家のコト

河上 まりおさん「不動産に正解なし。驚愕の壁紙が大好評!」

この「記事」が気に入ったらみんなにシェアしよう!

みんなにシェアしよう!

「大家になれば楽をして儲けられる!」こんな思いから始めたアパート経営。しかし、大家の仕事は決して楽ではありませんでした。

「不労所得なんて誰が言った? 大家の仕事は不労じゃない! 過労だよ!」。大家になってからすぐに、僕の考えは180度変わっていきました。というのも、僕の買ったアパートは値引き交渉や融資の審査を待っている5ヵ月ほどの間に、もともと満室ではなかったところに退去者が出てしまい、入居者が半分になってしまったのです。
古い物件であるため、退居後の部屋の中は、風呂は昔のままのバランス釜、その他の部分もすべてが古いままでした。中には明らかに小火を起こした跡が残っている部屋も…。

入居者が半分になれば、家賃収入も半分になるわけで、借金が返済出来るかどうか心配になりました。しかし、気をとりなおし、退去した部屋のリフォームを、と意気込みました。

そこで、まず考えたのは白い壁紙で部屋をパーっと明るくし、床の畳を取っ払って、明るめのフローリングらしく見えるクッションフロアを貼って安く済ます! そんな定番のリフォームでした。実際に当初はそういうリフォームを繰り返していたのですが、家賃も決して高くはできず、募集をかけても、なかなか決まらないことがしばしばでした。「今は不景気だし、とりあえずは営業力でカバーするしかない…」、そう思って頑張ったおかげで、何とか10ヵ月ほどで入居率は約90%で稼働できる物件にまでなりました。

何回もリフォームを繰り返していると、リフォーム屋さんとの信頼関係もできてきます。あるとき、気まぐれで、「今回は任せますよ!」と、金額の上限だけ決めて、その範囲で自由にやってもらうことにしました。しかしその数日後、ぼくは信じられない光景を目にすることになるのです。

完成した部屋に入ると、まず目に飛び込んできたのが、バラ柄の黒と赤の壁紙でした。「こ、この壁紙とっても派手ですねぇ~」、「はい! 先日までラブホテルのリフォームをやっていたんですよ。だからその余った壁紙を使って材料費を安く抑えました」。…どうやらリフォーム屋さんは、「善意」でその壁紙にしてくれたようです。
その後目にしたのはヘビ柄の赤い壁やむき出しの壁。チカチカしたディスコ風の照明に、「ここは疲れた夜に一人でお酒を飲むスペースです」と後に苦し紛れに説明することになる小さいバーカウンターのようなスペースもありました。

どうやら、今まで、こちらのいいなりにリフォームをしていた鬱憤が、「自由にしていいですよ!」という一言で爆発してしまったようです。正直、愕然としましたが、壁紙や床などの素材は他のリフォームで余ったものを使ってコストを抑えてくれたわけですから、そこらへんは感謝しなければいけません。それにしても、「これで入居者が住んでくれるのか? 決まるにしても相当時間がかかるのではないだろうか?」。そんな不安で頭の中がいっぱいになり、その夜は寝つきが悪かったのを覚えています。

しかも後日、リフォーム屋さんに家賃について相談すると、いつもなら3万8,000円のところ、「4万8,000円で行けるんじゃないか!」と、とにかく彼は強気でした。それに押されて、まずはその金額で募集をかけてみることにしました。でも本音をいえば、どうせ入居者を見つけるのに最悪半年くらい時間がかかりそうな部屋だし、見つからなかったときは徐々に賃料を下げていけばいいや…そう思っていました。

ところが驚いたことに、募集をかけてわずか2週間で入居者が決まったのです。「意外と個性的な部屋に住みたい人もいるもんだな…」。

不動産に関して、いろんな本が出ていますが、正解はない。自分で考え、行動し、自分なりの正解を見つけ出すことが必要なのではないか、そう悟った出来事でした。

zuisou1503

部屋に入るとバラ柄の壁紙とディスコ風の照明が

 

漫画家
河上  まりお  かわかみ・まりお
1974年長野県生まれ。2006年より株とFXを始めたが、まったく勝てず。その悲しい体験を綴った漫画ブログ「僕と株と樹海の日々」(現在は閉鎖)は、累計1,000万ページビュー超となった。08年、人生の一発逆転を狙って不動産投資を開始したが、利回り27%、入居率95%、返済比率半分以下にもかかわらず、お金が回らなくなり、12年にアパートを売却したという経験をもつ。著書に『恐る恐るの不動産投資』『リスクオンまりおくん FXの無間地獄』(いずれもダイヤモンド社)など。現在「健美家」サイトで不動産投資コラム「僕と不動産と樹海の日々」を連載中。

月刊不動産流通2015年4月号掲載ƒ

この「記事」が気に入ったら
みんなにシェアしよう!

MATOME