暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

最後の一滴まで飲み干したい! 新潟県新潟市の「割りスープ付き濃厚味噌ラーメン」 

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は新潟県新潟市西蒲区巻へやってきました。ここは“鯛車”の街。鯛車とは、台車の上に鯛をモチーフにした灯籠を取りつけたものです。この土地では、江戸時代末期から昭和の中頃にかけて、お盆の夕暮れ時に、浴衣姿の子どもたちがろうそくを灯した鯛車を引いて町内を回る風習がありました。現在ではまち起こしの一貫としてその風習が受け継がれており、お盆の時期になると商店街の多くの店先に鯛車が置かれ、赤い光の灯る幻想的な風景を描き出しています。
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JR巻駅の待合室にも鯛車が飾られています。

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鯛車の名がついた「まき鯛車商店街」という中心商店街も巻駅のほど近くにあります。

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文化会館にある「鯛の蔵」では、鯛車の実物が飾られ、その歴史を知ることができます。

この巻にあるご当地ヌードルが、こまどり「味噌ラーメン」。名前こそただの味噌ラーメンですが、新潟5大ラーメンの1つ“割りスープ付き濃厚味噌ラーメン”の元祖といわれるラーメンなのです。新潟5大ラーメンとは、新潟市の“あっさりしょうゆラーメン”、三条市の“カレーラーメン”、長岡市の“長岡しょうがじょうゆラーメン”、三条・燕市の“背脂ラーメン”、そして、新潟市の“割りスープ付き濃厚味噌ラーメン”のこと。それぞれ新潟県内の各地域に根付いたラーメンで、人気TV番組でも紹介されるなど、ラーメン通から大きな注目を浴びています。今回は割りスープ付き濃厚味噌ラーメン発祥の味を確かめてきました!

こまどりは昭和48年にオープン。創業当時は巻駅の近くで店を営んでいましたが、現在は巻駅から車で8分ほどの場所に移転し、今年で26年目になります。

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昼時になると駐車場は満車状態に。その人気ぶりが窺えます。

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店内はカウンター席とテーブル席で全74席。昼は毎日3回転もするのだそう。

案内してくれたのは、2代目店主の渡辺光昭さんです。味噌ラーメンは数あるメニューの中でも1番人気なのだとか。それでは早速、注文してみましょう!

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サラリーマン経験を経て、店で働き始めて22年になる渡辺さん。

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これが「味噌ラーメン」。1杯760円です。

キャベツ、もやし、ひき肉など具がたっぷり盛られています。スープから見え隠れしている黒い具材はきくらげでしょうか。にんにくのいい香りが漂ってきます! ここまでは普通の味噌ラーメンに見えますが……おや、ラーメンのどんぶりの他にもう1つ、スープの入った器が付けられています。これがうわさの割りスープですね! どのように使うのでしょうか。

渡辺さん「まずは割りスープを使わずにそのままスープと麺を食べてみてください。スープの絡んだ麺の味が濃く感じるようでしたら、割りスープを加えて味を薄く調整します。薄める必要がなければ、そのまま食べ進めていただいてももちろん大丈夫です」

なるほど、自分好みに味の濃さを調整するのですね。まずはそのままスープをひと口飲んでみると、強いにんにくの風味と、濃厚でコクのある味噌スープの味わいが広がります。素材の旨味が凝縮された実に深みのあるスープです。味噌の味も濃く、しっかりと感じられますが、くどさはありません。麺は太麺つるつるとした食べやすい食感。キャベツともやしはシャキシャキとした心地よい歯ごたえです。

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麺はどこをとっても具材のひき肉が絡んできます。

しばらく食べ進めたところで、割りスープも試してみましょう。

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すり鉢に入った割りスープをすくって、ラーメンの丼に投入!

割りスープを足すことで味噌の濃さと塩気がやわらぎ、先ほどよりもあっさりとした味わいに変化しました。自分のタイミングで味を調整しながら飽きずに味わえるのは嬉しいところです。麺や具材が少なくなるにつれてスープの味が濃く感じてきましたが、なんとかこのスープを味わい続けたい……。そこで、最後には割りスープをすべて入れて、より飲みやすくなった味噌スープを一滴残らず平らげていました。飲み干してしまうほどの絶品スープに感動です!

渡辺さん「割りスープは先代がラーメン屋を始めて10年ほどたった頃に付け始めたものですが、スープまで全部飲んでもらいたいという思いから始まったんですよ。年配の方が多い地域でもありますし、お好みで薄めてスープまで味わってもらえるようにしたんです」

割りスープをつけてまで、しっかりスープを堪能してほしいという強い思い。そんなスープのこだわりを聞いてみましょう。

渡辺さん「うちは味噌にこだわっていて、定番の味噌ラーメンは、関西系で甘めの佐渡の味噌を多く配合しています。10種類ある味噌系ラーメンのメニューのうち、同じ味噌を使うのは2つだけ。他はすべて異なる味噌を使うので、全部で9種類の味噌を使っています。それぞれ日本各地から取り寄せた数種類の味噌をブレンドして作ったものなんですよ」

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バター味噌ラーメンや、たんたん味噌ラーメンなど味噌系ラーメンのメニューがズラリと並びます。

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同じ味噌でも時期によって塩気や風味が異なるので微調整が欠かせません。

こだわりは味噌だけではありません。こまどりのスープはなんと、水づくりから始まるのだとか。水づくりとは一体どういうことでしょうか?

渡辺さん「元は水道水を使用しますが、カルキ抜きをしたあと、不純物を取り除くために電流を流して電子還元するんです。そこに備長炭を入れて、不純物を吸着させます。不純物がなくなり、電気の力で粒子の細かくなった水は素材に通りやすいので、素材の味がスープにしっかりと出るんですよ。この水に豚骨、鶏ガラ、野菜を加えてスープをつくるわけです」

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当日使うスープは前日の朝から仕込み始めます。割りスープも同じスープを使用。

なるほど、水からつくることで素材の味を最大限に活かした、より深い味わいのスープが出来上がるのですね。最後の一滴まで飲み干したくなるスープは、水からつくるという、まさに究極のこだわりによって完成されたスープでした。

■愛され続けるこまどり、広まる割りスープ付きスタイル

創業から44年、地元の人々にとって気軽に通えるラーメン屋として愛されているこまどり。長年、巻で店を営み、今でもお客さんの8割は地元民なのだとか。

渡辺さん「近所のサラリーマンや年配の方、学生が食事に訪れたり、パワースポットとして有名な隣町の弥彦神社への参拝の行き帰りに立ち寄ってくださったりする新潟市の方も大勢いらっしゃいます」

最近ではうわさを聞きつけて県外からわざわざ足を運ぶ人も増え、新潟を代表する人気店になりました。また、割りスープ付き濃厚味噌ラーメンは、こまどりで修行した人が独立して始めたお店でも看板メニューとなり、他にも割りスープを付けるスタイルで提供を始めた店が数店あることから、新潟5大ラーメンの1つとして位置付けられるほどに。元祖の店として雑誌などでも取り上げられ、注目度が高まるこまどりですが、今後の目標について聞いてみました。

渡辺さん“ふつう”のラーメン屋でありたいですね。とことんこだわったラーメンですが、敷居の高い店じゃないんです。誰でも気軽に立ち寄れる、地域に根ざしたラーメン屋としてこれからもやっていきたいです」

鯛車の街、巻で生まれた割りスープ付き味噌ラーメンは、店主のスープを全部飲んでもらいたいという気持ちから、割りスープ付き味噌ラーメンへと進化し、より多くの人に親しまれるようになりました。しかし、発祥の店であるこまどりは、有名店となった今も、昔と変わらず地元民にとって身近なラーメン屋です。そしてこれからも、この地で愛され続けていくのでしょう。

  • 店舗情報
    ● こまどり
    住所:新潟県新潟市西蒲区竹野町2454-1
    電話: 0256-72-2827
    営業時間:昼11:00~14:30、夜16:30~21:30(月〜金曜)※土・日曜は〜19:00(不定休)
    http://komadori-maki.com/index.html

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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