家のコト

World Life Style~わたしの国の住まい事情~

ポーランド南部の町グリビツェの『テラスハウス』で のんびりと暮らす、ポーランド人&日本人の3世代家族。

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海外の家や暮らしをリポートする「World Life Style」。第17回目はポーランドの南部の町、グリビツェから。今回ご紹介するのは中学・高校教師であるミーハウさん。日本武術に興味を持ち、仕事が終わった後はポーランド人に剣道を教えている親日家。日本人妻ののぶさんは、3人の子供を育てながら、だんな様の両親との同居生活を心からエンジョイしている。

太陽の光を最大限に取り込んだ日常生活

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ミーハウさん一家 は、グリビツェにある「テラスハウス」と呼ばれる両隣が壁一枚でつながっている戸建てに暮らしている。彼らの住む区域は、2000年に建設され、町の中心部にもバス一本で簡単にアクセスできるいい場所だ。
この町は外国企業の大型誘致を積極的に行ったので経済状態もよく、外国人にも比較的 開放的。ここに、 ミーハウさんは奥さんと子供3人、ご両親、そして愛犬のポーランド狩猟犬と共に住んでいる。多くのポーランド人にとって、気候がいいというのは「太陽があって暖かいこと」。初夏から初秋にかけての短い期間となるため、大きな窓のある部屋は、家族が集まるリビングに設けるのが一般的だ。日照時間の短い冬でも最大限に太陽の光を家の中に取り込めるし、夏はその窓を開け放せば家にいながら、庭の緑が目を楽しませてくれる。
ミーハウさんの父親はかつて大理石の販売を手がけていたので、この家を購入した際に地上階の床を見事な大理石で埋め尽くしたという。年々、夏の最高気温を更新中のポーランド。大理石は夏でも屋内はひんやりとした感触を保つので、体温の高い子供たちや犬は大喜びだ。ちなみに、冬になると大理石は寒すぎるのではないかと思われるが、ほとんどの家で床暖房を設置しているので、心配無用。

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ミーハウさん宅のような庭付きの家はポーランド人が一番ほしがる人気物件だ。暖かい季節になると、ガーデン用のテーブルと椅子を出し、週末は1日中庭に出ている人も少なくない。庭では花を愛でるだけでなく、太陽を浴びたり、バーベキューをしている。一昔前は、木の枝に大きなフランクフルト・ソーセージを直に突き刺して、庭に起こした直火で焼きあげるキャンプ系のバーベキューが主流だったが、最近は市販のバーベキュー用の台で焼くことが多くなった。

古き家具に新しい命を吹き込む

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リビング横にある奥のコーナーには、アンティークのサイドボードが置かれている。かつては多くの家で愛用していたが、90年代に社会主義から民主主義に移行したときに「時代遅れ」のレッテルが貼られ、人気がどんどん落ちていった。しかし、近年再び「昔を偲ぶ美しさがある」と年配者だけでなく若い人の間でも注目され、人気沸騰の家具に。種類は木目が前面に出たものから白い塗料が塗られたもの、ミーハウさんのお宅のようなマホニー色など地域によって好まれる色やデザインも様々。ミーハウさんの場合は、お父さんの親戚筋から譲り受け、家具専門のリフォームに依頼して現在の艶を取り戻したという。 ちなみに、リフォームが施された家具は多くのポーランド家庭で見られる。全体にやすりをかけ、ニスを塗り直した20年前のロッキング・チェア、ファブリックを張り替えた椅子など、長年愛用し続ける家庭も珍しくない。

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サイド・リビングはこじんまりとした空間に大型のサイドボードが入っているため、どうしても圧迫感がある。それを壁に埋め込められたステンドグラスひとつで、一気に解消。抜け間が生まれ、部屋や壁の反対側にある階段にも色と光、空間を添えることができた。ぜひ見習いたい上級テクニックだ。

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ミーハウさんはアンティークの小物がお好き。ふと視線を泳がすと家中にアクセントのように置かれている美しい小物たちがある。電話も一昔前の映画に出てくるようなノスタルジックな代物だ。昔ながらの繊細な美しさが、心温まるオブジェのひとつに。

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お茶を沸かすサモバールは1920年代のもの。近年の電気やガスではなく、中央部分の筒に燃えた石炭を入れる本格的なものだ。昔、ソビエト連邦が存在したころに購入したもので、説明書はロシア語で書かれている。

プライベート部屋には機能的な机や道具を置く

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一家には小学6年生のユリアちゃん、小学2年生のレオンくん、小学1年生のアリツィアちゃんと3人の子供がいる。子供たちは皆同じ部屋だったが、昨年女の子と男の子の部屋を分けた。女の子たちの机は子供用というわけでなく、機能を重視。長い視点で考えれば、ベーシックな型のほうが流行に左右されることなく、部屋のイメージチェンジをしたときにも合わせやすいからだとか。ユリアちゃんはとにかく本が好き。日本に居るおじいさんが本を送ってくれるが、ポーランドでも図書館に通っては借り出しているそうだ。

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夫婦の寝室は屋根裏部屋にある。梁を見せたため視覚的にもすっきりと広く見える部屋だ。さすが体育教師のミーハウさん。梁からはサンドバッグがぶら下がり、寝室脇にもトレーニング器具が数点あった。夜寝る前にトレーニングをするのが日課だが、週に2回剣道を教えている日は、練習で相当体を動かすため、更なるトレーニングはパスしているそう。

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夫婦の寝室に向かう屋根裏部屋への螺旋階段。以前はご両親が屋根裏部屋を利用していたのだが、階段の昇降が体にきつくなり、昨年夏に移動。この階段のおかげでプライベートがしっかり確保できるようになった。

キッチン機能は最先端。心は昔ながらのゆとりを大切に

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2世帯同居なので、のぶさんは義母さんと同じ台所を使っている。巷で囁かれている嫁姑問題が気になるが「問題は全くない」という。のぶさんいわく「70歳近くになる義父さんがご飯よりジャガイモを希望することぐらい」というから驚きだ。基本的にのぶさんが作る日本料理は好評で、菌から作る納豆なども孫と取り合いになるという微笑ましさ。 IHキッチンなので、停電すると料理ができなくなるが「それも仕方ないわよね」というスタンスのお義母さん。グリビツェの水は非常に硬く「水がはねた後に拭かないで置いておくと白い痕が残る」とお義母さんが硬い水の扱い方も柔らかく諭すように教えてくれた。二人とも心持ちがゆったりとしているから、水周りが一緒の同居でもうまくやっていけるのだろう。

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7人分の料理材料はどう保存しているのかと聞いてみたところ、「台所の向こうに作られた半地下の食糧庫にぎっしりと押し込んでいる」という。お義母さんは社会主義の物不足時代に家事を切り盛りしていたので、食糧庫も冷蔵庫も満杯状態がお好みなのだ。

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■プロフィール■ ミーハウ ミワ・ムォトさん(45歳)体育と歴史を教えていている中学・高校教師。歴史好きが高じて、史実を一般の人たちに公演するサークル活動にも参加中。22年以上剣道に携わり、現在3段の保持者。剣道を通じ日本にも興味を抱き、日本語も操るというマルチな才能を持つ。更に狩猟ライセンスを取得し、愛犬スモークと狩猟仲間ともに森に出かけるアクティブな3児の父。 のぶ ミワ・ムォトさん(40歳)子育てをしながら、時折通訳の仕事もこなす、エネルギーいっぱいの働き者。普段はグリビツェを生活基盤としているが、学校の長期休暇に入るとミーハウさんと子供たち全員でポーランドの山岳地帯にあるペンションへ。彼女の母親(日本人)が、90年代からポーランドでペンションを経営しているため手伝っているのだとか。
~住まいについて~ 面積:270平米(庭を含めた土地面積550平米) 購入物件:現在の販売想定価格 1000,000ズロチ(日本円で約3,000万円)

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■ポーランドの不動産事情■ 他の西欧諸国に比べ、ポーランドは賃貸住宅物件のバリエーションが乏しい。その原因のひとつはポーランド人居住者の権利が大きく保障されているため、家賃滞納の際でも立ち退きをさせるのが非常に難しい。そのため、同国人よりも駐在外国人に貸したがる傾向にある。 最近は仕事を求めて国内外へ移動する人が増え、空き部屋を有効活用するべく賃貸物件も徐々に増加傾向にある。大都市の賃貸で人気があるのは、広さ15~30㎡の独身者用の部屋だ。このような物件でもワルシャワだと月1500ズロチ、二部屋ある物件になると2000~3000ズロチもする。この国の実質手取賃金が月額約2500ズロチということを考えるとこの価格は一般人の懐がかなり痛む額だ。(1ズロチ=約30円 2016年4月現在) 一般的に持ち家志向は根強い。親近者間の相続税がかからないため、親や祖父母から不動産を譲りうけられるラッキーな人々や数年前までは銀行の審査が緩かったため、ローン規定を組んで購入する人が相当数いた。この1~2年は銀行の審査が厳しくなり、ローンを組むのが難しい状態が続いている。

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