家のコト

World Life Style~わたしの国の住まい事情~

屋根裏にはこだわりのプレイルーム! ルーマニアの地方都市、ホームシェアスタイルの一軒家に暮らす一家。

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海外の家や暮らしをレポートする「World Life Style」。第25回目はルーマニアの地方都市ルムニク・ヴルチャで暮らすマリンさん一家をご紹介。家主のマリンさんは企業の研究者だが、建築好きがこうじて自宅建設の基礎工事に参加。屋根裏のプレイルームは妻のマリアさん、息子のシルビュくんと共に基礎工事以外は一家総出で作り上げたという熱の入れようだ。家族や友人と楽しむことを思い描きながらも、将来的にホームシェアすることも視野に入れて建築した一軒家だという。

昔の面影を残す地方都市でオリジナリティ溢れる暮らし

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マリンさん一家はルーマニアの首都・ブカレストから車で3時間のルムニク・ヴルチャに暮らしている。9年前のEU加盟後からルーマニアの首都ブカレストでは外国企業の参入で街並が変わりつつあるが、ルムニク・ヴルチャのような地方都市は今も昔の面影を残した景観がある。ルーマニアの都市部ではマンション暮らしが一般的。特に首都であるブカレストは土地価格が上昇しているため一軒家を持っている人の数は圧倒的に少ない。マリンさん一家も6年前に家を新築するまでは現在の自宅近くのマンションで暮らしていた。ルーマニア人にとって立地の良い場所で庭付きの一軒家を購入することは憧れ。念願叶って手に入れたマイホームにマリンさん一家の感慨もひとしおだ。

ルーマニアでは建物の1階部分を「パルテル」という名で呼び、0階として扱う。マリンさんのお宅は0階〜3階建ての建物(日本では4建てに相当)で、メインで暮らす2階はキッチン、バス・トイレ、夫妻の寝室、子ども部屋、衣装部屋から構成されている。リビングには一枚板の大きなリビングテーブルが置かれ、飾り棚なども全て同じテイストでまとめられているためすっきりした印象。白い壁の中に四角いタイルが沢山敷き詰められた部分がアクセントになっている。これはマリンさん自らが石を模したタイルを貼って作り上げたものだそう。単調な白壁をオシャレかつ味わい深く魅せるテクニックの一つだ。

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キッチンはルーマニアの伝統的な工芸である木工細工の棚を使用し、白い壁やタイルとともに暖かみのある雰囲気に作り上げた。調理台には名産品であるワインや、民芸品である器やカップなどの色鮮やかな陶器が並ぶ。キッチンに欠かせないラジオもしっかりと置かれている。ルーマニア人の多くはラジオで好きな音楽を聞きながら調理を楽しむ

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0階部分は日本で言うと1階に相当するスペース。ルーマニアではこの0階部分をエントランス兼用の物置にすることが多い。マリンさん一家も物置や食料庫として使用している。ルーマニアの冬は氷点下20度になることも珍しくない。冬はどうしても野菜が不足し価格が高騰する。そこでほとんどの家庭ではキュウリやパプリカなどの野菜を夏場に大量購入し、長期保存できるピクルスを作り冬場の野菜不足に対応している。マリンさん一家も大量のピクルスと共に様々なフルーツでジャムなどの保存食を手作りし、ストックしている。

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保存倉庫は大小2つあり、冬場は食料を、夏場はルーマニアの名産であるワインをストック出来るワインセラーをこれから手作りで作る予定だ。

ホームシェアしても快適に暮らせる、機能的な一軒家

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1階部分は2階と同じ間取りの居住スペースがある。客間はマリンさん一家が暮らす2階と同様にシックな雰囲気で心が落ち着く空間だ。現在は客間として使用しているが、将来は賃貸が可能なホームシェアスタイルになっている。仕事を退職した後もこの1階部分を貸し出し、収入を得るためだ。こうしたスタイルの住宅はルーマニアの大きな家によく見られ、元は一軒家を購入する資金がない親類などが集まり、大きな家を共同で建て、部屋を隔てて住む様になったのが始まりと言われている。住宅情報サイトでも一軒家の地下部分や1階部分を貸し出す広告をよく目にする

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テレビ台に置かれた数々の置き時計はマリンさんのコレクションの一部。訪れた人を飽きさせない部屋作りを心がけている。

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一軒家の中に他の家族が住むとプライバシーが無くなるのでは?ルーマニアではそんな心配をする人は少ない。それは各階の生活スペースにしっかり施錠出来る覗き穴付きの重厚なドアが取り付けられているからだ。このドアがあれば同じ家の中に居てもマンションの1階と2階に暮らしているかの様に落ち着いて過ごすことができる。

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本当は建築家になりたかったというくらい建築好きのマリンさんは、マイホームを新築するにあたり、その手腕を発揮。自ら図案を書いて建築家に見せ、基礎工事と0階〜1階を建築する際には、マリンさん自身も仕事を約3ヶ月間休職して職人と共に建設に携わった。ルーマニアでは一軒家、マンションともに鉄筋とコンクリートで柱などの基礎部分を作り、外壁や内壁は全てレンガを積み立てて作られる。その後、表面にコンクリートを塗っていくのだが、越冬を含め1年間は乾燥時間を置くという。1年間乾燥させる理由は素材同士を馴染ませ安定させ、内装工事を行ったときに壁に亀裂が入らない様にするためだ。マイホーム完成までに擁した期間は乾燥の期間も含めて3年。待った甲斐もあって亀裂の入っていない美しい外壁、白い内壁を手に入れた。
マリンさん一家は2階をメインとして使用しているため、玄関も2階に直結する様に作られている。この階段やエントランスもマリンさんが職人と共に作り上げたもの。玄関を開けると踊り場があり1階の客間にも階段を降りて行くことが可能だ。

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ベッドルーム。太陽光を取り込むガラスブロックを使用する案もマリンさんの考えだ。

屋根裏には、家族で作り上げたプレイルームが広がる

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3階の屋根裏部屋は120平米のプレイルームだ。基礎工事の柱やトイレ、シャワールーム以外、全て一家3人で作り上げたというから驚きだ。床材を業者で購入し3日間で仕上げ、壁にはクリーム色のタイルを貼りアクセントに。マリンさんたっての希望で作られたプレイルームは皆がリラックスできる空間となった。卓球台が中央に配置され、お酒を飲みながらレコードなど音楽を視聴出来るスペースやマリンさんがコレクションしているルーマニアの民芸品やアンティーク雑貨の保管庫、トイレにシャワールームまでも完備されている。

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プレイルーム脇にある保管庫には陶器で有名な町として知られるホレズで作られた皿や花瓶、コーヒーカップなど数多くのコレクションがその出番を待っている。

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アンティーク雑貨や小物も好きなマリンさん。古くは第一次世界大戦時にルーマニア軍が使用した缶詰を暖める道具や、50年以上前の木工品など、珍しい道具がルーマニアの手織りラグの上に並べられている。

各フロアに溶け込む、メイドインルーマニアの品々

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ルーマニア人の老若男女が大好きなお酒。伝統的な果物の蒸留酒であるツイカやパリンカ、ルーマニア産のワインも手織りのラグや陶器の花瓶と共にインテリアの一部となって飾られている。

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ぬくもりのあるハンドメイドで作られた網かご。大きなものから小さなものまでメインルームや客間など各部屋のいたるところに配置している。

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窓際に並べられているロウソク立ての数々はコレクションのほんの一部。ルーマニアの国教であるルーマニア正教の儀式には欠かせないロウソク。夕食の際に点して使用することもあるそうだ。

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■プロフィール■
コンスタンティン・マリンさん(54歳)は研究者として勤務。ルムニク・ヴルチャに住む前は、首都ブカレストに住み、ルーマニア内務省に勤務。建築とインテリアに造形が深く、時計、陶器、アンティーク雑貨、小物などのコレクターだ。自らも廃材などを利用し、世界に一つだけのインテリア作品を作ることが趣味。
夫人のマリアさん(50歳)はギリシャ系の外資系銀行に勤務。ヴルチャ県のエリアマネージャーとして活躍している。植物好きで、家にある植物の多くはマリアさんのセレクトだ。
息子のシルビュくん(18歳)は高等学校の最高学年にあたる高校4年生で、美術を専攻。父・マリンさんの建築好きのDNAを受け継ぎ、将来は建築家を目指している。
〜住まいについて〜
面積:480平米(庭を含めた土地面積720平米)
築年数:6年
新築注文住宅
土地を含む建築費用:1,700,000レイ(現在のレートで約5000万)

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■ルーマニアの不動産事情■
ルーマニアでは一軒家よりもマンション暮らしが多く、首都ブカレストなど大都市になるほどこの割合は高くなる。EU加盟国となった2007年以降、投資目的で購入された首都圏のマンション価格が上昇、新築マンションの価格も少しずつ上昇している。
賃貸物件の相場は、住む地域の治安や交通の利便性によって家賃が異なる。治安が良く公共交通機関が徒歩圏内にあるマンションは1LDKの間取りで1ヶ月1,000〜1,700レイ(日本円で約3〜5万円)が一般的。ビクトリエイ地区など高級住宅街にある外資系企業の単身赴任者向けマンションでは1ヶ月3,000〜4,000レイ(日本円で約9万〜12万円)ほど。2LDK以上の家族向けマンションはさらに家賃も値上がりする。
ルーマニアの平均月収に比べると賃貸物件は家賃が割高になるため、結婚を機会に中古マンションを購入する人々が多い。地域によって開きはあるがブカレストにある2LDKの中古マンションは一般的な物件で173,000〜300,000レイ(日本円で約500〜900万円)、新築で350,000〜520,000レイ(日本円で約1000〜1500万円) が相場。戸建てに関しては土地価格が安い農村部や、地方都市でよく見られる。大都市圏では戸建てはまだまだ高嶺の花だ。都市部も地方も治安が良く、生活圏にマーケットや公共交通機関が乗り合わせている場所が人気だ。
賃貸する際、IDカード(身分証)を提示し数ヶ月分の家賃を事前に納めて入居する物件がほとんど。敷金や礼金を支払う習慣はなく、物件を所有するオーナーによって必要な書類が違うなど、まちまち。住宅やマンション購入に関してもIDカード(身分証)を提示し4,300〜22,000レイ(日本円で12万~61万)程度の頭金を支払い、契約書にサインした後で一括またはローンで購入する。

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