家のコト

宇田泰子さん「“生活”も再現。ドールハウスの魅力」

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起源は19世紀、ヨーロッパの教育玩具として伝えられているドールハウス。住居や店舗などの建物を縮小して制作、仕様はそのまま同じに「生活の様子を再現」した作品がほとんど。王族や貴族の住居の再現などは、高さ幅ともに数メートル規模のサイズになる作品もあります。ヨーロッパと違い、日本の場合は住宅事情により保管に難があるため、サイズをより小さくしての再現や、仕様を変更したイメージ重視の再現など、古来のドールハウスとは異なる多岐に渡った作品が数多くあります。なお、現在の縮尺サイズは12分の1が一般的です。

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雲の形と木をイメージして名付けたおもちゃ屋「もくもく曜日」。中央のりんごの木は、子供たちが寄りかかって本を読んだり、かくれんぼができるようになっている

独学でドールハウス作りを始め、2011年に仕事でドイツに訪問して、実物のドールハウスが鑑賞できる機会を得ました。
現地に着いてみると、ドールハウスを観るという目的以前に、空港からの移動中であっても、まちなかの建築物の佇まいや建築方法、芸術としか思えない壁面の彫刻など、スケールの違いに感激の連続でした。個人宅や貴族邸宅の佇まいの中には、作品そのものといってよい建物もあり、ドールハウスが作られたのは必然的な事と納得。

都市部には近代建築物も多く見られますが、馬車が走っていた時代の戦火を逃れた建築物などを見ることができます。こうした建物の一部では、見上げる程の高い建物であっても、大黒柱を使用せずに積み木のように重ねて増築してあるものもあり、とても興味深く感じました。日本とは違い地震国ではありませんので、そのような工法が可能なのだそうです。

さらに何ヵ所にもある博物館のドールハウス作品は、今まで観て来たものとはスケールでも繊細さでも比べものになりません。私の講座の受講生にも、ぜひ基本となる景色と作品制作手法を肌で感じてもらえればと、研修ツアーを企画。翌年、受講生と共にドイツへ再訪することができました。

以降、ドイツに引き続き、昨年はイギリス、今年は台湾のドールハウス博物館の研修ツアーを企画しました。建築物と各博物館のドールハウスの資料として撮った写真は5000枚以上、作品作りに大いに役立っています。

作品作りの手順は、イメージ作品の場合、頭に浮かべた形を立体に起すためのイメージスケッチから正確な図面を描き、各パーツのサイズを出して、板を正確にカットして組み立てます。オーダーで既存の建物を再現する場合もあります。その際は現地に赴き、実寸を測り、全体と各パーツの写真を100枚以上撮り、それをもとに制作します。実寸が測れない場合はサイズの出ている対象物から比較して割出します。

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雑貨とケーキを扱っているお店のドールハウス「Angelina」。小物は少しずつ作り足して行く予定

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実際に制作する際、欠かせないことは、「再現にとどまらず人の気配を感じること」です。建物以外の家具や、粘土などで作る小物も大切な小道具なのです。色選びもイメージの違いに大きく影響してきます。
もし、縁あってドールハウスをご覧になる機会に恵まれた際には、ドールサイズになって、実際に室内にいる状況を想像しながら鑑賞してみてはいかがでしょうか。

 

ミニチュア・ ドールハウス作家
宇田 泰子 うだ・やすこ
岡山県生まれ。東京都在住。1993年独学で雑貨、ドールハウス作りを始め、97年よりミニチュア・ドールハウス教室を主宰する。98年テレビ東京TVチャンピオン「手先が器用選手権」に出場し優勝、2000年同番組「ドールハウス職人選手権」に出場し優勝。以後、ドールハウス作家として作品オーダー制作のほか、アトリエおよび各所カルチャースクールにて講座やドールハウス研修ツアー企画等も手掛ける。 公式HP http://www.blueroof.ecweb.jp

月刊不動産流通2015年9月号掲載ƒ

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