暮らしのコト

土地の魅力が凝縮! 全国「道の駅」めぐりの旅

会津の「おいしい」が詰まった「道の駅あいづ 湯川・会津坂下」

この「記事」が気に入ったらみんなにシェアしよう!

みんなにシェアしよう!

全国の道の駅を巡る連載、今回は福島県は会津地方にやってきました!

会津と言えば、400年以上の歴史を今に残す城下町が知られており、豊かな自然や三十三観音巡りなど観光地も多い福島県有数の人気スポットです。特にランドマークの鶴ケ城は、国内唯一の赤瓦天守閣で、幕末当時の姿を現在でも拝めることから、歴史ファンに非常に愛されています。

そんな会津地方で、「会津のへそ」と呼ばれる会津盆地の中心地に位置し、米どころとして知られている湯川村、そして醤油や味噌の蔵元がある会津坂下町の境目にあるのが、今回紹介する「道の駅あいづ 湯川・会津坂下」です。

その広大な田園風景から、「村自体が一枚の田んぼ」のような湯川村。

その広大な田園風景から、「村自体が一枚の田んぼ」のような湯川村。

 道の駅あいづは、湯川村と会津坂下町の境目にあり、両自治体に共同運営されています。


道の駅あいづは、湯川村と会津坂下町の境目にあり、両自治体で共同で整備され、運営されています。

福島県有数の米どころであり、この時期は新米の収穫で大いに盛り上がっていました。

福島県有数の米どころであり、この時期は新米の収穫で大いに盛り上がっていました。

この日は平日の午前中にも関わらず、駐車場がほぼ満車という盛況ぶり。早速、道の駅の施設内に入ってみましょう。入ってすぐにあるのはエントランス。広々とした天井に、多くの人が行き交います。「このエントランスは道の駅の中でも、最も力を入れている場所なんです」と語るのは、株式会社湯川会津坂下の取締役で、駅長の神田武宜さん。

農産物直売所と売店・レストランの中間に位置し、人の行き交うエントランス。

農産物直売所と売店・レストランの中間に位置し、人が行き交い、集うエントランス。

神田さん「私は前職でホテルに務めていたのですが、このエントランスはホテルで言う『ホワイエ』をイメージしました。ホワイエとは、結婚式場や劇場の前室を表し、くつろげる社交場でもあります。この道の駅が、観光客の休憩場所となるだけでなく、地元の方々が何度も足を運んで、交流を深めてくれる場所になってくれるように、まず入口であるエントランスをそのイメージの象徴にしたかったんです」

通常、ただの出入り口として存在するエントランスですが、ここではよりくつろぎやすさを重視して「明るさ・暖かさ・清潔感・音響」にこだわっているそうです。光がさんさんと差し込み、エアコンが充実した場所で、東北ならではの寒さ対策もバッチリ。そのため、ライブや販売会、ワークショップなどが開催される場所としても使われているそう。

神田さん「何度も足を運んでほしいので、特にイベントには力を入れています。2015年には年間100回ほどのイベントを行っていました。地元とは関係ないですが、『北海道物産展』は非常ににぎわいましたね。百貨店の催事のような地元の人々に喜んでいただけるようなイベントも、この道の駅では積極的に行っていきたいと思っています」

そんなこちらの道の駅、オープンは2014年10月まで遡ります。

神田さん「道の駅の目の前には、一級河川・阿賀川と宮古橋があります。そして国道49号と県道33号の合流するこの道は、地元住民や近隣で働く人々にとって重要な生活道路でもありました。実際、交通量も多いです。そんなこの場所で『川の駅』を作ろうという計画が15年ほど前に始まり、国道沿いということもあり道の駅としての役割も求められ、2014年についにオープンすることになりました。運営しているのは湯川村と会津坂下町と2つの自治体で、これは全国的に見ても珍しいケースです」

生まれた経緯からも、道の駅としての役割だけではないことがわかります。

実際に、この道の駅では「河川防災ステーション」という洪水時や地震時の水防活動や復旧活動をアシストする防災拠点としての役割があります。また、整備された川沿いの広場は、子どもたちの遊び場やスポーツ、バーべキュー、芋煮会などの多目的レクリエーションを行う場としての役割も持っています。

観光の拠点として、地域住民の交流の場としてだけでなく、会津地域に無くてはならない施設として生まれ、現在まで愛されているんですね。

道の駅の目の前には、一級河川・阿賀川が流れます。

道の駅の目の前には、一級河川・阿賀川が流れます。

遊具も充実した多目的広場。

遊具も充実した多目的広場。

神田さん「地域住民の人々にとって利便性の高い施設であることも目指しています。施設内には、会津若松市の総合病院の受付が簡単にできる端末を用意しました。お年寄りが待ち時間の短縮に役立つように配慮したものです。また、小さな図書館もあります。ここにある本は、震災後に東北へ献本された本の一部が、役目を終えて破棄されるところを会津坂下町のあるグループが引き取ってきたもの。これまで図書館の利用率の低い地域だったので、こういったところから本の利用が増えていけばいいと思い、『借りた本をそのまま返さなくてもOK、旅する本』というシステムになっています」

会津地域の観光案内の掲示だけでなく、病院の予約端末や小さな図書館を備える。

会津地域の観光案内の掲示だけでなく、病院の予約端末や小さな図書館を備える。

地域の人々の生活がますます便利になる設備が充実しているのはうれしいですね!

神田さん「もちろん、観光の拠点としての役割も期待されています。地方の自治体にとって、外に向いた商業施設の存在は、地域のアピールに重要です。現に、ふるさと納税という制度がありますが、道の駅が開業した平成26年度と比較して、2年目の平成27年度は3、4倍になっています。納税者にプレゼントしているのは、以前と同じ地元産のコシヒカリ。地元の魅力のPRや、道の駅の集客イコール湯川村のファン作りという現象が現れたのではないかと、私たちの自信になっています!」

この日も観光客や地元客で大賑わいの館内を見れば、その話もうなづけますね。ちなみに、この施設内の天井には特徴的な梁が目につきますが、これはどういったものなのでしょうか?

複雑に組み合わされた柱はデザイン的にも栄える。

複雑に組み合わされた柱はデザイン的にも栄える。

神田さん「これは樹状トラスという構造の柱です。短い木材を組み合わせて作られています。実はこの木はすべて福島県の間伐材を使っているそうです。通常、間伐材は短く切られてしまうので、建材には適さないとのことですが、樹状トラスと呼ばれる構造を取り入れることで、この施設の柱に地元の間伐材を使うことができたそうです。デザイン的に優れていますし、この柱を上下ひっくり返すと『人』という字に見えたり、人と人が手を繋いでいるようにも見えるんです。そのため、道の駅のロゴマークにもこのデザインを使用しています」

この柱は、施設内のあらゆる場所で目にすることができます。それではエントランスを離れ、まずは農産物マーケットに行ってみましょう!

広々とした店内に並ぶ充実の野菜。一般的な道の駅よりも早い回転で補充されているのも魅力的。

広々とした店内に並ぶ充実の野菜。一般的な道の駅よりも早い回転で補充されているのも魅力的。

取材に訪れた時期は、まさに新米の収穫シーズン。各銘柄の新米が所狭しと並んでいました。

取材に訪れた時期は、まさに新米の収穫シーズン。各銘柄の新米が所狭しと並んでいました。

特徴的な会津伝統野菜もズラリ。「会津小菊南瓜」など、季節の食材は調理法なども書かれています。

特徴的な会津伝統野菜もズラリ。「会津小菊南瓜」など、季節の食材は調理法なども書かれています。

豊かな自然の中で作られた、国内屈指の品質を誇る米や、会津伝統野菜などが豊富に取り揃えられた農産物マーケット。新鮮かつ手頃な価格で購入でき、目新しい珍しい野菜も並ぶので、観光客だけでなく、地元の人々も今日の食材を求めて、楽しみに訪れるようです。

また、こちらの農産物マーケットでは、野菜、果物に紛れて「桜肉(馬肉)」も非常に充実していました。会津坂下町は、旧越後街道の宿場町として栄えた場所で、江戸時代から馬と密接な地域であり、当時は馬の競り場もあったことから、早くから桜肉を食べる文化があったそうです。馬肉は新鮮なものは刺し身にして、こちらも地元の名産である醤油や辛しみそだれに付けていただきます。

見た目にも華やかで美しい桜肉の刺し身がたくさん並んでいます。

見た目にも華やかで美しい桜肉の刺し身がたくさん並んでいます。

エントランスに戻ると、行列ができているのが「12か月のジェラート」。ジェラートを中心に、地元の野菜や果物を使ったスイーツが自慢の店で、特にジェラートは常時14種類ものオリジナルフレーバーを提供しています。特に人気なのは、「塩バニラ」と、地元産の米「ミルキークイーン」の米粒も入れて作った「新米ジェラート」。特に新米ジェラートは、その独特のつぶつぶとした食感と米の甘みが絶妙で、この道の駅に訪れたらぜひとも味わいたい逸品です!

ジェラートを求める人で大いに賑わっていた「12か月のジェラート」

ジェラートを求める人で大いに賑わっていた「12か月のジェラート」

「新米ジェラート」「玄米くるみ」など、季節のフレーバーが充実。

「新米ジェラート」「玄米くるみ」など、季節のフレーバーが充実。

人気の「塩バニラ(左)」「新米ジェラート(右)」。新米の新食感かつクセになる甘みがたまりません!

人気の「塩バニラ(左)」「新米ジェラート(右)」。新米の新食感かつクセになる甘みがたまりません!

この道の駅で、ジェラートとともに人気を集めている飲食店の中でも、農家レストランの「くうべえる」は、平日でも11時30分ごろには満席になるほどの賑わいをみせています。こちらでは、湯川村と会津坂下町の厳選された地元食材を中心に、色鮮やかでヘルシーなメニューをバイキング形式で楽しめます。

料理を手掛けるのは、国内外のレストランで腕を磨き、地産地消のフレンチベースの創作料理が自慢の波田野シェフ。農家レストランというと「伝統的な田舎料理」というイメージが強いですが、こちらでは伝統は生かしつつ、いつ来ても新しい、素材の味を生かしたメニューを心がけています。野菜だけでなく肉や魚のメインディッシュも楽しめ、特定曜日の午後にはデザートバイキングも開催されます。開放的で自然豊かな風景を眺めながらの食事は、リピートしたくなること間違いなしです!

湯川村の田んぼを目の前に地元食材を味わうぜいたく。

湯川村の田んぼを目の前に地元食材を味わうぜいたく。

色鮮やかな創作メニューをバイキング形式で味わえます。

色鮮やかな創作メニューをバイキング形式で味わえます。

また、館内には地元で愛されるご当地グルメのフードブースも。こちらでは、会津が誇るご当地グルメ「会津名物ソースカツ丼」「会津カレー焼きそば」「会津三大ラーメン」が提供されているほか、会津湯川米を使ったおにぎりを味わうことができます。

ご当地グルメのフードコーナー。商品は持ち帰りも可能です。

ご当地グルメのフードコーナー。商品は持ち帰りも可能です。

「会津名物ソースカツ丼」690円。

「会津名物ソースカツ丼」690円。

「会津カレー焼きそば」550円。

「会津カレー焼きそば」550円。

「会津名物ソースカツ丼」は、明治頃から会津地域の食堂で愛されてきた味。ここのカツは分厚くとも歯切れのよい豚肉を使用しており、フルーティーな甘味が強いソースをたっぷり染み込んだはずの衣も、揚げたてなのでザクザクっと小気味いい歯ごたえを残しています。ソースの甘味と肉汁が相まって、ご飯との相性も抜群ですね!

「会津カレー焼きそば」は、甘めのソースで作られた焼きそばに、ピリッとしたキーマカレー風のルーがかけられたもので、ソースカツ丼と並ぶ会津のB級グルメの定番。どちらの個性も口の中でうまく主張していて、飽きのこない味です。福神漬けとの相性もよく、焼きそばですがご飯が欲しくなる味です。そんな人には、焼きそばとご飯の合盛りの上にカレーがかけられた「カレー焼きそばブランド館盛り」(630円)も用意されています。

そして、なんといっても食べたかったのが、農産物マーケットでもたくさん目にした湯川米を使ったおにぎりです!

「会津油味噌おにぎり」140円。

「会津油味噌おにぎり」140円。

盆地特有の寒暖差の大きい気候と、山々の恵みを川が運んでくれる肥沃な大地が産んだ湯川米。味や艶、粘り・弾力で全国に誇るブランドとして県外からも認知されています。

ここで味わえるおにぎりも、粒の一つひとつがしっかりと立った炊きあがりになっており、口の中に入れるとパラっと解け、噛みしめるごとに旨味と甘味、米の香りが口の中いっぱいに広がります。また、会津名物の味噌とシソを入れた油味噌は、ご飯を引き立てつつ、その甘じょっぱさがあと引くおいしさです。持ち帰っておみやげにしてもよし、陽の当たる川辺で食べればまたひとしおの味わいを楽しめそうなおにぎりでした!

食事を楽しんだら、会津名物が並ぶ「あいづ物産館」へ。お菓子や地酒、工芸品などが多く並びますが、特に前面に主張しているのが醤油・味噌のコーナーです。

あいづ物産館の中央にある醤油・味噌のおみやげ。

あいづ物産館の中央にある醤油・味噌のおみやげ。

古くから愛されてきた会津の味をお持ち帰りできます。

古くから愛されてきた会津の味をお持ち帰りできます。

江戸時代から醤油・味噌蔵が存在し、その味を日本中に轟かせてきた会津坂下町。現在でも江戸創業の蔵元が商品を展開しており、今年10月にも会津高砂商店の「キンタカサゴ特級しょうゆ」が、農林水産大臣賞最高賞を受賞するなど、その評価は揺らぐことはありません。その他にも、八二醸造のみそやひしお、目黒麹店の麹味噌、米麹など、醤油や味噌に関連する商品が人気でした。

街の広告塔として、交流の拠点として、なくてはならない防災の拠点として、オープンから2年経った現在もますますにぎわいを増す「道の駅あいづ 湯川・会津坂下」。様々な取り組みの中で、変わらないコンセプトとして掲げているのは、「おいしい道の駅・たのしい道の駅であること」だそう。

何度訪れても、四季の楽しみがあり、会津で長く愛されてきおいしさと出会える。そんな魅力満点の道の駅に、ぜひ訪れてみてはいかがですか?

  • 施設情報
    ●道の駅あいづ 湯川・会津坂下
    住所:福島県河沼郡湯川村大字佐野目字五丁ノ目78-1
    営業時間:9:00〜19:00(施設によって変動あり)
    http://heso-aizu.jp/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

この「記事」が気に入ったら
みんなにシェアしよう!

MATOME