暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

和洋中エスニックで楽しめるインターナショナルなうどん! 千葉県成田市の「成富うどん」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は、千葉県成田市へやってきました。言わずと知れた日本の玄関「成田国際空港」がある国際都市ですね!

成田国際空港の滑走路には世界各国の航空機が列を成します。

成田国際空港の滑走路には世界各国の航空機が列を成します。

もうひとつの街のシンボルが「成田山新勝寺」。初詣の参拝者数ランキングでは毎年のように全国ベスト3に入り、人気力士や芸能人が参加する節分会も毎年たくさんの人で賑わいます。また、歌舞伎ファンには市川團十郎や市川海老蔵でおなじみの市川家の屋号“成田屋”の由来の地としても有名ですね。

成田山新勝寺の総門。外国人観光客の姿も。

成田山新勝寺の総門。外国人観光客の姿も。

そんな国際性と日本らしさを合わせもつ、この街で誕生したご当地グルメが「成富うどん」です。代表的な日本食である“うどん”と、世界各国のグルメとミックスするというインターナショナルな発想の麺料理で、店舗ごとにまったく違う味が楽しめるそう。成富うどんを提供する「手打ちそば うどん 不動」で、実際にいただいてみましょう!

■まるでパスタのような細打ちうどん!

不動は、地元では名の知られたそば屋。かつてTVチャンピオン(テレビ東京)の「第3回 全国選抜そば職人選手権」で優勝した髙根光夫さんが、成田市に隣接する富里市の北部に36〜37年前に開業しました。

店名は成田山新勝寺の御本尊・不動明王にちなみ、大僧正から授けられた名前だそうです。

店名は成田山新勝寺の御本尊・不動明王にちなみ、大僧正から授けられた名前だそうです。

障子越しにやわらかい光が照らす座敷は広々としてくつろげる雰囲気。

障子越しにやわらかい光が照らす座敷は広々としてくつろげる雰囲気。

案内してくれたのは、初代から店を受け継いだ二代目の髙根晴夫さん。早速、成富うどんをいただきましょう!

髙根さん「成富うどんは和風・洋風・中華風・エスニック風と自由にアレンジできますが、うちでは2種類の成富うどんを扱っています。まずは『手打うどんの冷製カッペリーニ』をどうぞ」

手打うどんの冷製カッペリーニ。割り箸と一緒に、スプーンとフォークを出してくれます。

手打うどんの冷製カッペリーニ。割り箸と一緒に、スプーンとフォークを出してくれます。

目の前に現れたのは、欧風レストランでふるまわれるようなおしゃれな一皿。まるでパスタのような見た目ですが、色とりどりの具材の下に見える白い麺は、間違いなくうどんです!

髙根さん「パスタ感覚で食べられるうどんです。冷水で締めたうどんに、きゅうりトマト黄パプリカキウイといった具材をのせて、特製のバルサミコソースをからめました」

フォークを使ってパスタ感覚で食べられます。

フォークを使ってパスタ感覚で食べられます。

麺はフォークでくるくると巻き取れるほどの細さです。口に運んでみて驚いたのは、和食のうどんと洋風ソースの相性の良さ! 細いながらも強いコシのあるうどんが、とろりとしたバルサミコソースの酸味とトマトやキウイの甘みをまとい、さっぱりフレッシュな味を楽しめます。

髙根さん「秘密は自家製の細打ちうどんです。うどんは本来、薄力粉と強力粉の中間の中力粉を使用します。でも、細打ちうどんは、パスタと同じ強力粉で作っているんです

細打ちうどんの材料には、隣市の八街市で生産される強力粉を100%使用しているそう。これによりパスタに使うようなソースともマッチする、細くてコシの強いうどんができ上がるということですね!

細打ちうどんを作る店主の髙根晴夫さん。生地の弾力が強いので、力を込めて切っていきます。

細打ちうどんを作る店主の髙根晴夫さん。生地の弾力が強いので、力を込めて切っていきます。

ソースのさわやかな酸味とともに、きゅうりや黄パプリカのしゃりしゃりとした食感を楽しみながら、一杯目はあっという間に完食。すると、髙根さんは次のメニューを運んできてくれました。

髙根さん「続いて、『グリーンカレーうどん』です」

グリーンカレーうどん。こちらは温かいメニューです。

グリーンカレーうどん。こちらは温かいメニューです。

日本人の知るカレーうどんとは一線を画す、何ともエスニックな一品! たっぷりかけられたルーの下に隠れる細打ちうどんをフォークで巻き取って食べると、優しげな緑色からは想像のつかない辛みが、じわりと舌に広がります!

髙根さん「辛いでしょう? 実は、このグリーンカレーは、うちに来てくれるタイ人のお客さんから教えてもらった本場のレシピで作っているんです」

ただ辛いだけではないのです。香辛料が織りなす辛みのなかには、ココナッツペーストの心地よい甘みがひそんでおり、何ともあとを引く本格派の味わいです。れんこんの素揚げがトッピングされたルーの具材は、なすたけのこ鶏肉と、どれも食べ応えがあっておなかも大満足。本日二杯目の成富うどんも、おいしくいただきました!

■外国人と参拝客が親しめるご当地グルメに

和食の域を超えて洋風・中華風・エスニック風と自由なスタイルが楽しめる成富うどん。その誕生は今から6年前のことです。

髙根さん「はじまりは成田市にあるスペインバル『Las Nomadas(ラス・ノマダス)』とのコラボメニューです。店主と私は地元の小学校からの幼なじみだったのですが、あるとき彼がお店を開いたことを知って会いに行ったところ、2人の店でコラボメニューを作ってみようという話になりました」

パエリアやアヒージョ、生ハムなどのスペイン料理やお酒の種類も豊富なスペインバル「Las Nomadas」。

パエリアやアヒージョ、生ハムなどのスペイン料理やお酒の種類も豊富なスペインバル「Las Nomadas」。

厨房に立つ店主の阿部隆志さん。

厨房に立つ店主の阿部隆志さん。

スペイン料理を扱うLas Nomadasが得意なのは、もちろん洋風の味付け。それと合う麺を検討したとき、夏場に数量限定で出していた冷たい細切りうどんなら、パスタ感覚で取り入れられるのではないかと考えたそうです。

髙根さん「実際に作ってみたところ、非常に相性が良かった。そうして完成したコラボメニュー第1弾が、手打うどんの冷製カッペリーニです。このメニューに使われているバルサミコソースは、Las Nomadasが作った特製ソースなんですよ」

当時は、アレンジしたうどんがご当地グルメとして登場し始めた頃だったそう。地元タウン誌の記者からも「ご当地グルメにできるのではないか」とお墨付きをもらい、成富うどんはご当地グルメとしての道を歩み出しました。もちろん、Las Nomadasも洋風の成富うどんをラインナップしています。

Las Nomadasの「成富うどんのペスカトーレ」。不動の細打ちうどんを使用した魚貝類たっぷりの一皿。

Las Nomadasの「成富うどんのペスカトーレ」。不動の細打ちうどんを使用した魚貝類たっぷりの一皿。

Las Nomadasの「成富うどんのミートソース」。大あらの牛肉が食べごたえバツグン

Las Nomadasの「成富うどんのミートソース」。大あらの牛肉が食べごたえバツグン。

こうして地域に少しずつ広まっていった成富うどんですが、成田市には昔からの名物グルメとして成田山新勝寺の参道で食べられるうなぎがありました。しかし、髙根さんはそれだけではもったいないと感じていたのだとか。

髙根さん「成田山新勝寺には年間1000万人以上、成田国際空港には年間3000万人以上もの人々が訪れますからね。日本人と外国人、どちらにも親しんでもらえる成田エリアならではのご当地グルメがあっても良いと思ったんです」

いろいろな国の要素を取り入れてアレンジできる成富うどんは、外国人向けのなじみやすい味に仕上げることが可能。箸が使えずともフォークで手軽に食べられてうどんという和食も味わうことができます。さらに、伊勢神宮の名物が伊勢うどんであるように、うどんは寺社仏閣と結びつきがあるハレの日の食べ物でもあります。

髙根さん「成富うどんという名称になった理由のひとつは、うちが富里市にあって、Las Nomadasが成田市にあるからですが、それだけではありません。『富が成る』という縁起物としての意味も込めてられているんですよ」

なるほど、外国人と参拝客が集まる成田市には、まさにぴったりのご当地グルメというわけですね!

2020年に東京オリンピックを控え、世界に直結する街としてますます注目が集まる成田市。成田山新勝寺のほかにも、空港に離着陸する飛行機を大迫力で見物できる「成田市さくらの山」など大人も子どもも楽しめるビュースポットが点在。単なる旅の通過点ではなく、ぜひ観光スポットとしても足を運んでみてください。街中で食事選びに迷っている外国人を見かけたら、成富うどんをすすめてみるのを忘れずに!

  • 店舗情報

    ● 手打ちそば うどん 不動
    住所:千葉県富里市七栄322-1
    電話:0476-93-5511
    営業時間:11:00~16:00(日曜休)
    http://www.fudo-soba.com/
    ● Las Nomadas
    住所:千葉県成田市公津の杜3-37-3 メゾンドヴュー104
    電話:0476-36-8848
    営業時間:18:00~24:00(不定休)

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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