暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

まぐろ漁港だからできた味「三崎まぐろラーメン」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は、神奈川県三浦市、三浦半島の最南端・三崎漁港にやってきました!

三崎漁港といえば、なんといっても「まぐろ」です! 全国でも指折りのまぐろ水揚げ量を誇り、漁港周辺には多くのまぐろ専門店、料理店が並んでいます。

そもそも「三崎まぐろラーメン」とはどんな料理なのでしょうか? このご当地料理で、三浦市を全国に広める活動をしている「三崎まぐろラーメンズ」の宮田英一さんにお話を伺いました。

宮田さん 「まぐろラーメンは、三崎漁港周辺の中華料理店では40~50年ほど前から提供されていた料理です。基本的にまぐろは身の部分だけにさばかれて出荷するので、兜(頭)や中骨、切り落とされた尾の部分などが残ります。これを地元の人がおいしく食べるために、ラーメンが生まれたのでしょう。それを2006年頃からもっと、たくさんの方に三浦に来て頂けるよう三浦のご当地料理としてPR活動に取り組んできました」

まぐろの尾は、仲買人が質を見るために切り落とされるので、地元でのみ食べられることがほとんど。

まぐろの尾は、仲買人が質を見るために切り落とされるので、市場に出回ることはあまりないそう。

2013年4月~5月末日に東名高速道路海老名SAで期間限定販売されると話題を集め、2014年6月からは圏央道厚木SAでも三崎まぐろラーメンが提供されています。また、2014年10月には、「サッポロ一番」などで知られるサンヨー食品からカップラーメンも発売され、全国で「三崎まぐろラーメン」が味わえるようになっています。

まぐろラーメンズが提唱するルールブックによると、「三崎まぐろラーメン」には5つの条件があるそうです。

●第1条 スープにまぐろの兜・中骨・正味等、「まぐろでとったダシ」を必ず投入する。
●第2条 トッピングは、まぐろを使用する。ただし、まぐろの使い方は各店自由とする。
●第3条 現状維持はご法度であり、日々まぐろラーメンレベルを進化させなければならない。
●第4条 まぐろラーメンには大きく分けて、「濃厚系」と「バランス系」の2系統がある。
●第5条 この町、三浦を 「愛している」

つまり、スープにもまぐろダシ、トッピングにもまぐろを使うことが、三崎まぐろラーメンの基本条件になるのだそう。
今回取材したのは、この三崎周辺でも古くからまぐろラーメンを提供し続け、現在は二代目長谷川雅徳さんが店主を務める「中華料理 港楽亭」。ちなみに、港楽亭のまぐろラーメンは「濃厚さ」と「バランス」を兼ねそろえた「三崎まぐろラーメン」を提供していると評判のお店です。

中華料理店のシンボルが「まぐろ」というのも三崎漁港ならでは。

中華料理店のシンボルが「まぐろ」というのも三崎漁港ならでは。

長谷川さん 「ウチはまぐろダシを取るために兜を使ってます。塩を振ってひと晩寝かし、しっかりあぶって臭みをなくしてから炊いていきます。スープは透明でスッキリ。これを鶏のスープとブレンドして提供しています。塩を使うっていう処理は、この町の先輩料理人(まぐろ料理店主)が教えてくれたんです。この街の料理人はみんな研究熱心で、学ぶ姿勢のある者には、店舗を越えて技術を伝える風習があります。三崎まぐろラーメンの味作りもこの恩恵を受けています」

まぐろの頭をしっかりとあぶってからスープに使用します。

まぐろの頭はしっかりとあぶってからスープに使用。

透き通ったスープからは、食欲をそそる魚介の香りがふんわり。地元の製麺所で作られる中細の縮れ麺と、トッピングの「あんかけ」をかければ、港楽亭の三崎まぐろラーメンの完成です!

厨房にはまぐろの香りが充満し、食欲をそそります!

厨房にはまぐろの香りが充満し、食欲をそそります!

これが「三崎まぐろラーメン」です!

これが「三崎まぐろラーメン」です!

長谷川さん 「あんかけが中華麺によく絡むので、魚介(まぐろ)の味が口の中いっぱいに広がりますよ。あんかけは、まぐろの角切りを、セロリと干し椎茸と一緒に炒めることで臭みをなくしているので、魚介が苦手な人でも美味しく食べられるはずです」

まぐろはうまみが強い一方で、下処理が大事なんですね。

宮田さん 「各地のイベントで三崎まぐろラーメンを提供していますが、だれでも最初は魚介の臭みをイメージして抵抗があるようです。それでも、食べると『こんなにラーメンに合うんだ!』とビックリしてくれますね。最近は魚介ラーメンも人気ですし、観光客にも食事に、おみやげにと人気になっています」

実際味わってみると、透明なスープからは強いまぐろのうまみを感じます! 臭みやえぐみは一切なく、その一方で魚介のダシは「アラ汁」のように濃厚。塩味のスッキリとした味わいで、あと引く味です!

また麺とあんかけもよく絡んで絶品! 「まぐろラーメンなのに、まぐろがちょっとだとガッカリでしょ?」と宮田さんが話すように、あんかけのまぐろの角切りがこれでもかと乗っているので、最後のひとくちまでまぐろの身を楽しむことができます。

中細の縮れ麺にまぐろミンチのあんかけがたっぷりからみます。

中細の縮れ麺にまぐろミンチのあんかけがたっぷりからみます。

長谷川さん 「少し食べたら、このラー油をかけてみてください。これも自家製のまぐろラー油。サッパリ目のラーメンに変化が出せますよ」

まさかラー油までまぐろとは!! さっそくかけてみると…。
確かに、ピリッとした辛みと魚介の深みが、スープに厚みを加えてくれますね!

三崎まぐろラーメンズの宮田さん(右)と、港楽亭の長谷川店長。

三崎まぐろラーメンズの宮田さん(右)と、港楽亭の長谷川店長。

この三崎漁港周辺には、現在4店の中華料理店で「三崎まぐろラーメン」を提供しています。現在では、その他の地域の加盟店やお土産用でも味わえるようになっています。

宮田さん 「三崎まぐろ、三浦大根しか名産品がなかった地域ですから、三崎まぐろラーメンを地域の味としてもっと定着させたいですね。三崎まぐろラーメンはやさしい味なので、魚嫌いな子どもから、最近のラーメンはちょっと…というお年寄りまで美味しく食べられる。近い将来に、この地域の学校給食にも組み込みたいと思っています!」

かつてまぐろラーメンを食べていた世代から、まぐろラーメンを知らない子どもまで、広く愛される味になれば、自然と周辺地域にも定着したご当地料理となっていきそうですね!

宮田さん 2月の後半になると、三浦海岸の早咲き河津が咲き始めて、観光にもぴったりの時期になります。すごい田舎と思われがちですけど、横浜からも意外と一時間ちょっとで着くんです。料理だけでなく、城ヶ島など景色が美しいのも特長。小旅行のお供に、ぜひ三崎まぐろラーメンを楽しんでください

魚介ラーメン好きなら、一度は食べて損のない一品。三崎まぐろラーメン、ご期待ください!

  • 店舗情報

    ●中華料理 港楽亭
    住所:神奈川県三浦市三崎5-1-10
    電話:046-881-6135
    営業時間:11:00~20:30(水曜定休、平日は14:00~17:00準備中の場合あり)
    http://mmramen.com/kourakutei.html

    ●三崎まぐろラーメンズ(取材協力)
    http://mmramens.main.jp/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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