全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。今回は兵庫県尼崎市にやってきました。
尼崎市は兵庫県の南東端。大阪までは電車で最短5分、市外局番も大阪市などと同じ「06」と、大阪の文化圏に近い地域です。今回訪れた南部は、阪神工業地帯の中核を担った工業地帯として知られています。
そんな尼崎でよく食べられている肉グルメが「ホルモン」です。尼崎の精肉店では、特製のタレで炒めた「ホルモン焼き」が売られていることが多く、親しみを込めて「軒先ホルモン」と呼ばれています。
濃いめの味付けをしたホルモンは、酒のつまみから晩御飯おかず、子どものおやつまで、尼崎の人々の舌を楽しませています。
そんなホルモンが愛されている尼崎で、特に注目されているメニューがあるということで、今回やってきたのは、阪神電鉄武庫川駅から徒歩17分ほどの場所にある「杉本食堂」です。店は大阪湾からほど近く、周りには工場が多く建ち並びます。
店の中は、昔ながらの食堂といった落ち着く雰囲気です。迎えてくれたのは店主の杉本永治さんと、奥さまの景淑さん。
杉本さん「本当に、工場地帯の真ん中にあって驚いたでしょう? もともと、私の母が自宅の一角を改装して、工場で働く人のために60年ほど前に開いたお店なんです。それをいま、私が受け継ぎ、妻と一緒に営んでいます。常連さんからは親しみを込めて『尼崎最南端の食堂』なんて呼ばれたりもしますよ」
さて、今回注目の肉グルメとして取り上げるメニューを紹介しましょう。それは「ホルモン丼」です!
杉本さん「母の時代からやっている、名物のホルモン焼うどんを元に、10年ほど前に開発したメニューなんです。母から妻へと受け継がれたレシピで作る特製タレを使って、昔と変わらない味を出しています」
早速、「ホルモン丼」を作っていただきました。
ホルモンを焼くのは、創業当時から使われてきた鉄板。具材となるホルモンとキャベツを焼いていきます。ある程度、火が通ってきたら、特製タレを回しかけて味をなじませながら、さらにしっかりと焼いていきます。
そして焼き上がったら、まずご飯を盛り付けた丼に、キャベツを乗せていきます。次に落とすのは生卵。中心の卵の周りに、焼き上がったホルモンを敷き詰めたら完成です。これが、現在の杉本食堂で大人気という「ホルモン丼」です。常連さんの一番人気という、「大盛り」にしていただきました!
キラキラとつややかに輝くホルモンは、まるで丼の中に敷き詰められた宝石のようです。ホルモンはたっぷり、なんと450gも使用されているんだとか!
ホルモンを口に入れると、プリプリっとした食感とともに、ニンニクがしっかり効いた、パンチのある特製タレの味がします。そして、噛むほどに口の中いっぱいに広がっていく、脂の甘味…。タレのおかげか、ホルモンの鮮度の良さか、臭みはなく、上品な脂の香りが引き立ち、いつまででも口の中に入れておきたい、というほどのおいしさです!
杉本さん「営業当初から、ホルモンを使ったメニューはありました。工業地帯ということもあり、肉体労働者のお客様には、安くて精のつくホルモンが一番人気だったのです。ホルモンと言えは、通称『ミックス』と呼ばれるさまざまな部位が入ったものが多いですが、ホルモン丼に使用しているのは、新鮮な国産牛のシマチョウ(大腸)だけです」
そして、真ん中に鎮座する生卵を潰してご飯と食べると…、タレやニンニクの風味は残しつつ、まろやかでやさしい味に変化しました。まだシャキッとした食感を残すキャベツの歯ごたえも、いいアクセントになっています。なるほど、これなら飽きることなく食べられるので、誰もが大盛りを頼むのもうなずけます!
杉本さん「ホルモン丼以外にも、先代から人気の『ホルモン焼きうどん』、ホルモン入りカレーの『ホルカレー丼』、ピリ辛の『ホルモンチゲ』、そして全国でもうちだけでしか出してない『ホルモンすき焼き』なんてメニューもあります。最初はホルモン丼を目的に、そして次訪れるときには、ぜひ他のホルモンメニューも食べてみてください」
最近は、雑誌やTVでの取材も多く、東京など県外からわざわざ食べに来てくれたお客様もいるとのこと。そして、ホルモンにはコラーゲンやビタミンが豊富なので、女性のお客様も増えたそう。来店した人が投稿したSNSでも多くシェアされているようです。
かつて工場で働く人たちの活力だったメニューが、今や老若男女に愛される肉グルメに。“インスタ映え”も抜群のホルモン丼は、ご当地に根付いた珠玉の肉グルメでした!
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施設情報
●杉本食堂
住所:兵庫県尼崎市丸島町26
電話:06-6416-3149
営業時間:11:00~14:00、17:30~20:00 日曜・祝日定休
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。