家のコト

World Life Style~わたしの国の住まい事情~

インドのヒンドゥー教の聖地プシュカルで成功したバブさん。 二人の息子と共に暮らす、ご自慢の一軒家。

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海外の家や暮らしをリポートする「World Life Style」。第19回目はインドの首都ニューデリーから450キロほどのところにあるヒンドゥー教の聖地プシュカルから、バブさん一家をご紹介。妻のバウナさんと二人の息子と共に暮らすバブさんは、サクセスストーリーを実現した人として地元でも有名だ。インドの伝統を重んじて、一日の大半を料理に費やすバウナさんの愛情あふれる手料理は、バブさんと彼の事業を手伝う二人の息子のエネルギー源となっている。

広々としたスペースで掃除がしやすいワケとは?

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インドは12億人を超える人口と南インド随一の面積を持つ大国。今回紹介するラジャスタン州のプシュカルは、5〜6月の酷暑期に最高気温が45度を超える砂漠地帯である。徒歩で一周20分ほどのプシュカル湖の周りに商店街が連なるこの町は、限られた土地しかないという。 バブさんファミリーのマイホームは、建築家にキッチン、寝室の場所などの希望を大まかに伝え、2014年にメインの商店街から徒歩約10分のところに建てられた。掃除のしやすさに重きが置かれ、床はタイルでカーペットなどは敷かれていない。砂漠地帯なので、家の中に砂が入り込みやすく、ほうきをかけた後、水拭きするためだ。掃除は使用人が行っているが、毎日3〜4時間費やすというから驚きだ。 玄関を入るとすぐにリビングルームと、広々とした空間が広がっている。来客はまずここで、飲み物やスナックなどがふるまわれる。

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縫製会社を経営する父のバブさんと事業を手伝う二人の息子は、酷暑期に夏休みをとる以外、土日の休みもなく毎日会社に出勤している。そのため、リビングルームでゆっくりと家族団らんすることは少ない。 母のバウナさんは専業主婦。掃除、洗濯、洗い物などは使用人に任せるが、食事の用意だけはかならず自分で行う。加工食品などは一切使わず、滋養にあふれ、たくさんの愛がこもっている食事で、家族みんなの健康を支えている。 バブさんの会社がここまで大きくなったのも、バウナさんの内助の功があったからこそ。

マンゴの木から作られたダイニングテーブルと椅子

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ランチタイムに父と二人の息子は、業務の状態を見ながらそれぞれ自宅に帰って、ランチを済ませる。こだわりのダイニングテーブルと椅子は次男のニッキルさんがラジャスタン州の州都ジャイプールで購入したもの。 マンゴの木から作られていて、落ち着いた風合いが自慢である。男性陣、曰く「ここで手料理を味わうときが、一日の中で最もリラックス出来る」そう。

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バウナさんは男性陣にアツアツのチャパティ(インド式パン)や料理を、その都度給仕するので、食卓は共にしない。食事を給仕した後、主婦たちが食事を取る。バブさんファミリーは伝統的なインドスタイルを守っているのだ。

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チャパティと呼ばれるインド式パンは、大理石の台の上で棒を使って器用に丸く伸ばしていく。日本ではナンが有名だが、実はインドの一般家庭ではチャパティが主食とされている。ナンは家庭では作らず、レストランで注文するものだとか。

出来上がったチャパティにギーと呼ばれるバターをぬるとより美味い。

出来上がったチャパティにギーと呼ばれるバターをぬるとより美味しい。

こちらは「パラックパニール」という、ほうれん草とチーズのカレーだ。料理上手なバウナさんの得意メニューだ。

こちらは「パラックパニール」という、ほうれん草とチーズのカレーだ。料理上手なバウナさんの得意メニューだ。

すっきりとしていて使いやすいキッチン

world_18_08 使い勝手の良い広々としたキッチンは、ドアもなく、ダイニングテーブルを見通せるように作られている。だから、料理はアツアツのうちに給仕できるという。インドではプロパンガスでの調理が主だが、サブで電磁調理器を使う家庭もある。 バウナさんの朝は、朝食作りから始まり一度掃除、その後、別々の時間に帰宅する男性陣のために再び昼食作り、そしてまた夕食の用意と、一日の大半をキッチンで過ごすと言っても過言ではない。

world_18_09 キッチンのすぐ横の部屋には、バブさん一家が信仰しているクリシュナ神を祀る神棚がある。インドではヒンドゥー教徒の家庭に、このような神棚が祀ってある。一家の長であり信心深いバブさんは、朝、ここでお線香をあげて、幸せな一日を願うのが日課である。

家の間取りは将来の息子夫婦との同居を考えて

world_18_10 夫婦の寝室は、1階ダイニングのすぐ横にあり、奥にバスルームがある。また、1階にはもう一部屋ゲスト用の寝室もある。夏休みに親戚が子供を連れて泊まりに来ることが多いからだ。インドでは、親しく親戚付き合いをするのが伝統で、バブさんファミリーも兄弟ファミリーをはじめ、親戚と仲良く行き来している。

長男のタルンさんの寝室。とにかく、物は極力置かずにシンプルが基本。ベッドシーツは、インドの伝統的なプリント模様で、彼らの会社でも販売している。

長男のタルンさんの寝室。とにかく、物は極力置かずにシンプルが基本。ベッドシーツは、インドの伝統的なプリント模様で、彼らの会社でも販売している。

長男のタルンさんのバスルーム。各寝室にすべて同様のタイプのバスルームがある。

長男のタルンさんのバスルーム。各寝室にすべて同様のタイプのバスルームがある。

次男のニッキルさんの寝室。長男のタルンさんの寝室よりも若干広めだ。パブさん一家はとにかくシンプルがお好き。

次男のニッキルさんの寝室。長男のタルンさんの寝室よりも若干広めだ。バブさん一家はとにかくシンプルがお好き。

world_18_14 2階には長男と次男の寝室の他に二部屋用意がある。こちらの部屋は将来息子夫婦の子供部屋として使用予定である。インドの伝統では、息子たちは結婚後も両親と同居し(長男だけでなく)、ジョイントファミリーと呼ばれる大家族で住むことが多い。現在は、核家族も徐々に進んでいるが、バブさんファミリーは、インドの伝統にのっとり、二人の息子たちと同居予定である。

world_18_15 2階のベランダにはスヌーカーの台もあり、息子たちは友人を呼んでプレイすることもある。

インド富裕層の家には、使用人の部屋がある

world_18_161 バブさんの使用人は、一部屋に夫婦と子供二人で暮らしている。使用人の夫はバブさんの経営する縫製工場の生産マネージャーとして働き、妻はこの家の掃除、洗濯、洗い物などの仕事をしている。 バブさんは、自分の下積み時代を決して忘れず、彼らのことをケアしている。彼らの息子はよい教育が受けられる学校に転校させ、娘は外国からの寄付金で運営する女子校へ入れた。使用人の娘も自分の娘のように可愛がり、パーティーなどにも連れて行くという。インドでは、使用人と一線をおくのが普通なので、バブさんファミリーは、かなり珍しいケースと言える。

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■プロフィール■
夫のバブ・カトリさん(48歳)は、縫製工場を経営。1985年に近郊の町からプシュカルに移り、700ルピーで購入した1台のミシンと、1枚5ルピーの古いサリー布で2枚の洋服を作ったのをきっかけに、少しずつ事業を拡張。町ではサクセスストーリーを実現した人格者としても有名だ。 妻のバウナ・カトリさん(46歳)は、インドの伝統的な妻の役割を忘れず、家族を献身的に支えている。 右が長男のタルンさん(25歳)。左が次男のニッキルさん(22歳)。二人ともそろそろ結婚を意識する年齢。インドでは、同じ習慣を持つ家柄同士のお見合い結婚が主流。また、長男の結婚の後に次男が結婚するのが常。タルンさんの結婚観は「恋愛結婚もいいけれど、両親の考えに従うほうがいい」。 真面目で素直な努力家の二人の息子が事業に新しい風を運び、これからがますます楽しみなバブファミリーである。
~住まいについて~ 建物面積249平方メートル 庭を含めた土地面積370平方メートル 購入金額 土地 1,000万ルピー(日本円で約1,630万円) 建物 1,000万ルピー(日本円で約1,630万円) 2014年11月新築

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■インドの不動産事情■
インドの首都ニューデリーの場合、人気エリアは、ニューフレンズコロニー、ロディコロニー、ヴァサントクンジ、GKエリアなどメトロの駅から少し離れた場所であり、駅に近くて人気なのは、グリーンパーク駅、ジョルバグ駅付近である。デリーでの賃貸の相場は、2ベッドルームで最低25,000ルピー(約40,750円)くらいからで、半年から一年分の家賃を一括で払うことが多い。購入物件は、一軒家で1億円を超えることも珍しくない。こうした相場感は5年以上前から続いている。 プシュカルの場合は、賃貸のワンルーム(バストイレ共同)タイプで2,000ルピー(約3,260円)くらいから。数は少ないが2ベッドルームのマンションで15,000ルピー(約24,450円)くらいである。

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