暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

熱々スープに親鳥のうまみが満点! 高知県須崎市の「鍋焼きラーメン」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は高知県須崎市へやってきました。山と海に囲まれた自然豊かな街で、市内を流れる新荘川は2012年に絶滅種に指定されたニホンカワウソが、最後に目撃された清流として知られています。

JR須崎駅。アクセスは隣駅の土佐新荘駅よりも、特急が止まるこちらが便利。

JR須崎駅。アクセスは隣駅の土佐新荘駅よりも、特急が止まるこちらが便利。

新荘川の河口。水深が浅い場所の川底がくっきり見えるほど、きれいな水が流れています。

新荘川の河口。水深が浅い場所の川底がくっきり見えるほど、きれいな水が流れています。

そんな須崎市のご当地名物が「鍋焼きラーメン」。鍋でスープを煮込んだラーメンで、街では昔から親しまれているそう。現在は市内35店舗で提供されています。中でも人気の「まゆみの店」で、地元で愛されてきた一杯を味わってきました!

■親鳥のうまみが抜群の熱々スープ

昭和が終わるころに、お好み焼き屋としてオープンしたまゆみの店。その後程なくして鍋焼きラーメンの専門店として第二のスタートを切り、いまでは県内外からの客で連日にぎわいを見せる鍋焼きラーメンを代表する店のひとつとなっています。

店は通りに面していますが、駐車場を2カ所設けているので車でも来られます。

店は通りに面していますが、駐車場を2カ所設けているので車でも来られます。

カウンター席とテーブル席が並ぶ、親しみやすい雰囲気の店内。

カウンター席とテーブル席が並ぶ、親しみやすい雰囲気の店内。

店を案内してくれたのは、店主の澳本まゆみさん。注文すると、間もなく小さめの土鍋が運ばれてきました。火から上げたばかりで、中身はまだ煮えているようですね。それでは、ふたを開けてみましょう!

「鍋焼きラーメン 並」。甘いしょうゆのにおいが漂ってきます。

「鍋焼きラーメン 並」。甘いしょうゆのにおいが漂ってきます。

見た目は正統派の鍋料理! 熱した土鍋の中には、熱々のスープゆでた麺、そして生卵ちくわねぎといったシンプルな具材が入っています。澄んだスープをひと口飲むと、いわゆる淡麗系ラーメンのようにあっさりとしていながら、深い甘みと鳥のうまみが感じられます

澳本さん甘みは、うちの鍋焼きラーメンの特徴ですね。野菜や親鳥の鶏ガラから取ったベース自家製のしょうゆダレを合わせたスープが、甘さを醸し出しています」

ベースに使われている親鳥とは、卵を産んで親になった鶏のこと。普通のスーパーで見かけることはほとんどなく、一般的な鳥料理に使う若鳥と比べて硬い肉質と濃厚なうまみがあるのが特徴です。

澳本さん「親鳥は冷凍で出回ることが多いのですが、仕入先の鳥屋さんがこだわってくれるおかげで、新鮮な生肉を使って作り続けることができるんですよ」

さらに親鳥の肉は、小さく刻まれて具材としても使用されていました。コリコリとして弾力があり、かめばかむほどうまみが染み出てきます!

熱した土鍋に入っているおかげでしばらく熱いままで楽しめます。

熱した土鍋に入っているおかげでしばらく熱いままで楽しめます。

麺はストレートの細麺。シンプルな鶏ガラしょうゆのスープと相性が良く、しっかりとしたコシがあります。

ところで、具材の卵はみなさんどうやって食べているのでしょう? 半生から半熟へ、土鍋の余熱で徐々に固まってきた卵を見て気になっていたのです。澳本さんに訊ねてみると……。

澳本さん卵の食べ方はいろいろあります。最初にスープと混ぜてしまう人がいれば、半熟のまま食べる人もいる。ライスにのせる人もいるし、別皿に溶いてすき焼きのように麺をつけて食べる人もいる。注文があればあらかじめ煮込んで固ゆでにした卵も出しています。私は半熟が好きですけどね(笑)」

ちょうど半熟だった卵をくずして麺にからませると、まろやかな味わいに変化。何度も食べに来てくれるお客さんの中には、一回目、二回目と食べ方を変えて味を模索している人もいるそうです。

さらに麺を食べ終わった後には、雑炊という楽しみも待っています!

鍋焼きラーメンに「ごはん大・中・小」を追加注文して雑炊にすることもできます。

鍋焼きラーメンに「ごはん大・中・小」を追加注文して雑炊にすることもできます。

澳本さん「常連さんにはよく頼まれるんです。残った冷たいスープにご飯を入れるのではなく、もう一度火にかけて煮込んでいます。刻みねぎはサービスですよ」

おなかが膨れていても食欲がわいてくるような、あとをひく味わいです! 口の中で、はふはふと冷ましながら雑炊もすんなりと完食。鍋のようにシメまでしっかり楽しめました!

■谷口食堂の思い出が作り上げた味

須崎市のご当地名物となっている鍋焼きラーメン。発祥は戦後間もなく市内に開店した「谷口食堂」で、出前でラーメンが冷めないようにという気配りから生まれたものだと言われています。

澳本さんこの街の人にとって、ラーメンといえば谷口食堂でした。私も若いころに通っていましたよ。その味は忘れられません」

店主の澳本まゆみさん。

店主の澳本まゆみさん。

すっかり街の人気店として定着した谷口食堂でしたが、1980年に惜しまれながらも閉店。影響を受けて鍋焼きラーメンを始めた他店もすべて閉店し、その味は一時失われかけました。そこで、2002年に地元有志がPR団体「須崎名物『鍋焼きラーメン』プロジェクトX」を発足。提供する店舗もどんどん増えていきました。その流れの中で澳本さんが目指したのは、谷口食堂の味だったそうです。

澳本さん「谷口食堂の味を知らない人にも食べてもらいたいと思ったんです。100パーセント同じとはいかなくても、納得できるまで作り続けました。谷口食堂の味を知っている人に味見してもらって、『これだったらいける』と太鼓判を押してもらえたから、ようやく出し始めることができたメニューです

鍋で出すのはもちろん、親鳥を使うのも谷口食堂のレシピです。

澳本さん「親鳥を使うのは谷口食堂の前に鶏を扱う店があって、タダでもらっていたからみたいですよ。今では逆に高いけれど(笑)。一緒にたくあんの古漬けを出すのも、谷口食堂と同じです」

鍋焼きラーメンと必ずセットで出るたくあんの古漬け。酸味があり、箸休めとして添えられたそうです。

鍋焼きラーメンと必ずセットで出るたくあんの古漬け。酸味があり、箸休めとして添えられたそうです。

一方で、まゆみの店は鍋焼きラーメンのアレンジメニューも豊富。多くの店が定番の鍋焼きラーメンを出すなか、専門店ならではの味として人気を博しています。

澳本さん「例えば、『塩鍋焼きラーメン』はうちが発案したオリジナル。香辛料が効いた『カレー鍋焼きラーメン』や、キムチを入れて煮込む『キムチ鍋焼きラーメン』は、お客さんからのリクエストで作りました。いろいろなメニューを最後まで熱いまま楽しめるのが、鍋焼きラーメンの魅力です

鍋の熱さは食べ進めるとじんわり汗ばむほど。夏になると大変な汗をかきそうですが、実は店が一番混むのは8月なんだとか。季節なんて関係なしに、熱々のままおいしくいただくのが鍋焼きラーメンの醍醐味のようですね!

須崎市は観光コースにも組み込みやすい街。よさこい節に登場するはりまや橋や坂本龍馬像がシンボルの桂浜がある高知市と、日本最後の清流・四万十川が流れる四万十町の中間に位置します。高知を訪れたら、ぜひ寄ってみてください!

鍋焼きラーメンを扱う店には、なべラーマン(作・やなせたかし)がデザインされたのぼりが立っています!

鍋焼きラーメンを扱う店には、なべラーマン(作・やなせたかし)がデザインされたのぼりが立っています!

  • 店舗情報

    ● まゆみの店
    住所:高知県須崎市栄町10-14
    電話:0889-42-9026
    営業時間:平日11:00~17:00、土日祝11:00〜21:00
    (水曜休、祝日の場合は営業)

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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