雄大な北アルプスの山々を望む長野県安曇野市。この地に移住してアトリエを併設した家を建てたYさん夫妻。元々は和歌山県で設計事務所を開いていたという。 「初めは北欧の国に移住したいと考えていたんです。しかし調べてみると実際に暮らすのはなかなか難しい。そこで北海道か、よく訪れていた長野のどちらかがいいかなと。仕事は住む場所を選びませんが、仕事で行き来する東京や和歌山との距離を考えると長野が妥当だと思いました」(ご主人)。 幸い北アルプスが目の前に見える理想の土地に出会い、家づくりが始まった。
夫妻の希望はいつでもどこからでも山々を眺められること、寒冷地でも家の中では寒さを我慢せずに過ごせること、この土地の気候、風土にふさわしい家にすることなど。「特別な要望は出さず、設計は夫に任せました。工事中に細かな部分を調整してもらっただけ」(奥さま)。
その結果でき上がったのは、平屋のアトリエ棟と住居棟2つの建物をZ型にずらした家。アトリエ棟の低い片流れの屋根は、家の西側に広がる北アルプスの山々と連続するように延び、2階建ての住居棟も極力ボリュームを抑えた。間取りは平屋棟がアトリエと応接室。2階建ての住居棟は1階にLDKと寝室、洗面浴室とスタディコーナー、2階に子ども室が1部屋だけ。夫妻には子どもが4人いる。「移住の際には子どもたちに長野に行くか、和歌山に残るかを決めさせました。初めは2人が和歌山に、2人は長野に。後からもう1人が長野に合流。子ども室を1室しか設けていませんが、そのスペースの使い方は自分たちで決めればいいと思ったからなんです」(奥さま)。
室内はメイプルの床、漆喰の壁、タモの天井で仕上げられた、北欧のテイストを感じさせる空間。「壁や天井は内断熱と外断熱を併用し、厚さは約200㎜。積雪を考慮して1.3mと2.7mの深い庇を回しました。暖房は輻射熱暖房パネルヒーターで冬じゅう24時間運転。不凍液温水を循環させますが、それほど光熱費はかかりません」(ご主人)。「この風景は毎日でも見飽きないんです」(奥さま)。 ここには雄大な自然に抱かれた、心を満たす暮らしがある。
アトリエ棟のトイレにはトップライトを設置。自然光が降り注ぐ明るい空間に。トップライトはもう1カ所洗面室にも付けられていて、冬場の室内干しなどで活躍する |