公園に面した自宅の一部を地域にオープン。人と人がつながる新しい賃貸併用住宅
2階のシェアリビング(LDK)。Tさんの住まいの原体験は祖父母の和風住宅で、ハシゴ上にロフトを設け、縁側や土間のように用途を定めない場所を大事にした
2023.04.20

公園に面した自宅の一部を地域にオープン。人と人がつながる新しい賃貸併用住宅

住まいの一部をシェアスペースにしてオフィスやコーヒースタンドに。賃料を得ながら、地域の人や仲間たちと快適な暮らしを楽しむ

TRIP
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建築家のTさんには、住まいに対するこんな思いがあった。
「住居費は生涯支出の大半を占めます。それなら、ただローンを払い続ける一般的な家の買い方をするのではなく、暮らしながら収益を生む家に住むことで支出も減り、その分豊かな生活ができるのではないか」
そこでTさんは、友人の建築家・宇津木喬行さんとの共同設計で、シェアオフィス、コーヒースタンド、シェアリビング、自宅が一体となった賃貸・店舗併用住宅を建てることにした。

物件データ 所在地/横浜市西区
延床面積/183.84㎡
築年月/2019年11月
設計/宇津木喬行・高橋良弘
(333architects)
www.333architects.com
敷地前の公園に向けて、大きく2面の開口部を取り、廊下をなくすなど間取りを工夫して広々と使えるようにしている

敷地の目の前にある公園に向かって開いたコーヒースタンドは、日本茶インストラクターが週末にカフェを開店。さらにTさん一家が道行く人にコーヒーを振る舞うこともあるという。

1階のコーヒースタンドはT家の玄関でもある。カフェとして貸し出す他、気分を変えて仕事をしたり、DIYをしたり、多目的に使う

地下に設けたシェアオフィスは水回りも備えているため、住宅として貸し出すことも可能だ。

地下には内外の階段から入室可能にし、回遊できるようにした。法規上必要だったドライエリアは明るさももたらす
東側約20㎡のシェアオフィス。鉄筋コンクリート造なので、断熱性・遮音性が高く落ち着いた雰囲気。半地下のため窓からは散歩や通学中の人たちの姿が見える
西側シェアオフィス。奥に階段があるが、施錠できるため独立して使うことが可能。キッチン・バス付きなので住居としても貸し出せる

2階のシェアリビングはT家のプライベートリビングと兼用で、大人数で使えるように窓辺に大きなソファを設置し、アイランドキッチンも導入。料理のスチール撮影やインタビュー動画の撮影などに使われることもあるなどサイドビジネスは順調のようだ。Tさんの奥さまも当初からこのプランに大賛成だったそう。
「家に人を招くことが好きでしたし、さまざまな出会いがあり、家族だけで住むより楽しいです」(奥さま)
プライベートスペースの扉は鍵付きでセキュリティー対策も万全。貸出し受付はインターネット上のマッチングプラットフォームを利用しており、事前に利用者の情報が分かる上、手続きも簡単だという。

2階のダイニングキッチン。キッチン作業台の収納扉は鍵付きで、貸し出すときは貴重品などを収納できる。奥に続くプライベートエリアの扉にも鍵を付けた

「家を〝所有する〞よりも多くの人に活用された方が私たちとしてもうれしいですし、賃料収入をローン返済に充てられます。各部屋の用途を限定せず、余白のある間取りにしているので、将来的に使い方を変えていけるのもメリットです」(Tさん)
現在、シェアオフィスには宇津木さんの事務所が入居しており、宇津木さんとの自然な会話から新しいプロジェクトが生まれることもあるとか。家という枠を超えた住環境から得られるものは計り知れない。

2階には高窓を設置して隣家の視線を遮りながら採光。ロフトは将来、子どもの遊び場にしたり、書斎にしたり、多目的に使うための余白スペース
text_Makiko Hoshino photograph_Hideki Ookura
取材協力

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