暮らしのコト

満腹御礼 ご当地肉グルメの旅

暑い夏にピッタリサッパリ! 長崎県佐世保市・時代屋の「レモンステーキ」

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連日、猛烈な暑さが続く今年の夏。食欲もなくなりがちな季節ですが、こんなときこそスタミナのつく料理を食べて、夏バテを吹き飛ばしたいところです。

さて、全国のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」、今回は長崎県佐世保市の「レモンステーキ」をフィーチャーします。

肉にレモン。名前を聞くだけで、いかにもサッパリしていて夏に合いそうですね。その秘密と味を調べるべく、佐世保を訪ねました!

長崎空港から佐世保駅までは、バスでおよそ1時間半ほど。佐世保の料理屋では、レモンステーキの名前をあちこちで見かけます。

長崎空港から佐世保駅までは、バスでおよそ1時間半ほど。佐世保の料理屋では、レモンステーキの名前をあちこちで見かけます。

今回訪ねるのは、昭和61年創業の「下町の洋食 時代屋」。佐世保駅から佐世保線に乗って有田駅で降り、タクシーで10分ほど走ったところにあります(電車で行く場合)。

■夏場の売り上げ低下を挽回すべく生まれた肉料理

国道35号線沿いに進むと見えてくるトリコロールカラーの大きな旗のある店が時代屋です。さっそくお店にお邪魔すると、ドアを開けるやいなや、肉が焼ける香ばしい匂いが漂ってきました。

フランスの国旗を思わせる大きな旗が「下町の洋食 時代屋」の目印。

大きなフランス国旗が「下町の洋食 時代屋」の目印。

明るくてどこか懐かしい雰囲気の店内。テーブル席だけでなく座敷席もあります。

明るくてどこか懐かしい雰囲気の店内。テーブル席だけでなく座敷席もあります。

東島さん「遠くからようこそいらっしゃいました。暑かったでしょう?」

二代目店主の東島シェフ。

二代目店主の東島シェフ。

出迎えてくれたのは、店主の東島寿明さん。父親は時代屋の先代シェフであり、レモンステーキを考案したひとりであると教えてくれました。そう、ここ時代屋はレモンステーキ発祥のお店なのです。

東島さん「私の伯父の紀孝と父の洋が、昭和40年代頃に考案したメニューがレモンステーキなんですよ。当時、伯父が働いていた老舗のレストランで、夏場の売り上げが落ちていたそうです。その対策として、食べやすい牛肉の料理を考えるようにオーダーが下り、父も協力したんです。『牛肉といえば分厚いステーキ』という時代だったんですが、日本人の胃にはちょっと重い。そこで、日本のすき焼きのように肉を薄く切って、韓国の焼き肉のように鉄板で焼いてみようということになったそうです」

話を聞くと、アメリカのミニッツステーキ(牛肉を薄く切って手早く焼いたステーキ)の影響もあるそう。さすが、昔から欧米人との交流が豊かな佐世保。国際色豊かな逸話です。

レモンステーキの知識を得たところで、さっそく料理を用意してもらいました。薄切りとはいえ、大きな鉄板にどーんとお肉が並んでいるのは壮観です。そしてライスの量もたっぷり! ほのかに甘い香りがしますが、これがレモンの効果なのでしょうか?

一番人気のレモンステーキセット(1350円)。ブイヨンを使ったスープとサラダ、ライス付きです。がっつり食べたい人には、よりボリュームのあるスペシャルレモンステーキセットもオススメ。

一番人気のレモンステーキセット(1350円)。ブイヨンを使ったスープとサラダ、ライス付きです。がっつり食べたい人には、よりボリュームのあるスペシャルレモンステーキセットもオススメ。

アツアツの鉄板に乗せられたたっぷりのソースとお肉。甘い香りが鼻腔をくすぐります。

アツアツの鉄板に乗せられたたっぷりのソースとお肉。甘い香りが鼻腔をくすぐります。

東島さんレモンをふんだんに使っているのはソース。ベースはしょうゆで、食欲をそそるようにニンニクなども入っています。焼き肉のタレなどと違って、鉄板で火を通すことで味が引き出されるソースなんですよ」

ソースをかけたというより、たっぷりのソースに肉が浸っているようなビジュアル。焼き加減をレアにして食べるのがレモンステーキ流です。まずはお肉を一枚、ひっくり返して裏も軽く焼いてから食べてみると……柔らかくて食べやすい! レモンを使ったソースは、ほんのりとした甘酸っぱさで牛肉と絶妙にマッチしています。暑い夏にぴったりの味付けです。

〝ざっくばらんに美味しいものを食べよう〟がコンセプトの「時代屋」。食べる際はナイフ&フォークでもお箸でも自由。今回はお箸で。

〝ざっくばらんに美味しいものを食べよう〟がコンセプトの「時代屋」。食べる際はナイフ&フォークでもお箸でも自由。今回はお箸で。

東島さん「肉はオーストラリア産牛肉のサーロインに牛脂を加えたものです。常連のお客様に97歳の女性の方がいらっしゃるのですが、そんな高齢の方でも、『この店のお肉は柔らかくて食べやすいわ』といっていただけるんですよ」

■牛丼風アレンジにソース混ぜごはんに。レモンステーキは最後まで楽しめる

続いて、東島さんに薦められるがまま、ライスの上にお肉を乗せて牛丼風に。ジューシーな牛肉と白米は、どうしてこんなに相性がいいのでしょう!レモンの風味が手伝って、やはりサッパリと味わえます。

レモンステーキ牛丼風。でも、ここでライスを食べ尽くしてはいけない!

レモンステーキ牛丼風。でも、ここでライスを食べ尽くしてはいけない!

美味しい牛肉を、牛丼というリーズナブルなご飯の代表格風にして食べるという行為に、少々背徳的な贅沢さも感じます(笑)。しかし、「お客さんが食べたいように食べてもらう」という太っ腹な心意気こそ、「時代屋」の親しみやすさなのです。

レモンステーキの歴史と食べ方を解説したPOP広告。長崎弁がいい味を出しています。

レモンステーキの歴史と食べ方を解説したPOP広告。長崎弁がいい味を出しています。

そして最後に、時代屋の名物に挑戦。それは……ステーキを食べ終わったら、ライスを鉄板に投入し、残ったソースと混ぜていただくこと! お行儀が悪いといわれてしまいそうですが、これもお店が推奨する食べ方なのです。

東島さん「うちのコンセプトは『美味しいものを美味しく食べましょう!』ですから(笑)。うちにやって来るお客さんのほとんどが、ソースとご飯を混ぜて食べていますよ」

混ぜれば混ぜるほど、ソースが絡んだライスがつややかに輝いていきます。口に入れると……予想通りの美味しさ! 牛肉にかかっているときのソースは、いわば牛肉の味を引き出す実力派の脇役といった感じでした。ところが、ライスと混ざると一転、今度はソースが「主人公」に!

特にはっきりするのがレモンの風味です。この爽やかな酸味がレモンステーキの秘密。お肉といっしょに食べたときとはまったく違うように感じられるソースの味にびっくりしました。

レモンステーキソース混ぜご飯。締めはこれで決まりです。

レモンステーキソース混ぜご飯。締めはこれで決まりです。

●OBの活躍により、佐世保一帯に人気が拡大

佐世保にはレモンステーキを考案した東島紀孝氏・洋氏の両シェフから学んで独立した料理人も多いのだとか。今ではレモンステーキは、佐世保のあちこちで食べられる料理になっています。

東島さん「父たちが作っていたかつてのレモンステーキは、和牛のヒレ肉を薄く伸ばして焼いた本格的なごちそうメニューだったそうです。ですが昭和61年にこの店をオープンするにあたり、父はより多くの人に気軽に食事を楽しんでほしいと考えました。それでうちは、本格的なコース料理を出すレストランではなく、町の洋食屋として出発したんです。レモンステーキも輸入産の牛肉を使い、より安く提供できるようになりました。最近のご当地グルメブームに乗って、今では佐世保の名物料理のひとつとして親しまれていますよ」

店内には兄の紀孝氏とレモンステーキを考案し、時代屋をオープンした先代・東島洋シェフの写真も飾られていました。

店内には兄の紀孝氏とレモンステーキを考案し、時代屋をオープンした先代・東島洋シェフの写真も飾られていました。

人に歴史あり、そして名物料理にも歴史あり。佐世保といえばテーマパークのハウステンボスが有名ですが、ぜひ時代屋にも足を伸ばして、元祖レモンステーキの味を堪能してみてはいかがでしょうか? 今日も満腹御礼、ごちそうさまでした!

  • 店舗情報

    ●下町の洋食 時代屋
    住所:長崎県佐世保市吉福町172番地1号
    電話:0956-30-7040
    営業時間:11:00〜14:00(LO)、17:00〜21:00(LO) 月曜定休[祝日の場合は翌日休]
    http://www.jidaiya.ne.jp/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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