織豊時代末期、茶器や建築、庭園で独自の美的感覚で一世風靡した古田織部。深い緑色が印象的な陶器「織部焼」と言えば、歴史に詳しくない人でもご存知なのではないでしょうか。
全国にある1059の道の駅(2015年5月現在)の中から、今回ご紹介するのは、伝説の茶人古田織部ゆかりの地で、こぶし大の甘柿・富有柿の産地としても知られる岐阜県本巣市の「織部の里・もとす」です!
岐阜県は道の駅設置数が全国2位。地域ごとに特徴的な道の駅が設置されています。本巣市内には「うすずみ桜の里・ねお」、「富有柿の里・いとぬき」、「織部の里・もとす」の3箇所があり、「織部の里・もとす」はその名の通り古田織部を推しだした道の駅です。
一般財団法人もとす振興公社の杉山さんに案内をしていただきました。
杉山さん「古田織部は天文2年(1543年)、この施設の向いにある山口城で生まれました。『織部の里・もとす』は地元出身の偉大な茶人を紹介する展示施設と地域の特産品を販売する施設として平成13年4月にオープンしたんです」
日本人の美に多大な影響を与えた古田織部
古田織部といえば、近年、マンガ「へうげもの」で取り上げられ、若者層にもその名が広まった戦国武将の1人。「へうげもの」では、武功ではなく自分の好み(織部好み)のために命をかけるひょうげた(面白おかしい)武将として描かれています。
史実の古田織部も、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康と三英傑に仕え、千利休から茶の湯を学び、独自のセンスで美を追求した人物。師匠の千利休が「簡素」であることに美を見出したのに対し、古田織部は「崩れていること」に美を見出し、新しい美術的価値を創りだしました。
こちらの展示施設では、そんな古田織部が愛した緑色の陶器「織部焼」の数々や、織部好み風の茶室を見学することができます。
織部好みとは、古田織部が好きなものという意味。芸術家であり武将であった古田織部は、動的で自由、おおらかな雰囲気のものが好きだったようです。
展示施設の最後には織部焼の体験コーナー(要予約)があり、大皿や茶器に絵付けを行うことができます。
まっさらな陶器に、自分の好きな絵を入れるのもよし、織部風の文様を描くもよし。世界で1つだけの織部焼ができます。
杉山さん「この展示施設は、以前は有料施設だったのですが、現在は無料なので、毎日、多くの方に訪れていただいています。体験コーナーでは、織部焼の釉薬(焼くとガラス質になる液体)をかけるところまでを自分で行い、約2週間後、焼成された陶器が自宅に届きます。来訪の思い出に織部焼の美しい緑色の陶器を作ってみてください」
衝撃価格の地元野菜と西濃地区初上陸ソフトクリーム
古田織部のことがよくわかったところで、続いてショップ施設へ。
道の駅といえば地域の特産品のお買い物も楽しみです!
野菜の直販所では、岐阜源が推奨する「ぎふクリーン農産物(従来の栽培農法に比べて化学合成農薬と化学肥料を30%以上削減した農産物)」の取り扱いもあります。
朝採れ野菜を農家の方が直接搬入する直販スタイルで、びっくりするぐらい安い!
杉山さん「特にブランド名がある野菜は育ててはいないのですが、たまねぎが特産品です。7月からはナスやきゅうり、トマトなどの夏野菜もでてきます。珍しい野菜ではなく普段使いの野菜が安くておいしいのが当地域の魅力ですね。お昼すぎには半分以上が売れてしまうので、お目当ての野菜があるときは早めにいらしてください」
本巣市の名物といえば「富有柿」。甘みが強く、肉厚で大きいところが特徴です。本巣市内を車で走っていると柿園をよく見かけます。
しかし、柿の時期は秋!
杉山さん「シーズンになると直売所にたくさんの柿が出るので、多くの方が買いにいらっしゃいます。残念ながら、今の時期、柿の実を買うのは難しいですね…」
残念がっている取材班の目に、オレンジ色のある物が目に止まりました!
冷蔵の什器に並んでいる「富有柿ゼリー」です!
スプーンが付いて冷えた状態で販売されているので、買ったその場で開けて食べられます。
柿の実と柿のペーストが入ったゼリーで、ツルンとした喉越しが清涼感たっぷり。
甘柿なので渋みは一切なく、ペースト化することで富有柿の甘さが凝縮されていておいしい!
本巣市のもう一つの名物は、淡墨桜。こちらの時期は春…。
夏の名物はないものかと思っていたところ、杉山さんが満を持して「織部の里・もとすの新名物」を持ってきてくださいました!
それがこちらのソフトクリームです。
杉山さん「すごくおすすめです! このソフトクリームのために当施設を訪れる常連さんがいるぐらいです(笑)」
ソフトクリーム製造機から出た瞬間から溶け始めるぐらい柔らかい生クリームアイスで、気温が上がると食べる速度よりも溶ける速度のほうが速く、コーンでは支えられないとのことで、素焼き風のプラスティックカップに入った状態で提供されます。
ソフトクリーム部分は、生クリームなのでミルクアイスよりも濃厚で、まったりとした甘い口どけ。ラングドシャクッキーは甘めでサクサク。
この甘さと食感は普通のソフトクリームにはないかもしれません!
西濃地区で食べられるのは「織部の里もとす」だけで、これだけを目的に来る人がいるのも納得です。岐阜の夏は暑いので、甘くて冷たいソフトクリームは「名物」どころか必需品でしょう!
本巣市といえば富有柿と淡墨桜というイメージでしたが、今回の来訪で衝撃価格の新鮮野菜とソフトクリームに出合うことができました!
今回は車で訪れましたが、「織部の里・もとす」へは鉄道の旅もおすすめ。JR大垣駅からローカル電車・樽見鉄道でのんびりと田園風景を楽しんで32分。織部駅で下車するとすぐです。
緑色と「破調の美」を愛した古田織部の潜在意識には、本巣市山口ののどかな風景があったのかもしれないですね!
生クリームソフト「クレミア」と古田織部に会いに「織部の里・もとす」へ足を運んでみてください!
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施設情報
●道の駅織部の里・もとす
住所:岐阜県本巣市山口676番地(国道157号線本巣トンネル南)
営業時間:8:30~17:00、水曜定休(施設によって異なる)
http://oribe.or.jp/index.php
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。