家のコト

World Life Style~わたしの国の住まい事情~

アンティークなオブジェ・家具のセンスが光る、イタリアン芸術がアクセント。 シチリア島のモダンな『コンドミニアム』に暮らす30代カップル

この「記事」が気に入ったらみんなにシェアしよう!

みんなにシェアしよう!

海外の家や暮らしをリポートする「World Life Style」。第18回目はイタリア南部シチリア島にて愛犬トンマーソと一緒に暮らすフェデリカさんとニーノさん夫婦のお宅をご紹介。建物自体は70年代のものだが、内部はかなりモダンな内装だ。7階建ての建物はニーノさんのお父さんと兄弟が所有し、1階は叔母さんの経営する子供服ショップ、2階は従姉妹が経営するウェディングドレスショップ、その他の階にそれぞれの家族が住んでいる。ここの3階が二人の住まい。オブジェやアンティークな家具がインテリアのポイントとなったモダンな内装である。

シチリア島の青い空と海の側で暮らす

world_18_01

シチリア島は、イタリアの最南端に位置する地中海最大の島。温暖な気候と美食の宝庫とされる魅力的なこの島は、近年観光地としても知名度が高い。映画「グランブルー」のロケ地としても有名で、世界中に愛されるリゾート地タオルミーナもメッシーナ県に位置する。ニーノさんとフェデリカさんが住むバルチェッローナ・ポッツォ・ディ・ゴットは、タオルミーナから車で1時間弱の場所。海側部分と山側に位置する街中に分かれている。

world_18_02
街から海までは車でほんの5分。夏は海水浴が欠かせないイタリア人には嬉しい立地と言える。年によっては、4月末から泳げることもあり、仕事を早めに終えるとそのままビーチへ直行する人も。シチリア人の中には、冬は街中に暮らし、夏は海沿いの家に引っ越すという、贅沢な生活を送る人もいる。ニーノさんとフェデリカさんの場合は、2009年に二人で起業し、オフィスが街の中心地にあるため、利便性を考えて仕事場の近くに暮らすことにした。家の目の前にはスーパーマーケットとワインの品揃えが良いエノテカもある。買い物には不自由しないことは、料理好き、ワイン好きの二人にとって、家選びの重要なポイントだ。

イタリアの芸術とアンティークをアクセントにした内装

world_18_03
3年前に結婚を決めた際、ニーノさんの祖母が昔住んでいた家を改装。家の設計を担当したのは、フェデリカさんの親友で、現在はイギリスロンドンで活躍する建築家マリアさん。彼女は設計だけでなく、家具などのアドバイスも行ってくれた。元々は大理石製だったフローリングをすべて取り除き、ポーセリングレスというイタリアの陶磁器製に張り替え、壁の塗り替えや張り替えもプロの職人に依頼して行った。二人の希望通りの、モダンな作りにこだわった内装が完成した。

world_18_04

ニーノさんのお父さんは地元ではかなり有名な芸術家。だから、小さい頃から常にアートが身近にある環境で育ってきた。インテリアには、お父さんの作品である絵画やオブジェは欠かせなかったそう。家の玄関の正面には、特注でスペースを作り、石の彫刻のオブジェを展示。まるで博物館の入り口の様な印象を受け、初めてこの家を訪れる人達は必ずこの彫刻に目を留め、「素敵だ」と声を揃える。彫刻のテーマは家族で、愛、団結、祈りを表現している。

world_18_06

大きめのソファとテレビのあるスペースは、休日にテレビや映画を見ながらくつろぐ彼らのお気に入りのスペースである。ソファの横には、犬のトンマーソがくつろぐクッションも常に用意されている。奥の壁には、ニーノさんのお父さんの作品である3つの絵画が飾られている。二人が結婚を決めた際に、彼らのために描かれた唯一の作品で、見るものを惹きつける魅力がある。その他、リビングの棚には、世界各地で購入した小物や本を飾り、インテリアに。日本を訪れたときに購入した和風の小物や漫画などもお気に入りの一つだ。

world_18_07
家の中に数多くあるオブジェや家具の中にはアンティークなものがかなりある。ダイニングのテーブルは、ニーノさんの祖母の叔父さんが、家具職人にオーダーメイドで作らせたもの。それをニーノさんが譲り受け、今でも大事に使っている。「家具自体の価値はもちろん重要ですが、お婆さんから受け継いだものだから大事にしている」と、典型的なシチリア人らしく、家族を何よりも大切にするニーノさんは話す。

world_18_08
リビングのテレビの横にオブジェとして飾られているアンティークな木製レコードプレーヤーは、ニーノさんのお母さんがアンティークショップで購入し、彼らの結婚記念日にプレゼントしたもの。

食べること、飲むことが大好きなイタリア人達

world_18_09
常にこの家の食卓の周りには人が集まり、笑顔が絶えない。

常にこの家の食卓の周りには人が集まり、笑顔が絶えない。

リビングとダイニングルーム、キッチンはすべてオープンスペースとなっている。常に家族や友達など、たくさんの人が集う場所だ。陽気なイタリア人は、友達と一緒に食事をしたり、飲んだりするのが大好き。友達の多い二人は、招待することも多く、パーティーを企画した際には、このお家が会場になることもしばしば。外国人の友達を招いて、それぞれが食事を持ち寄るインターナショナル・ディナーを開催することもあれば、彼らが腕をふるって料理を作り、お友達を招待することも。

world_18_11

二人とも食へのこだわりは非常に強く、特にフェデリカさんの方はワインが大好き。飲むワインによってグラスを使い分け、縦長で脚の長いタイプのグラスは、主に味わいの強い赤ワイン用。脚が長いとグラスを回転させやすく、ワインの香りを楽しみやすいためだそう。デザートワインやリキュールには小さめの専用グラスを使っている。
シチリア島は、イタリア国内でもワインの名産地の一つで、土着品種によるワインが多く作られている。彼女が好んで飲むワインはネーロ・ダーヴォラという土着品種の赤ワイン。白ワインはシチリア島の活火山エトナで作られている土着品種のカリカンテがお気に入り。
常温で保存が可能なワインやデザートワインやグラス類は、ニーノさんの祖母から譲り受けたアンティークな家具の中に保管している。「食前酒、ワイン、食後酒、リキュール類など、それぞれ合わせる料理を考えるのも楽しいの」と、フェデリカさんは目を輝かせながら話す。大切な家具の上には、結婚式の招待状が今も大事に飾られている。

world_18_12
料理は主にフェデリカさんが担当だが、夫婦一緒に料理することもしばしば。二人とも一人暮らしや海外留学経験があるため、イタリアン以外のバリエーション、和食、タイ料理、メキシカンなど多国籍料理も多く作る。「巻き寿司も出来る」には驚きだが、常にたくさんのストックがあるパスタを見ると、やっぱりイタリア人らしい。

world_18_13
パスタはこだわりを持って、具材やソースを合わせるという。急にランチに人を招待することになった場合も、旬の食材を使ってびっくりするくらい美味しいパスタを簡単に作る。フェデリカの得意メニューは、ノルマ風パスタ(揚げナスとトマトソースの上にリコッタチーズをたっぷりかけたパスタ)。

お気に入り空間には旅の想い出を

world_18_14
トイレ&バスルームに入ると、陶器タイルの壁が一番に目に入る。この陶器は、アズレージョと呼ばれるスペイン産の陶器タイル。二人はそれぞれスペインに留学していたことがあり、お互いにとってスペインは思い出深い土地なため、毎日使用するバスルームはスペインの風が感じられる様に、あえてスペイン産のタイルを選んだ。ゆったりと足が伸ばせるバスタブは、日本の温泉が大好きな二人のお気に入りの場所でもある。去年のバレンタインデーは、ロマンチストなニーノさんがバスルームをキャンドルで飾り付け、フェデリカに最高のリラックス・バスタイムをプレゼントした。

world_18_17

■プロフィール■
ニーノ・ピエトリーニさん(33歳)とフェデリカ・ソッティーレ(33歳)さんは、ヨーロッパの留学やインターンシップといった文化交流プログラムをコーディネートするプロジェクトマネージャーとして働いている。結婚三年目だが、高校生に交際開始。同棲していた期間を含むと、一緒に暮らして10年以上にもなる。家でも仕事場でも一緒で、仕事では良きパートナー、家事も協力しあって行う。趣味は海外旅行。芸術一家に生まれたニーノさんは、生まれながらの感性を生かし、昔はアクセサリーを作って販売していたこともある。現在は趣味で、家族や友達に頼まれた時だけアクセサリーを製作。二人とも大の親日家で和食には目がない。
~住まいについて~
面積:90 平方メートル、築年1979年、購入価格不明(元々家族の持ち物だったため)、改築費用は約50,000ユーロ(=現在のレートで約615万円)

 

world_18_18

■シチリア島の不動産事情■
シチリア島の不動産価格は場所によってかなり異なる。同じ街でもメインストリートに面しているかいないかで価格が倍以上になる場合もある。郊外にある一戸建てを購入する場合は、どの街であっても平均250,000ユーロ(約3,075万円)、コンドミニアムやアパートメントの購入だと、100,000ユーロ(約1,230万円)が最低価格となる。
イタリアでは一般的に旧市街の歴史的な建物内や新市街のメインストリート沿いにある物件は、人気も値段も高い場合が多い。近年では改装工事が必要な物件を安価で購入し、後に自分達で改装する場合も多い。あるいは、RENT TO BUYというローンに似たシステムも普及している。最初の何年かは毎月賃金を払い続け、購入決定時に支払金額から今まで支払った賃金が引かれるシステムである。
シチリア島の賃貸物件は非常に安いものが多く、一世帯が住むアパートメントは月300ユーロ(36,900円)から賃貸可能である。シチリア島の中でも大都市とされるパレルモやカターニアには大学もあるため、シェアハウスを利用する若者も多い。その場合は、キッチン、バスルームが共同、シングルルームの利用で、月平均150ユーロ(18,750円)から賃貸可能。賃貸アパートメントの場合は、冷蔵庫、洗濯機、家具など一式が付いている場合がほとんどである。

この「記事」が気に入ったら
みんなにシェアしよう!

MATOME