暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

日本一コシがない!?  もっちりふんわり「伊勢うどん」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡りレポートする「ご当地ヌードル探訪」。今回は、昨年、式年遷宮を迎えた伊勢神宮のお膝元・三重県伊勢市へ。「お伊勢参り」のお供として江戸時代から親しまれている名物「伊勢うどん」をご紹介します!

伊勢うどんの大きな特徴は、うどんなのにコシがないこと。そのぶん、もっちりふんわりと柔らかい食感が魅力なのです。

なぜ柔らかいのかというと、「伊勢参りに訪れる旅行者に、消化のいいものを食べて疲れを癒してもらいたい」というおもてなしの想いから、というのが有力な説で、一般的なうどんとは異なる、独自の発展を遂げてきた伊勢うどん。その魅力を知り尽くすべく、昭和初期創業の老舗「山口屋」さんにお邪魔しました!

■たれと麺を同時に食べる

山口さん「よーく混ぜて、たれと絡めて食べてくださいね」

そう語るのは、店主の山口敦史さん。

目の前に出された伊勢うどんを見てまず驚いた……。 見よ、このたれの色を!!

「真っ黒」と言っても過言ではない濃ゆ~いたれ。まさか、とんでもなくしょっぱいのでは…?

「真っ黒」と言っても過言ではない濃ゆ~いたれ。まさか、とんでもなくしょっぱいのでは…?

山口さん「実は見た目ほどしょっぱくないですよ。たまり醤油を使っているから見た目は濃いけれど、たれだけでも飲めるくらい。麺が極太なのも、たっぷりたれと絡ませるためなんです」

そうは言われても……。いわれるがまま、麺とたれをまぜまぜ。

すると、ふんわりとたれの香ばしい香りが立ちのぼり食欲をそそります。

たれをまとって、なんとも艶やかな伊勢うどん。

たれをまとって、なんとも艶やかな伊勢うどん。

いざ、ずっしり重い麺をひと口噛むと、想像以上のもっちり感! 確かにたれの味は見た目ほど濃くはなく、むしろ非常にまろやかで、魚介のやさしい風味が口いっぱいに広がります。

山口さん「たれは店によってさまざまで、共通しているのはベースになるたまり醤油くらいかな。うちではかつお節、煮干し、さば節の風味を生かすようにしています」

ズルズルッと、勢いにまかせて一気に完食! なんと、たれまで飲み干してしまうほどの美味さでした!!

■伊勢うどんの変わらぬ味、新しい波

お店を始めたのは山口さんの祖母で、山口さんは3代目になるのだそう。

店主の山口敦史さん。

店主の山口敦史さん。

山口さん「とにかく変わらない味を大切にしています。麺もいちから打っているし、たれとの絡み方が全然違うんですよね、やっぱり」

麺は幅1cmを超える極太です。

幅1cmを超える極太麺。

麺を茹でる時間は、なんと1時間! 一度で最大80人分くらいまで茹でることができるそう。忙しいシーズンともなると、この工程が1日に3〜4回繰り返されます。

山口さん「伊勢神宮が遷宮の年だった去年は、とにかく忙しかったですね。でも、最近はお店が減ってきているのが悩みどころです」

というのも、近年スーパーなどで安価に「伊勢うどん」が手に入り、専門店でなくても気軽に食べられるようになってしまったから。山口さんはそんな流れに負けじと、「地元を盛り上げていきたい」と強く語っておられました。

山口さん「遷宮の年に合わせて、『田舎あられ伊勢うどん』というメニューを作りました。伊勢にはあられをお茶漬けにして食べる文化があって、それを参考にあられをトッピングした伊勢うどんです。これに限らず、できれば地元の食材を使って、積極的に新しいメニューもつくっていきたいですね」

これ以外にも「山口屋」には、てこね寿司、さめのたれをセットにした「郷土御前」(1日20食限定)など、郷土の味を生かしたメニューがあります。

伝統に支えられた変わらぬ味と、新しい試み。山口さんが仕掛ける新しい波が、「伊勢うどん」をさらに盛り上げていくに違いありません。みなさんもお伊勢参りの際は、ぜひ「伊勢うどん」を味わってみてください!

  • 店舗情報
    ●名代 伊勢うどん 山口屋
    住所:三重県伊勢市宮後1-1-18
    電話:0596-28-3856
    営業時間:営業時間:10:00~19:00(木曜休、祝・祭日は営業)
    http://www.iseudon.jp/index.html

 

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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