全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。前回『台湾人熱愛!「ハオツィー」連発伝統的肉グルメ【前編】』に引き続き、台湾の肉グルメをご紹介します。
台湾旅行において、最大の楽しみともいっていいのが、「夜市」探索でしょう。首都圏の台北に限らず、台湾の多くの町では、夕方になると屋台が出始め、日が暮れる頃にはいくつもの屋台が集まり、夜市が開かれています。
台湾の夜市文化は、200年以上もの歴史があると言われています。諸説あるようですが、始まりは開墾の労働者向けに天秤棒に料理を載せて売り歩いていた人たちが、廟(寺)に人々が祈りに集まってくるのに合わせ、露店を出すようになったことに起因するのだとか。その露店がだんだん数を増やし、夜市の元になったということです。
今や夜市はその規模も内容も発展し、台湾観光の目玉の一つになりました。毎日のように利用する地元客から海外旅行者まで、老若男女が入りまじり、それぞれが思い思いに楽しみ、笑顔であふれています。
そんな集まってくる人々の目的はやっぱり「安くて」「おいしい」屋台グルメです。前回は地元で愛されている伝統料理を紹介しましたが、今回の台湾肉グルメ後編は、台北で開かれる3つの夜市の中から、台湾観光に訪れたらぜひ味わいたい有名な肉グルメを紹介したいと思います。
■これぞ屋台のワイルドさ!? 「塩水鶏」
最初の夜市は「寧夏路夜市(ニンシャールーイェスー)」。MRT淡水線中山駅から徒歩10分ほどの場所にあります。こちらは前編でも登場した夜市です。100軒以上もの食べ物の屋台が並ぶこの夜市では、台湾の夜市グルメの約7〜8割は味わうことができるといっても過言ではありません。
いたるところから食欲をそそる香りが漂うこの夜市で、厳選して紹介する肉グルメは、「塩水鶏(エンスイチー)」です。塩水鶏を出している人気店「原味珍塩水鶏(ユェンウェイジェンエンスイチー)」さんに伺いました。看板上には「寧夏第一家」の文字。これは、「寧夏路夜市で最初に塩水鶏を出した」という意味です。寧夏路夜市の中でも人気店で、順番待ちのお客さんが屋台の周りを囲んでいます。
「塩水鶏」とは、塩茹でされた鶏肉と野菜をひと口サイズに切り、塩味の効いた特製ダレを絡め和えた料理です。注文の仕方は、屋台に並んでるさまざまな部位の鶏肉、大根、人参、タケノコ、キャベツ、ブロッコリー、キクラゲなどの野菜の中からも好みのものを選びボウルに入れて、店員に渡すだけ。そうすると細かく刻み、特製ダレを絡めて、なんと「ビニール袋」に入れて渡してくれます。日本では見かけないテイクアウト方法ですね!
そのままビニール袋から竹串を使って食べている人もいますが、地元客は家に持ち帰って、皿に開けて食べることが多いようです。
塩水鶏以外のグルメでもそうなのですが、台湾の屋台グルメでは「辛さ」を聞かれることが多いです。店員さんが真っ赤なラー油や香辛料の瓶を持ち上げたり、指差したりして伝えてくれるので、言葉がわからなくても通じます。今回は、ちょい辛の「微辣(ウェイラー)」にしました。辛さが苦手な人は、「不辣(ブラー)」と言うと、辛い調味料は入れないでくれるので、覚えておくと便利です。
鶏肉を一つ竹串に刺し食べてみると、肉の旨味を活かすちょうどよい塩味と、ニンニクの風味、そしてピリッとした唐辛子の辛さが追いかけてきます。ビールとの相性ぴったりな味です!また、野菜もたくさん入っているので、ヘルシー志向の女性にもオススメな一品です。鶏肉は、大きな骨は取り除いていますが、細かい骨は残っているので食べる際は少し注意。
塩水鶏は「量り売り」なので、注文した量によって値段が変わります。今回はビニール袋いっぱいに入って200元でした。塩水鶏は、寧夏路夜市以外のどこの夜市でも一軒はお店があるのでぜひお試しあれ。
■度肝を抜くサイズの「鶏排」
寧夏路夜市の次は、台北最大の夜市「士林夜市(シーリンイェスー)」です。観光地としても人気な夜市で、ツアーで訪れる日本人も多い夜市です。2011年に移転し、新しくなった士林市場を中心に、基河路、大南路、文林路など広範囲に屋台が並びます。さきほどの寧夏路夜市とは異なり、衣料品、おもちゃ、雑貨などの屋台も並ぶ巨大夜市です。最寄り駅はMRT淡水線劍潭駅で、駅からの人の流れについて行けば間違いないでしょう。隣に士林駅がありますが、こちらではないので注意を。
士林夜市には、数ある屋台グルメの中でも、最も有名と言っても過言ではない名物の肉グルメがあります。それを提供しているのが、「士林豪大大鶏排(シーリンハオダーダージーパイ)」さんです。お店の場所は士林市場に向かってすぐ左手なのでわかりやすいです。地元客、地方客、海外旅行者にも、大人気で常に行列が絶えません。
ここで紹介する肉グルメは、店名にも入ってる「鶏排(ジーパイ)」。わかりやすくいえば、フライドチキンです。
店名に「大」の字が二つ重なっていることからわかるように、なにしろその大きさがすごいんです! 味だけでなく、その大きさが話題を呼び大人気店になっているのです。鶏排専門店なので常に商品を揚げ続けており、大行列の割には待ち時間は10分ほどで済みました。行列に並び購入した大大鶏排(70元)がこちら!
巨大。まさにその一言に尽きます。鶏もも肉を叩いて伸ばしているそうですが、決して紙のように薄くなっているわけではなく、しっかりとした厚みもあります。ちょうど列の後ろに並んでいた日本旅行者は、顔の大きさと比較していました。「ガイドブックに載っていたフライドチキンが食べたくて、士林夜市に来たんです」とのこと。
紙袋に包まれて提供されますが、揚げたてなのでかなり熱いです。しかし一番おいしい揚げたてを味わうため、火傷に注意しながらかぶりつきましょう! ひと口かじると、衣のサクッとした食感の後、熱々の肉汁が口いっぱいに広がりました。パサつく感じもなくとってもジューシーです。味は胡椒がしっかりと効いていて、唐辛子ベースの特製スパイスもあってかなりスパイシー!
飲み物が欲しくなる味ですね。大きさが大きさなだけに、一人で食べきるのは結構大変なので、複数人でシェアするのがオススメです!
■パンを使わない台湾ホットドッグ「大腸包小腸」
こちらの士林夜市ではもう一品、肉グルメを紹介しましょう。大大鶏排をかじりながらやってきたのは、先ほどのお店のすぐ隣にある「士林市場」です。士林市場の一階は、射的などのゲームコーナーや衣料品、お土産品などのお店で、こちらの地下にある「美食區」は、食べ物のお店が連なりフードコートのようになっています。
目的の店は、「士林昇香腸」さん。この店で食べられる肉グルメは、「大腸包小腸(ダーチャンバオシャオチャン)」と呼ばれる台湾式ホットドッグです。
ホットドッグといえば、細長いパンにソーセージを挟んだものですが、台湾式は一味違います。なんと“ソーセージでソーセージを挟む”ホットドッグなのです。いったいどういうことでしょうか? 味は数種類ありますが、今回は一番オーソドックスな「原味」をお願いしました。
白いソーセージをパンの代わりに、そのままソーセージを挟む。これが台湾風ホットドッグの「大腸包小腸」なんです。
食べてみると、とても面白い食感です。外の白いソーセージはもっちりしており、中のソーセージはプリッと歯応えのあるものが使われています。ソーセージとソーセージではクドそうな気もしますが、キュウリや漬物のシャキッとした食感が口の中で混ざり合い、ちょうどよい食べごたえになっています。
実はこの白いソーセージは、中身にはもち米が使われている「米腸(ミーチャン)」という腸詰め料理なのです。食感は秋田の郷土料理「きりたんぽ」に近いでしょうか。ホットドッグというより、オニギリに近い食べ物といえますね。
この米腸自体には味が付いておらず、ほんのり甘いもち米のそのものの味がします。それに対して、中身の「香腸(シャンチャン)」と呼ばれる台湾ソーセージは、味がしっかりとしていてとてもバランスが取れています。この香腸も日本のソーセージとは味がかなり違います。
こちらのお店のものが特別というわけではなく、台湾のソーセージは甘みが強いです。もちろん塩味もあるのですが、それと同じかそれ以上に甘みが強く、そこに各種調味料、スパイスの風味が加わります。日本で食べられるソーセージのイメージで食べると面食らってしまいますが、食べ進めていくうちに段々とその味にはまってしまうんだとか。
■夜市料理をさらに楽しむための「藥燉排骨」
さて、士林夜市をあとにして、最後にやってきたのが台北で2番目の規模をもつ「饒河街観光夜市(ラオフージエイェスー)」です。最寄り駅はMRT松山新店線の松山駅、夜市はそこから歩いて5分ほどの場所にあります。400mほどの長さの道路に食べ物、衣類、アクセサリーなどさまざまな屋台が並びます。また、エビ釣りや占いなどもあり、今回紹介した3つの夜市の中で一番お祭り屋台的な雰囲気を持っています。
饒河街観光夜市で、最も有名な肉グルメは、前編で紹介した福州世祖胡椒餅の「胡椒餅」です。こちらの夜市にあるお店が本店で、いつも長い行列ができています。
今回ご紹介する肉グルメは、もちろん胡椒餅ではありません。
台湾の夜市グルメは、本当においしいものばかりで、ついつい食べすぎて胃が重たくなることもあります。しかし、この饒河街観光夜市には、肉グルメでありながら、食べすぎた胃をすっきりさせてくれる名物メニューがあるんです。
そんな肉グルメを求めて、饒河街観光夜市の中ほどに店を構える「金林三兄弟(ジンリンサンションディ)」さんに伺いました。注文する料理は、「藥燉排骨(ヤオドゥンパイグー)」です。
見た目はかなり衝撃的。器からこんなに骨がはみ出ている料理には、日本ではまず出会えません。排骨とは肋骨のことで、この料理は肋骨を薬膳の入ったスープで煮込んだ料理です。
まずはスープをひと口いただきます。スープの色やや黒っぽく、うっすらと甘い漢方的な風味がします。漢方薬は苦みがあったりしますが、こちらのスープからは一切そういうものは感じません。そして甘みの後に、豚の肉や骨から出たコクが感じられます。しばらくすると、食べ疲れた胃がすぅっと軽くなったような気がします!
お店の方に聞くと、この藥燉排骨には10種類の漢方が使われているそうですが、その内容や配合は企業秘密だそう。藥燉排骨にはきまったレシピがなく、お店ごとに配合が違うそうです。そのため、いくつかの店舗を食べ比べても面白いかもしれませんね。
次に骨にくっついている肉をしゃぶりついて食べます。肉はしっかりと煮込まれているのでとても柔らかく、豚肉の臭みは全くありません。肉にも薬膳スープがしみているので、これだけの量でもたっぷり食べられます。辛いものが好きな人は、テーブル備え付けの豆板醤をつけて食べると、パンチの効いた味になりオススメです。
こちらを尋ねる前は満腹に近く、すべて食べられるかどうか不安だったんですが、気がつけば完食していました。食べ終わった後には食べる前より元気になった気がします!これならまだ夜市グルメを攻められそうですね!
今回、3つの夜市をめぐり、4つの肉グルメを紹介しましたが、まだまだ数え切れないぐらいのおいしい料理が台湾の夜市にはあふれています。肉グルメの他にも魚介、野菜、フルーツとバリエーションはさまざまです。
また同じメニューでもお店ごとに特徴があり、飽きることはありません。一品一品が安いのでお財布にも優しいです。レストランで高級料理ももちろんいいですが、せっかく台湾に来たのなら、1日は夜市で「くいだおれ」に挑戦してみては?
最初は言葉も通じない屋台で食べ物を買うのは少し怖いですが、勇気を出して一歩踏み出せば、笑顔ほころぶ様々な味との出逢いが待っていますよ。
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店舗情報
● 寧夏路夜市
住所:台北市大同区寧夏路
開催時間:17時頃〜翌1時頃
休日:なし● 士林夜市
住所:台北市士林区基河路101號(士林市場)
開催時間:17時頃〜翌1時頃
休日:なし● 饒河街観光夜市
住所:台北市松山區饒河街
開催時間:17時頃〜翌1時頃
休日:なし
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。