街のコト

「中国」を感じる 大河を臨む国境の町/ミッチーナ(ミャンマー)

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(ライター:中田 浩資)

ミャンマー第2都市のマンダレーから列車に揺られて15 時間。北部カチン州の州都ミッチーナに着いたのは、まだほの暗い早朝6時前だった。せわしない貧乏旅のこと、残りの旅程を考えると、この町での滞在時間は8時間ほどである。

ミャンマーの田舎町によくある駅前の寂れた茶屋に入り、甘い紅茶をすすっていると、やがて朝日が建物を照らし始め、町の全貌が徐々に現れてきた。駅からまっすぐ延びる、辛うじて舗装されたデコボコ道の両側には鉄筋2階建ての古い建物が並ぶ。そのほとんどが、1階は店舗で2階が居宅になっているようだ。2階のベランダが突き出しているのは、店舗がスコールの影響を受けないように考えられた造りだからであろう。

駅から延びる道には鉄筋2階建ての古い建物が並ぶ

さらに駅前通りを進むと、雄大なエーヤワディー川にぶつかる。左に折れたところに朝市が立っていて、頬をタナカ(ミャンマーの伝統的な化粧)で染めた若い女性たちがカゴいっぱいの空芯菜やジャガイモを前に笑っている。市場を離れ、静けさの漂う朝の河畔に腰を下ろし、行き交う小舟をしばらく眺めていると、「转身(体をひねって)…… 两手(両手)……」。

朝市で野菜を売る若い女性たちは伝統的なタナカで頬を染めている

中国語?一瞬耳を疑ったが、どうやら間違いないようだ。見ると、川沿いの公園で10 人ほどの男女がポップ調にアレンジされた太極拳に興じている。そういえばここから中国国境までは100㎞足らずであることを思い出す。昼食に入った食堂の客もほぼ中国系だった。

大河を臨む長閑な国境の町。今度来るときは太極拳の公園の隣のカフェで、エーヤワディー川に沈む夕日を眺め、ミャンマーと中国ミックスの雰囲気を楽しみながらビールが飲みたい。

中田 浩資(なかた・ひろし)
フォトグラファー。ロイター通信北京支局にて報道写真に携わった後、2004年よりフリー。旅写真を中心に、雑誌、書籍などで活動中。共著に「ディープすぎるユーラシア縦断鉄道旅行」(KADOKAWA)など。

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