海外の家や暮らしをリポートする「World Life Style」。第23回目はスイスから。スイスは国土面積が北海道の半分ほどしかないが、様々な国籍の人々が暮らしている国際色豊かな国である。
ルカさんとステフカさんが暮らすフランス語圏ドレモンは、ジュラ州の州都だが、人口約12,180人と小さな町。しかし、首都のあるベルン駅まで約1時間、チューリッヒ駅まで約1時間40分と、都心も遠くない。さらに、フランスやドイツの国境までは車で約30〜40分という近さである。彼らはこの町でルカさんの母親、クリスティーヌさんとともに、3人暮らしを楽しんでいる。
家族もゲストも長居したくなる、くつろげる空間
ドレモンは、小さな町だが、幼稚園から中学校、専門学校もあり、映画館、ボウリング場などの娯楽施設やスーパーマーケット、ホームセンターなど、日常生活に必要なものは不自由なく手に入れることができる。
この町でアパートが建設する計画が決定したのは2008年。クリスティーヌさんは計画時に購入を決め、建築士や建設に関わる人たちと相談しながら、インテリアデザイナーとして携わったという。
2010年に入居開始となったアパートは4階建てで、地下に駐車場と物置があり、その他は居住空間となっている。一家は、3階から上の2フロアある4LDKを購入。
間取りは、オープンキッチンのあるリビングダイニングと書斎、ルカさん達の寝室が2つ、シャワールーム、洗濯室、マスタールーム(バスルーム、ウォークインクローゼット付)、バルコニー、最上階の多目的ルーム、屋上テラスである。
屋根裏部屋が欲しかったが、面積の関係で不可能だったため、その代わりに作ったのがこの屋上テラス。今では、家族全員がお気に入りの場所になり、晴れた日は必ずここでのんびりと過ごす。夏になれば、友人たちとBBQパーティーもする。小さなプールもあるので、冷たい水に足を浸けて涼みながら、友達との会話を楽しむそうだ。
スイスの夏は日本と比べると短く、蒸し暑さはないが、大きな庭のある家には、プールが設けられていることが多い。
キッチンで注目したいのが、作り付けのオーブン、電子レンジ、食器洗い機の他に、ワインセラーがあること。クリスティーヌさんがワイン好きで、毎晩嗜むという。キッチンにあるワインセラーだけでは間に合わず、倉庫にもう2つあるそうだ。
大人も子供も昼食のために帰宅する
スイスには”お昼ご飯は自宅でとる”という習慣がある。学校には基本、給食はなく、子供達は一旦帰宅して昼食をとってからまた学校へ行く。仕事をしている大人も同じだ。職場が家から近ければ、帰宅して昼食をとるのだ。日本人からしたら、一度帰るなんて面倒だと感じるが、スイス人には、”家族と過ごせる大切な時間”と考えられているようだ。
この日の昼食は、サラダ、グラタン、揚げ物。毎日クリスティーヌさんが用意しており、チーズフォンデュもよく食卓に並ぶそう。
家族がこの家を気に入っている点に玄関がある。入るとすぐに、上階の多目的ルームへ続く階段と、リビングルームや寝室のある空間へ続くドアがある。ルカさんたちの友人がいつ訪れても、家族に迷惑がかからない造りになっているのである。
バスルーム以外にシャワールームがある点も、ゲストが気軽に使用できるので気に入っている。
多目的スペースはふたりの憩いの場所
ルカさんとステフカさんとの出会いは、お互い家族とのバルセロナ旅行中、たまたまビーチで隣同士になったことがきっかけ。
スイス人のルカさんは公用語がフランス語だったため、「ノープロブレム」しか言えない英語レベルだったが、頑張って現在二人は英語で会話をしている。また、ブルガリア人のステフカさんもルカさんの母クリスティーヌさんと、フランス語と英語でコミュニケーションをとっている。
そんなふたりのくつろぎの場所は、上の階にある多目的ルーム。ここには、ゆったりとしたソファと大きなテレビがあるため、プライベートな時間が過ごせる。大きな家を持つスイスの家庭では、子供部屋の他に、遊び用のプレイルームを設けることがある。一家には、今、小さな子供がいないので、このスペースはルカさんたちのパーティーや、くつろぎスペースとして活用している。パーティーの際、友人がこちらで寝ていくこともあるそうだ。
インテリアにこだわった、素敵な空間
部屋のいたるところに、たくさんの植物が置かれている。屋上テラスはもちろん、リビングダイニングに面した広々としたテラスにも、多くの植物が飾られて、落ち着ける空間となっている。また、大きなガラス張りの壁と窓からは、たくさんの日光を取り入れることができ、外の空気が寒い日でも室内で日光浴ができるという。
スイスでは、多くの家庭がガーデニングやテラスの飾りつけに力を入れている。天気の良い日には外で食事をしたり、屋外をたくさん利用するためだろう。また、サンルームがある住宅もよく見かける。
インテリアデザイナーのクリスティーヌさんのこだわりは、間接照明にも見られる。廊下の床に設置されたアッパーライトは、壁を照らし、そこに飾られた絵や写真を照らす作りとなっている。
クリスティーヌさんのお気に入りの家具が、白のサイドボード。
ゲスト用のアルコール類と各種グラスを収納できるサイドボードを探していたら、ドイツで発見。リビングの壁はコンクリート、キッチンは白、インテリア全体をモノトーンで揃えていたところに、白でモダンなサイドボードに運良く巡り会えた。ドレモンにあるお気に入りのお店で購入。モノトーンのオブジェや横に飾った白い絵画ともマッチしている。
寒い国では良く耳にするセントラルヒーティング。こちらのお宅でも空気熱・水熱源ヒートポンプからなる床暖房を完備。また、換気システムも完備しているため、窓を閉めていても室内はいつも新鮮かつ乾燥しにくい空気。住人にとっては快適、かつ省エネな住居だ。
スイスで、省エネな住居としてミネルギー住宅が知られている。ミネルギーとは、ミニマル・エネルギー消費 ( Minimaler Energieverbrauch )の意味で、光熱費を従来の半分以下に抑える省エネ建築基準である。
「より高い生活水準、より低いエネルギー消費」をモットーに、1998年にミネルギー協会が設立された。
窓を閉めたままの換気(外の騒音が入ってこない)、優れた断熱性、耐久性に優れている、光熱費の大幅削減などの基準があり、連邦政府が定める建築基準よりも厳しい。
こちらのお宅も省エネな住宅ではあるが、全ての項目をクリアしているわけではないので、ミネルギー住宅には認定されていない。
■プロフィール■
ルカ・シュルクテーさん(26歳)は、保険会社でセールスの仕事をしている。趣味はカーティングで、休日には友人とカーティングへ出かけたり、長期の休暇には彼女と海外旅行へ行く。
ステフカ・ペテロヴァさん(25歳)はブルガリア出身。イギリスで7年間暮らし、ルカさんとの出会いをきっかけにスイスへ移住、イギリスでは、英語、インテリアデザイン、写真を学び、イギリスのホテルに就職。現在、フランス語を勉強中で、再びホテル業界での就職を希望している。
ルカさんの母、クリスティーヌさんはインテリアデザイナー。現在お住いのアパートだけではなく、ジュラ州のアパートのデザインに携わった経験も。現在は、知人からの依頼があった場合のみ手伝う程度で、余暇は友人とお茶をしたり、自宅でゆっくりと過ごしている。
〜住まいについて〜
分譲アパート(マンション)
面積:200平米(テラス以外)
価格:2010年当時625,000スイスフラン(=2016年9月のレートで約6480万円)
■スイスの不動産事情■
スイスで暮らすのに最も人気のある街はチューリッヒで、世界の住みやすい街ランキングでも上位にランクしている。チューリッヒ中心地のアパートの平均家賃は、寝室1部屋で月々1827スイスフラン (約18万8千円)。寝室3部屋で月々3441スイスフラン (約35万5千円)。
チューリッヒ郊外のアパートの平均家賃は、寝室1部屋で月々1337スイスフラン(約13万8千円)。寝室3部屋で月々2440スイスフラン(約25万2千円)。(2016年9月時点)
中でも憧れは湖が見渡せる部屋だが、景色のいい物件は値段も跳ね上がる。賃貸する際の契約方法やルールは、オーナーによって異なる。
通常、賃貸希望者は「収入」「銀行残高」「金銭上の争いや問題がない」という証明を提出しなければならない。保証金は日本同様、家賃の数ヶ月分支払う場合が多い。室内に破損などの問題が起きた際に、充当される。退去時のルールは日本と少し異なる。限られた月しか退去を認めていない場合があり、それ以外の引っ越しの場合は、自身で住人を探さなくてはならない。見つからない場合は、その分負担する義務がある。