和歌山から長野へ移住。北アルプスの麓、風景になじむ家で穏やかに暮らす
道路側から見た外観。平屋のアトリエ棟と2階建ての住居棟をずらして配置した。背後にそびえる北アルプスと田園風景を借景に風景になじむ色と高さを考慮している
2023.05.22

和歌山から長野へ移住。北アルプスの麓、風景になじむ家で穏やかに暮らす

目の前は雄大な北アルプスの山並みが見渡せる田園地帯。寒さの厳しい土地でも暖かく暮らせるアトリエ併用住宅での移住暮らし

TRIP
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雄大な北アルプスの山々を望む長野県安曇野市。この地に移住してアトリエを併設した家を建てたYさん夫妻。元々は和歌山県で設計事務所を開いていたという。
「初めは北欧の国に移住したいと考えていたんです。しかし調べてみると実際に暮らすのはなかなか難しい。そこで北海道か、よく訪れていた長野のどちらかがいいかなと。仕事は住む場所を選びませんが、仕事で行き来する東京や和歌山との距離を考えると長野が妥当だと思いました」(ご主人)。
幸い北アルプスが目の前に見える理想の土地に出会い、家づくりが始まった。

物件データ 所在地/長野県安曇野市
延床面積/136.54㎡
築年月/2011年5月
設計/山下和希
(アトリエ・アースワーク)
www.aew-style.com

夫妻の希望はいつでもどこからでも山々を眺められること、寒冷地でも家の中では寒さを我慢せずに過ごせること、この土地の気候、風土にふさわしい家にすることなど。「特別な要望は出さず、設計は夫に任せました。工事中に細かな部分を調整してもらっただけ」(奥さま)。

建物をZ型にずらしてつくった庭には、クヌギやハナモモなどを植えた。庭は山を眺め、人が集う場所。建物に回した深い庇には雪を防ぎ、壁の劣化を遅らせる効果も
2面に窓を設けたダイニング。断熱と気密性を考慮して複層ガラスの樹脂サッシを採用。雄大な眺めと四季折々の自然の移ろいを身近に感じて暮らせる

その結果でき上がったのは、平屋のアトリエ棟と住居棟2つの建物をZ型にずらした家。アトリエ棟の低い片流れの屋根は、家の西側に広がる北アルプスの山々と連続するように延び、2階建ての住居棟も極力ボリュームを抑えた。間取りは平屋棟がアトリエと応接室。2階建ての住居棟は1階にLDKと寝室、洗面浴室とスタディコーナー、2階に子ども室が1部屋だけ。夫妻には子どもが4人いる。「移住の際には子どもたちに長野に行くか、和歌山に残るかを決めさせました。初めは2人が和歌山に、2人は長野に。後からもう1人が長野に合流。子ども室を1室しか設けていませんが、そのスペースの使い方は自分たちで決めればいいと思ったからなんです」(奥さま)。

住居棟のLDKにはオーダーメイドの白いキッチンを長い直線に配置。奥は寝室とスタディコーナー。2階には子ども室が1室あるだけ

室内はメイプルの床、漆喰の壁、タモの天井で仕上げられた、北欧のテイストを感じさせる空間。「壁や天井は内断熱と外断熱を併用し、厚さは約200㎜。積雪を考慮して1.3mと2.7mの深い庇を回しました。暖房は輻射熱暖房パネルヒーターで冬じゅう24時間運転。不凍液温水を循環させますが、それほど光熱費はかかりません」(ご主人)。「この風景は毎日でも見飽きないんです」(奥さま)。
ここには雄大な自然に抱かれた、心を満たす暮らしがある。

玄関ホールからの眺め。4段上がった正面に設けられたピクチャーウインドウから常念岳を眺められる。室内の温熱環境がいいので、植物もよく育つのだとか
アトリエ棟のトイレにはトップライトを設置。自然光が降り注ぐ明るい空間に。トップライトはもう1カ所洗面室にも付けられていて、冬場の室内干しなどで活躍する
アトリエの応接室。ここの大きな窓からも、北アルプスの山々を眼前に眺められる。来客もつい長居してしまうとか。床にはライムストーンを貼ってパブリックな印象を高めた
text_Yoko Maru photograph_Susumu Matsui
取材協力

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