの家並みには、こうした三つ子の魂百までとでもいうべきこだわりがにじみ出ているのだ。

この「記事」が気に入ったら
みんなにシェアしよう!

MATOME