公園に面した自宅の一部を地域にオープン。人と人がつながる新しい賃貸併用住宅

建築家のTさんには、住まいに対するこんな思いがあった。
「住居費は生涯支出の大半を占めます。それなら、ただローンを払い続ける一般的な家の買い方をするのではなく、暮らしながら収益を生む家に住むことで支出も減り、その分豊かな生活ができるのではないか」
そこでTさんは、友人の建築家・宇津木喬行さんとの共同設計で、シェアオフィス、コーヒースタンド、シェアリビング、自宅が一体となった賃貸・店舗併用住宅を建てることにした。

物件データ 所在地/横浜市西区
延床面積/183.84㎡
築年月/2019年11月
設計/宇津木喬行・高橋良弘
(333architects)
www.333architects.com
敷地前の公園に向けて、大きく2面の開口部を取り、廊下をなくすなど間取りを工夫して広々と使えるようにしている

敷地の目の前にある公園に向かって開いたコーヒースタンドは、日本茶インストラクターが週末にカフェを開店。さらにTさん一家が道行く人にコーヒーを振る舞うこともあるという。

1階のコーヒースタンドはT家の玄関でもある。カフェとして貸し出す他、気分を変えて仕事をしたり、DIYをしたり、多目的に使う

地下に設けたシェアオフィスは水回りも備えているため、住宅として貸し出すことも可能だ。

地下には内外の階段から入室可能にし、回遊できるようにした。法規上必要だったドライエリアは明るさももたらす
東側約20㎡のシェアオフィス。鉄筋コンクリート造なので、断熱性・遮音性が高く落ち着いた雰囲気。半地下のため窓からは散歩や通学中の人たちの姿が見える
西側シェアオフィス。奥に階段があるが、施錠できるため独立して使うことが可能。キッチン・バス付きなので住居としても貸し出せる

2階のシェアリビングはT家のプライベートリビングと兼用で、大人数で使えるように窓辺に大きなソファを設置し、アイランドキッチンも導入。料理のスチール撮影やインタビュー動画の撮影などに使われることもあるなどサイドビジネスは順調のようだ。Tさんの奥さまも当初からこのプランに大賛成だったそう。
「家に人を招くことが好きでしたし、さまざまな出会いがあり、家族だけで住むより楽しいです」(奥さま)
プライベートスペースの扉は鍵付きでセキュリティー対策も万全。貸出し受付はインターネット上のマッチングプラットフォームを利用しており、事前に利用者の情報が分かる上、手続きも簡単だという。

2階のダイニングキッチン。キッチン作業台の収納扉は鍵付きで、貸し出すときは貴重品などを収納できる。奥に続くプライベートエリアの扉にも鍵を付けた

「家を〝所有する〞よりも多くの人に活用された方が私たちとしてもうれしいですし、賃料収入をローン返済に充てられます。各部屋の用途を限定せず、余白のある間取りにしているので、将来的に使い方を変えていけるのもメリットです」(Tさん)
現在、シェアオフィスには宇津木さんの事務所が入居しており、宇津木さんとの自然な会話から新しいプロジェクトが生まれることもあるとか。家という枠を超えた住環境から得られるものは計り知れない。

2階には高窓を設置して隣家の視線を遮りながら採光。ロフトは将来、子どもの遊び場にしたり、書斎にしたり、多目的に使うための余白スペース
text_Makiko Hoshino photograph_Hideki Ookura
取材協力

沖縄生活を手放し、便利な都心に転居。約52㎡の家を拠点に、好きな音楽を満喫

東京都新宿区のマンションで暮らすTさん夫妻の楽しみは、クラシックギター。45年前に弾き始めて以来、その奥深さに魅了され、着実に腕を磨いてきた。今ではカフェでコンサートを開いたり、仲間と海外で演奏したり、音楽は欠かせない存在だ。そんなご夫妻は、ご主人の転勤で6年間、沖縄県で暮らしていた。しかし、定年後はかつて住んだ街に戻ることに。

物件データ 所在地/東京都新宿区
リノベーション面積/51.51㎡
リノベーション年月/2021年4月
設計/オフィス・エコー
www.office-echo.com
プロデュース/東京リノベ
www.tokyo-r.jp

「沖縄でも楽器を通してたくさんの縁に恵まれました。でも、もう郊外暮らしは満喫しましたし、リタイアして自分の時間が増えると、もっと気軽に芸術に触れ、ふらりと飲んで帰れる場所にいたいと思うようになって。交通が便利で文化施設が充実した都心に戻ることにしました」(ご主人)

ミモザやライラックなどの花卉のほか、家庭菜園も楽しむバルコニー。周辺に公園や神社があるため、スズメがやってきて手乗りするほど懐いている

新居に選んだのは約52㎡の中古マンション。限られた面積だが、リノベーションを前提としていた夫妻はポジティブな発想で捉えた。
「高台ならではの開けた景色にひと目惚れ。部屋の広さは以前の3分の1ですが、間取りを工夫し、持ち物を減らせば事足ります。コンパクトな分、工事費を抑えられ、設備などをぜいたくにもできますから」(奥さま)

LDKは天井板を外した分、高さが約20㎝アップ。空間の大きさと無垢の木の床により、音響が良くなった。キッチンの収納は使い方に合わせて計画
LDKの明るい光を廊下に通すガラスの框ドアと上部のFIXガラス。本棚は、ご夫妻の最低限必要な蔵書数が収まる幅約150㎝
 
「毎日使う場所ほど、ぜいたくにしたかった」と奥さま。トイレはランタン柄の壁紙を採用し、棚に花を飾りくつろいだ雰囲気に
白と木をベースにした玄関には、ビビッドピンクのアクセントウォールを取り入れた

リノベーションはプロデュース会社「東京リノベ」と、設計事務所「オフィス・エコー」の江本響さんが担当した。バルコニー側に並んでいた3つの個室をつなげ、明るく開放感のあるLDKに改造。キッチンには食卓と作業台、収納を兼ねた一台三役の家具を造作し、省スペースを実現した。
 「LDKを広々と、水回りの広さもゆとりを持たせた上で、収納量もしっかり確保して快適な生活を維持できるようにしました」(江本さん)

寝室は極力LDKを広くするため最小限に。ベッドカバーに合わせて選んだウィリアム・モリスの壁紙が空間を華やかに演出

大量にあった生活アイテムは、新居の収納量に合わせて半分以下に断捨離。暮らしを見つめ直す良い機会になったという。
T邸は夫妻が旅先などで見つけたアートもポイントだ。濃色のチークの床や華やかなアクセントクロスにしっくりとなじみ、温かみのあるインテリアに仕上がっている。
 「内にも外にも視線が抜けるので、むしろ沖縄の家以上に開放的な気分。掃除がラクな点も気に入っています」と笑顔のご夫妻。リビングで日夜クラシックギターを弾き、気軽にコンサートへお出掛け。変わらぬ音楽への情熱で都心暮らしを満喫している。

取材協力

ネイルサロンにコーヒースタンド。 小商いの夢をかなえた職住一体型の家

ご主人の転勤をきっかけに、長年住んだ東京から茨城に引っ越してきたYさん一家。県内のあちこちをドライブで巡るうちに、ある地域に引かれいった。かつて水戸藩下で在郷町として栄えた常陸太田市だ。市内に点在する土蔵や町屋など古い建物を生かした飲食店から、新しい生活のインスピレーションを得たという。Yさん夫妻は、ここに住まいを構えて、地域に根差して暮らしていこうと決めた。「私たちの好きなことや得意なことを通して、地元の人たちと親睦を深めていけたらと思いました」(ご主人)

物件データ 所在地/茨城県常陸太田市
面積/89.43㎡
築年月/2020年6月
設計/藤田雄介・伊藤茉莉子
(Camp Design inc.)
www.camp-archi.com

奥さまはネイリストで、安心して子育てと仕事ができる環境を求めていた。そんなご夫妻が希望したのは、自宅で小規模な商いができる住まいだ。
はたして完成したY邸は東西に広がる敷地に合わせた長方形の建物。道路側に店舗、奥に住居が配されているが、両者は通り土間によって区切れ、一旦、屋外に出ないと行き来できない動線だ。

日差しや雨をしのげる屋根付きの広いエントランスは、格好の憩いのスペース。外壁や屋根材は周辺の住宅に調和する淡いグレーを採用している
深い軒に守られ、リビングダイニングからワンクッション置かれた寝室は落ち着いた雰囲気。勾配天井を生かしてロフトを設けた
軒下は物干しスペースや縁側として活用。ネイルサロンの階段は夫妻が自作。この家に住み始めてからDIYに励むようになった

一見すると別棟だが、一つの大きな切妻屋根で連結されており、互いの様子は見えないものの、小屋裏の空間を介して声や音が聞こえる。設計を担当した建築家の藤田雄介さんはこう話す。「『職』と『住』の場を適度に切り離すことで、私生活を守りながら、にぎやかな町の空気を感じられる住まいを目指しました。町の風景になじむ外観デザインにも配慮しています」

幅約2.70m の大きな玄関扉を開け放つと野外のすがすがしさでいっぱいに。木製の引戸には重厚感があり、閉じればしっかりプライバシーを守れる

住居は玄関側からリビングダイニング、キッチン、寝室の順に展開。奥に行くほど軒を深くして近隣からの視線を遮り、プライベート感が増すよう工夫した。最も奥にあるガラス張りのサンルームが、奥さまのネイルサロン。「自分の好きな場所が、日常の中にあるのがうれしいです」と奥さま。掃出し窓で外から直接出入りできるため、独立した使い方が可能だ。大きな窓から景色を眺め、落ち着いて過ごせるとお客さまにも好評だそう。

年内にコーヒースタンドのオープンを目指すご主人。店舗の半分は厨房で、コーヒー受渡し用の小窓を設けた
東西に視線が抜ける半オープンのキッチン。山の景色がよく見える建物の中央に配置した。シンク前の壁をL字に切り取り、圧迫感を軽減

店舗は、コーヒースタンドのオープンに向けて目下、準備中だ。「町内会には朝市から夏祭りまで、さまざまな催しがあります。それらと関わりながら、かき氷などの軽食や雑貨を販売してもいいかもしれませんね」とご主人は笑顔を見せる。
地域で受け継がれてきた文化と、ご夫妻の熱意が化学反応を起こし、新たな物語が紡がれていく。

text_ Makiko Hoshino photograph_Akira Nakamura
取材協力

伝統的な建築様式×現代の技術が融合。宙に浮くレジリエンス(適応)住宅

Nさんは長年、日本の民衆文化や世界各国の建築物を専門としてきた歴史研究者。東日本大震災以降は、さまざまな人々が千年単位で居住した可能性のある地域を調べるようになっていた。その中で出会ったのが、茨城県郊外のとあるエリアだ。人里としての歴史の深さとともに、果てしなく広がる田園風景に魅了されたという。東京から移住し、ここで培われてきた営みを体験していこうと決めた。

物件データ 所在地/茨城県
面積/82.81㎡
築年月/2021年3月
設計/福島加津也+中谷礼仁
千年村計画
mille-vill.org
福島加津也+冨永祥子建築設計事務所
ftarchitects.jp

古今東西の建築に造詣のあったNさんには、建てたい家のイメージがあった。特に外せなかったのが、木造の高床構造であること。高い位置に居室があると、いろいろなものを俯瞰できて気持ちがいいというのが理由だ。「稲穂がそよぐ田んぼを眺めたり、コオロギの鳴き声を聞いたり。毎日、違う風情を味わっています」(Nさん)

室内は正方形を 9 分割にした間取り。勝手口を入るとすぐキッチンで、生活動線に沿ってダイニングやバスルームなどが配されている
遠景から近景までを望む開口部。昔の民家に倣い、半屋外の土間を出入口に。バーティカルブラインドとよろい戸で目隠しと防犯対策

メイン設計を託したのは、研究活動を共にし、同じような知見を持っていた建築家の福島加津也さんだ。高床式の木造住宅を建てる場合、建物底面と地面の間に満遍なく柱を立てて支えるのが一般的だが、福島さんは類のない発想をした。中央部に太い柱を4本立て、複数の斜材を立体的に組み合わせて耐久性を確保し、宙に浮かせたような形にしたのだ。「柱を集約させたことで、地上に開放的な空間が生まれました。心理的なのびやかさがあり、格好のコミュニティーの場になるでしょう」(福島さん)

開放感あふれる吹抜けの広間。北側の天窓には乳白フィルムを貼り、柔らかな日差しが注ぐように。冷暖房は床下エアコンと壁付けのエアコンで行う

この家のもう一つの特長が、災害から生活を守る防災機能を備えていること。電気自動車の蓄電池を活用した太陽光発電システムを完備し、万一のときはエネルギーを自給自足できる。しかしNさんは、防災に必要なものは、設備や機能だけではないという。 「太古から続く集落は、一見、目立たないものですが、欠点になり得る地盤や地形を使いこなし、協力して物事を乗り越える知恵と文化を育んできました。その宝物に触れられたら、こんなにうれしいことはありません」

柱と斜材は、通路をじゃましない位置に配置。民家の田の字型の間取りから着想し、一部の部屋は薄暗くして過ごし方に変化が付くようにした
太陽光発電システムは、環境エンジニアの協力を得てオリジナルで製作。三角屋根に設置された太陽光パネルから、蓄電池に電気が送り込まれる

いつか自宅で寺子屋教室を開けたらと語るNさん。旧来の建築様式から導いた新発想の住まいは、未来への期待をも表している。

各国の建築手法や文化的なモチーフが融合した N 邸。書斎は住宅風仏堂にヒントを得て一段高く
text_ Makiko Hoshino photograph_Akira Nakamura
取材協力

大開口から木々が育つ庭を贅沢に一望。 光と風がめぐる、夏に快適な住まい

南北に開けた日当たりの良い敷地に一戸建てを新築したYさん。庭をくの字で囲むように建つ平屋造りの住まいは、玄関を中心にパブリックとプライベートスペースの2つのエリアに分かれていて、どちらも南北に大きな開口が設けられている。全開にすると内と外が一体になり、家中にフレッシュで気持ちのいい風が通り抜けてゆく。
 

物件データ 所在地/兵庫県相生市
面積/93.76㎡
竣工年月/2017年1月
設計/岸本貴信(CONTAINER DESIGN)
cd-aa.com/

「しょっちゅう蝶々の通り道になっています(笑)。室内にいても、ほとんど外にいるような感覚ですね」(ご主人)  抜群の開放感のカギを握っているの が、枝をのばす木のように放射状に広がる柱だ。構造壁の代わりに屋根を支え、遠くまで視線が抜けるのびやかな空間を獲得している。柱にはキッチンカウンターやワークデスクのほか、食器棚やディスプレイに活用できるオープン棚をつくり付けて、家族の溜まり場とした。設計を手掛けた建築家の岸本貴信さんは、「新たな芽から大きな木が育ち、木陰ができる。そんなイメージで家族の居場所をつくりました」と話す。

軒の深い屋根が日差しを遮るため、軒下も室内も涼やか。地面までのびるデザインは、「庭から登れても面白いね」という雑談から生まれた

庭に面した縁側は、家族3人の憩いの場所。深い軒や背の高い樹木が夏の強い日差しを和らげてくれるため、涼しく、のんびりと過ごせる。庭ではテーブルを持ち出してバーベキューをしたり、ビニールプールで息子さんを遊ばせたりと、アウトドアライフを満喫。ユーカリやドウダンツツジ、ジューンベリー、マイヤーレモンといった多彩な樹木が育ち、イチゴやレタスといった家庭菜園も楽しんでいる。 

ロフトに上がるらせん階段。宙に浮くような個性的なデザインがインテリアを彩る。ロフトを抜けると屋上にアクセスできる
カフェのような木製ドアを造作。玄関を中心として右にパブリックスペース、左にプライベートスペースを配置し、玄関上部に屋上を設けた

「庭ができて暮らし方ががらりと変わりました。実のなる木は鳥を呼び寄せます。収穫したものをすぐキッチンで使えるのも便利だし、豊かだなと思いますね。家で過ごす楽しみが増えました」と奥さま。自然に囲まれ、クリーンな空気を家のどこにいても満喫できる健康的で心地よい夏の日々を叶えている。

水回りと寝室が集約されたプライベートエリアも間仕切り壁がなく、回遊できる動線に。日々の掃除や洗濯物の収納もストレスフリー
床はモルタルと杉板で仕上げを変えて段差をつくり、広々としたひと続きの空間に立体感と奥行き生んでいる
大木をモチーフにした柱が印象的なLDK。柱の周りを囲うようにテーブルやキッチンカウンター、棚がつくり付けられている
text_ Makiko Hoshino photograph_ Takashi Daibo
取材協力

高床リビングを中央に配した職住一体の家

テレワークが一般化しつつある中、自宅で快適に仕事ができる環境づくりに注目が集まっている。経営コンサルティング会社を営むKさんは3年前、LDKの一角にワークスペースを配した職住一体の家を建てた。
 以前は、コートハウスで暮らしてきたご夫妻。中庭をロの字で囲う家はお気に入りだったが、雨漏りが度重なり、 メンテナンスをしても解決できなかったことから、建替えを計画。建築家の二宮博さんと菱谷和子さんが主宰する設計事務所に依頼した。 (ご主人)
 

物件データ 所在地/東京都世田谷区
面積/117.25㎡
竣工年月/2017年3月
設計/ステューディオ 2 アーキテクツ
home.netyou.jp/cc/studio2/

ご夫妻の希望は、以前の住まいで気に入っていた部分を踏襲しつつ不満点を解消することと、ご主人の仕事場をつくること。程なくして提案されたのは、2階にLDKを配し、中央に高床の床座リビングを設けるプラン。リビングを挟んでダイニングキッチンとロフト、ご主人の仕事にも使える家族共有のワークステーションを設置するものだった。

敷地は住宅密集地の一角にあるため、窓は最小限に抑えてプライバ シーを確保。モノトーンの外壁はガルバリウム鋼板
キッチンは家族で囲める大きなアイランド型。白い天板と木製の面材を 組み合わせたシンプルなデザインが空間に馴染む

「床座のリビングは、くつろぎの場でありながら、子どもたちの遊び場にもなる柔軟なスペースです。その横にワークステーションをつくることで、職住一体の暮らしを楽しめたらいいなと考えました」(二宮さん)
 ワークステーションに造作した長いカウンターでは、ご主人が仕事をする横で、子どもたちが勉強をしたり、書をしたり…。暮らしのさまざまなアクティビティーに対応する場となっている。1階にも、仕事に集中できるように独立したワークスペースを配置。生活と仕事を無理なく両立できるように配慮した。

リビングの床面とワークステーションのカウンターはフラットに連続させ、コーナーには隣家の借景を楽しめる窓を設置
経営コンサルタントを自営されているご主人。仕事に集中できる環境も必要と考え、玄関を入った正面に個室のワークスペースをつくった
玄関から階段の上り口までフラットな土間床が続く。土間は墨入りモルタ ルで落ち着いた印象に仕上げた

以前の住まいで気に入っていたという中庭の代わりに空を取り込むハイサイド窓を設け、空中の庭として機能するルーフテラスをつくることでご夫妻の希望を全てかなえる住まいに仕上げた。
 「高床リビングという、変化に富んだワンルーム空間はすごく気に入っています。子どものそばで仕事ができる毎日は、まさに私たちが望んでいたものですからね」(ご主人)
 それぞれが自分時間を謳歌でき、思い思いに過ごせる居場所がある。絶妙な距離感を得られるK邸は、多様なワークスタイルに柔軟に対応できるヒントとなりそうだ。

ロフトを設けて天井を低く抑えたダイニングキッチンと、高く吹き抜けたリビング。ロフトは子どもたちの遊び場として活用
text_ Hiromi Matsubayashi photograph_ Takuya Furusue
取材協力

織物工場のノコギリ屋根を住まいに採用。 大空を望み、光に包まれる気持ちのいい家

古くから繊維産業によって発展してきた愛知県一宮市。現在もあちらこちらで見られる「ノコギリ屋根」の工場が、趣のある街並みを形成している。
 ご主人の地元である一宮市に住まいを構えたKさん一家。連続する鋭角の屋根がシンボルの自宅は、街との調和を意識したデザインだが、そのユニークな外観には、快適な生活環境を実現するための配慮が隠されている。
 

物件データ 所在地/愛知県一宮市
面積/99.62㎡
築年月/2017年7月
設計/川島範久(川島範久建築設計事務所)
norihisakawashima.jp

「ノコギリ屋根の工場では安定した光を得るために採光面を北向きにし ますが、住宅なのであえて南向きとし、光が降り注ぎ、空の変化をダイレクトに感じられるようにしました」と話すのは設計を担当した川島範久さん。「とにかく明るい空間に」という要望を受けて着想したという。

広いテラスで子どもも大人ものびのびと過ごす。大きな屋根は夏の強い日差しを遮る一方、日射角度の低い冬は光が奥まで届く
北側のスペースは壁で仕切られ、プライバシーが保たれているが、スリット窓により広く感じられる。WICは将来、寝室にする予定

住まいは約40㎡の長方形を3つ並べた構成で、南側からテラス、LDK、寝室兼子どもスペースを配置。暗くなりがちな北側の空間にも、ノコギリ屋根によって高窓が設けられ、光を招き入れている。その他、傾斜した屋根には、日射角度の高い夏の日差しを遮る効果もある。
 「家族と一緒に過ごす時間が何よりの安らぎ。子どもたちが部屋にこもらないようにしてほしいとリクエストしました」(奥さま)

外装材のガルバリウム鋼板を天井に用いて外との一体感を演出。光の反射を狙い、空間を白で統一し明るい雰囲気に

LDKはテラス側をガラス張りにして開放的な場所に。寝室兼子どもスペースとの間の壁には、横長のスリット窓を入れ、気配が伝わるように工夫。扉一枚で行き来できるため、それぞれの場所で過ごす家族の距離がより近 くなっている。
 「外の様子が分かり、安心して子どもを遊ばせておけるのがいいですね。ゲストが来たときも、すぐコミュニケーションが取れます」(ご主人)

間仕切り壁の上部をオープンにして圧迫感を軽減。視線が抜けるよう、扉や壁の上部にガラスの欄間を設けた
メインの空調は1台の床下エアコン。冬は床下の温風が窓際から給気され、寒暖差を防ぐ。また断熱ブラインドなどを採用してより高断熱に

「ご家族にとっての最良の住まいを突き詰めた結果、地域で受け継がれ てきた形を活用することになりました。現代の価値観に合わせ、伝統を再解釈する試みになったと思います」(川島さん)
空と光をいっぱいに感じる住まいで、今日も家族のだんらんが育まれている。

北側の寝室兼子どもスペース。長いテーブルは家族共有のワークスペースとなっている。ベッドに横たわるとハイサイド窓から空が見える
text_ Makiko Hoshino photograph_ Akira Nakamura
取材協力

オープンな空間の真ん中にキッチンを配置。 家族を身近に感じ、飲食を満喫する家

平日フルタイムで働くSさんご夫妻は、通勤に便利な山手線内側に住まいを持ちたいと考え、文京区に建つ築42年のマンションをリノベーション前提で購入した。都内出身のご主人が学生時代によく来ていたなじみのある地域で、周囲には緑豊かな庭園や伝統ある教育機関などが点在し、子育て環境としても好条件。窓からの景色の良さも決め手になったという。
 

物件データ 所在地/東京都文京区
面積/62.1㎡
リノベーション年月/2017年2月
設計/㈱フィールドガレージ
www.fieldgarage.com

郷土料理を食べに地方に出向いたり、酒蔵を訪ね歩いたりするなど、飲食への探究心が旺盛なご夫妻。リノベーションで要望したのは、食卓を囲む時間が充実し、料理をしている間も子どもの遊ぶ姿を見守れる住まいだ。
 元3LDKの空間は壁を撤去して広々としたLDK+個室1室のプランに改修。キッチンと食卓が設けられているのは、LDKの真ん中。南側の大きな開口部から光が注ぎ、借景の緑も眺められ、家族が自然と集まってくつろげるメインスペースとなっている。

コンクリート躯体となじむように色のトーンを抑え、マットな素材を使用。「ピカピカではないので、気を張らずに暮らせます」(奥さま)
キッチンと同じタイルで統一感をもたせた洗面室。スイッチやコンセントは使いやすさを考えて配置。洗面台下には掃除機用コンセントがある

「家族がどこにいても、会話しながら楽しく料理ができるようになりました。作りながら食べたり、食事の途中で冷蔵庫からさっと1品持ってきたりできるのがいいですね。外食が減りました」(奥さま)
 また、家事の負担を軽減するため、寝室や洗面室にも扉を設けずひとつながりの空間に。
 「ロボット掃除機が立往生することなく、家中を一気にきれいにしてくれるので助かります」(奥さま)
玄関土間とキッチンとの間にウォークスルークローゼットを設けたのも時短ポイントだ。帰宅して上着を掛け、すぐに家事に取り掛かれる

自転車やコートハンガーも置ける広めの玄関土間。クローゼットがすぐ近くにあるため、外出前の身支度や忘れ物を取りに行くのも便利
寝室は、将来、真ん中に壁を立てて2室にすることも可能なつくり。就寝スタイルを布団にすることで、お子さんの遊び場を確保した

インテリアはガレージのような雰囲気が好きなご主人の希望を反映。躯体壁の一部をむき出しにしてリビングにはロードバイクをディスプレイしている。
 「愛車を眺めながら飲むお酒は格別です」(ご主人) 緑にあふれ、文化の薫る土地と住まいに癒されながら、家族の豊かなときを刻んでいる。

壁にはアメリカから取り寄せたスタンドにロードバイクをディスプレイ。躯体を現したままで、建設時に書かれた線や字が味わいになっている
グリーンのタイルがやわらかな表情を与えるキッチン。床は耐水性のあるフロアタイル。油はね対策で、コンロは壁向きで設置
text_ Makiko Hoshino photograph_ Mizuho Kuwata
取材協力

リノベーションで壁や天井を特別仕様に。最高の音に包まれるマンションに一新

「音楽のまち・かわさき」として地域づくりを推進し、世界水準の音響といわれる「ミューザ川崎シンフォニーホール」での演奏会や、市民合唱団の催しなど、数多くの活動が見られる川崎市。この地のマンションで昨秋、リノベーションしたWさんもまた、無類の音楽好き。こだわりのオーディオ機器をそろえ、家で楽しむのはもちろん、同ホールにご夫妻で訪れることもあるという。新築時から約20年が経ち、マンションをリノベーションすることになったときに重視したのが、より上質な音で音楽を楽しめる家にすることだった。

物件データ
物件データ所在地/神奈川県川崎市
面積/91.47m²
築年月/2017年10月
設計/フリーダムアーキテクツデザイン㈱ リデザイン www.rede.jp

ご夫妻で年を重ねるこの先の暮らしを見据えて、3LDKから1LDKに部屋数を減らし、寝室からウォークインクローゼット、洗面室、LDK、寝室と、回遊できる動線を計画。玄関とパントリーを直接結び、ゆったり使いやすいようにしている。そして最大のポイントが、音質向上のために施した、さまざまな仕掛けだ。

年を重ねる中で柔軟に使えるよう、出入口は引き戸に。ガラス戸は開放感が生まれ、自転車もインテリアに

リビングの壁は、音のバランスが取れるよう、厚みのあるフレームに吸音材を入れて遮音壁に。天井もウレタンフォームと石膏ボードを取り付け、音を逃さない防音仕様にしている。さらに、残響が出にくくなるよう、リビング側の垂れ壁に傾斜をつける工夫も。もともと窓は二重サッシで、騒音を遮断する効果があったが、壁の内部にファンを組み込み、24時間換気に。最善の音質と快適な空調のもと、音楽に没頭できる。 壁には色鮮やかなブルーをペイント。ダークブラウンのオープンシェルフに並べられたオーディオは、インテリアとしても映えている。

衣服はウォークインクローゼットに収納し、寝室はすっきりと。そのまま洗面室に抜けられるつくりは、身支度がスムーズにできて便利
柄入りのベージュのタイルが華やぎを添える洗面室。椅子を置ける洗面台で、奥さまがくつろげるように

家具のように洗練されたアイランドキッチン。奥のパントリーにはキッチンからも玄関からもアクセスできる
採光性の高いダイニング。水回りと玄関は、同じ色合いの床タイルを採用し、統一感を出している

Wさんのもう一つの趣味は自転車。奥多摩や秩父まで自走するなど、週に300〜400㎞は走るという。 自転車も満喫できるよう、玄関は広めに設計。天井に耐久性を持たせて、自慢の自転車を吊るして収納できるようにしたほか、道具をしまえる棚を設置。ガレージのようなこの空間で、アプリを使って映像を見ながら自転車をこいだり、メンテナンスをしたり…。 「思い描いた環境を手に入れて、家での時間をより楽しめるようになりました」と、余暇をますます充実させている。

6台ほどの自転車が収まる広めの玄関は、オレンジがテーマカラー。上がり框を曲線にしてデザイン性を高めている
text_ Makiko Hoshino photograph_ Akira Nakamura
取材協力

ワンルーム空間を引き戸で自由に仕切る。 暮らしの変化に合わせてカスタマイズする家

西宮市内にある築 39年、 62㎡の中古マンションをフルリノベーションして、家族4人の新しい住まいを計画した井上さんご夫妻。家族構成の変化や子どもの成長に合わせて間取りが変えられるプランを希望し、建築家の丹羽洋文さんに設計を依頼した。

物件データ 物件データ所在地/兵庫県西宮市
面積/62m²
築年月/2017年2月
運営・管理/丹羽洋文(すまい研究室)
sumai.us

井上さんの住まいで目を引くのは、家中に張り巡らされた木のフレーム。その正体は、引き戸を設置するための鴨居だ。 「昔の日本の家のように、広い続き間の空間を襖で仕切ったり、開け放したりすることで、簡単に個室や大空間にアレンジできるようにしました。井上さんが住みながら、自分たちで間取りをカスタマイズできるように引き戸を全て同じ寸法で造作し、いつでもどこにでも設置できるようにしてあります」(丹羽さん)

東側の壁一面に棚受けを設置し、収納やテレビ台、デスクとして活用。棚板を追加してカスタマイズ可能

現在は、寝室とクローゼット、和室に引き戸を設置し、その他の空間をつなげてLDKとして広々と使っているが、洗面・浴室以外をワンルームにもできるし、個室をたくさん設けることも可能だ。 「子どもが幼いうちは、子ども部屋はいらないので、その分家族みんなで過ごせる場所を広くとりたい。でも将来、子どもが『自分の部屋が欲しい』と言ったときには、与えられるようにしたいんです」(奥さま)

置き畳を敷いた和室は寝室や子どもの遊び場に。畳も障子も移 動できるため、和室の場所を変えることができる

今は家全体を遊び場に、のびのびと育っている長男だが、いつか自分の部屋が欲しいと言うだろうか? 「子どもが個室を欲しがるのは、小学校高学年くらいだと踏んでいます。そのときは、現在の寝室とクローゼットを子ども部屋にする予定です。親子が互いの気配を感じ、必要なときに顔を合わせられる空間で過ごすことが、健全な親子関係の構築につながるのだと思います」(ご主人)

玄関を入ると廊下に設えた温かな木の壁が出迎える。右側の白 壁に洗面・浴室、左側の木の壁に寝室とクローゼットが収まる
リビングの一角をデスクコーナーに。5歳の長男はここでお絵描 きをするのがお気に入り
業務用キッチンメーカーでセミオーダーしたステンレスキッチン。 下部をオープンにしてワゴンやゴミ箱を収納

この家に住み始めて1年。ご夫妻の間では、リビング、ダイニング、和室の場所を入れ替える間取り変更案が話し合われ、近々実現しようと考えているのだという。経年とともに家族の気持ちも暮らし方も変わる。住まいのつくりは、井上さん宅のようにもっと気楽に変えられるべきであるものかもしれない。

床はラーチ無垢フローリング。仕切り壁がないから、家中に鉄道 模型のレールをレイアウトできる
text_ Sayaka Noritake(colonna) photograph_ Hideki Okura
取材協力

懐かしさ溢れる団地で始める、シンプルで心地よい暮らし

広大な敷地に整然と並ぶ棟、クリーム色の外壁に大きく書かれたアルファベットと数字、広場にはこの団地で生まれ育った子どもたちに愛されてきたであろうブランコ…。懐かしさ溢れるこの団地は、日本最初の大規模ニュータウン開発として建てられた「千里ニュータウン」の一つ。1967年築のこちらの団地に2012年4月から入居しているのが、共に27歳のSさんご夫妻だ。ご夫妻が暮らすのは、無印良品とUR都市機構の共同プロジェクトでリノベーションされた「新千里西町団地」。仕切り壁を取り去り、白い塗装が施された開放的な空間に、若い感性でコーディネートされたインテリアがよく似合っている。

物件データ 所在地/大阪府豊中市
面積/3.98m²
築年/1967年
リノベーション設計/ムジ・ネット株式会社 ryohin-keikaku.jp +独立行政法人都市再生機構 西日本支社
問い合わせ/独立行政法人都市再生機構 西日本支社 募集販売センター www.ur-net.go.jp/kansai
TEL:/06-6346-5540
緑地や公園が広く取られているのが団地の大きな特徴。静かな環境で暮らしやすい
モルタル仕上げの玄関にはクロスバイク。ビビッドな色が白い玄関に映える

「結婚が決まり、初めて暮らす家を探し始めたときに、この団地に暮らす姉が、ここの募集が出ていることを教えてくれたんです。抽選だったので、どうせ当たらないだろうと思いながら申し込んだら、見事当選し」(奥さま)。まだどんな家に住みたいかのイメージも固まっていない段階での当選だったため、自分たちが本当に暮らしたいのはどんな家なのかを探ろうと、当選後にいくつかの賃貸物件を回ってみたという。
「僕自身は団地というと、古い、狭いといったイメージがあったのですが、デザイナーズマンションも含めて5軒の賃貸住戸を回って比較しても、陽当たりや風通しの良さ、間取りのシンプルさなど、ここが一番魅力的でした。団地は陽当たりがとてもよく考えられていて、全ての住戸が南に向いているんです。この部屋はさらに、壁を取り去ってあるので、日中は照明がまったくいらないほど明るいですね。夏も南北に風が通るので快適でした」(ご主人)。

北側に位置するダイニングは全面が白で仕上げてあり、日中は照明無しでも十分明るい
北側に位置するダイニングは全面が白で仕上げてあり、日中は照明無しでも十分明るい
僧侶を職とするご主人は音楽が趣味で、イベントでDJをすることも
僧侶を職とするご主人は音楽が趣味で、イベントでDJをすることも

高度成長期の住宅不足を解消すべく建てられた団地は、限られた床面積を細かく仕切る造りが主流だった。しかし、年月を経て高齢化や核家族化が進んできているという。そこで古き良き日本の佇まいを生かしながら、今の暮らしに合うリノベーションを施す団地が増えてきている。新たな世代が新たなスタイルで団地に暮らし始める。団地はこれからも多くの人に愛され、住み継がれていくことだろう。

キッチンは広くて作業がしやすくお気に入り。料理も趣味のご主人はよく夕食を作るとい
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キッチンは広くて作業がしやすくお気に入り。料理も趣味のご主人はよく夕食を作るという
洗濯物が干せるルーフバルコニーからは、広い空と広い海。最高の眺めを独占できる
洗濯物が干せるルーフバルコニーからは、広い空と広い海。最高の眺めを独占できる

text_ Takako Yoshida photograph_ Akira Nakamura

取材協力

ペイントとシンプル家具で作り上げた愛着が生まれるDIY賃貸

「賃貸なのに改装OK」という、ユニークな物件に暮らすのは、映像作家のUさん(24歳)。
現在、専門学校で非常勤講師を務めながら、企業のプロモーション映像などを作成している。
以前は、横浜の実家に暮らしていたが、通勤や仕事の打ち合わせに便利な都内に住みたいと思い、インターネットで物件を探し始めた。
「事務所を兼ねたかったので、安くて広い物件を探していました。初めて内見したのがここ。43m²と広く、専用庭に緑もあり、何より『改装OK』という条件にひかれました。部屋を改装するなんて大変そうだなとも思いましたが、もともとモノづくりは好きでしたし、その場で書類にサインしました」

生活感を出さないよう、寝室スペースはソファを置き、リビングも兼ねている。
生活感を出さないよう、寝室スペースはソファを置き、リビングも兼ねている。
物件データ 所在地:東京都世田谷区用賀
面積:43.99m²   築年月:1981年1月
緑あふれる広い庭への抜けが心地良い。左側は収納。もともと戸がなかったのでカーテンを設置。
緑あふれる広い庭への抜けが心地良い。左側は収納。もともと戸がなかったのでカーテンを設置。

改装は、その内容を事前にオーナーに相談して承諾が得られれば、原状回復義務なしという条件だった。
Uさんは物件をひと目見た段階で、壁と天井は白く塗ろうと決心。
6畳2間ほどある居室の壁と天井は、友人に手伝ってもらい、丸1日で塗り上げたという。
キッチンと浴室、洗面室、トイレは、1人で2日間かけてペイントした。
壁と天井を白く塗っただけで、部屋が見違えるように明るく、清潔感あふれる空間になった。
リビング兼寝室の床はインターネットの通販でプリント床材を購入し、自分で敷き込んだ。
「使ったペンキは相当な量ですね。身体に悪いものは使いたくなかったので、かなり吟味して良いものを選びました。それでもDIYにはあまりお金はかかっていません。ペンキ代が約3万円、床材は1万円程度。あとはカーテンレールを付け替えたぐらいでした」

キッチンは床をきれいに拭き上げ、自分で組み立てた食器棚を設置。カーテンの奥が浴室。
天井も白く塗ったことで、日中は照明がいらないほど明るくなった。
天井も白く塗ったことで、日中は照明がいらないほど明るくなった。

家具は壁の色に合わせて白で統一。
今後は友人とこの家で一緒に仕事をする予定とのことで、仕事スペースとなるダイニングには、大きな机を置いたという。かくして仲介した不動産会社も驚くスタイリッシュな部屋が完成した。
「思い通りの部屋づくりができて、かなり気に入っています。そのせいなのか、以前は夜型の生活だったのが朝型に変わりましたね」
住まいに愛着を持ち、暮らしを楽しめる「DIYが可能な賃貸」。賃貸住宅の新スタイルだ。

text_ Takako Yoshida photograph_ Akira Nakamura

取材協力/R-STORE www.r-store.jp/

取材協力