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地域密着 愛されご当地パン

ネギ嫌いのために生まれたパン! 熊本県熊本市の「ネギパン」

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地域で愛されているパンを探して、全国各地をゆく「地域密着 愛されご当地パン」。今回は、ネギ嫌いでも食べられる「ネギパン」があると聞いて、熊本県熊本市の「高岡製パン」を訪ねました。

熊本県熊本市にある高岡製パン

高岡製パンの直売店は、熊本市電「健軍町駅」で下車し、健軍商店街を5分ほど歩いたところにあります。2018(平成30)年に新店舗が完成するまで、すぐそばにある仮店舗で営業中です。

1952(昭和27)年創業の高岡製パンは、直売店「UNCLE タカオカ」、学校の購買部、一部スーパーマーケットなどでパンの販売を行っています。ここの看板商品が、ネギを使っているというちょっと珍しいパン。ネギの形をしたパンなのか、はたまたネギの色をしたパンなのか、どんなパンなのか気になります。早速、高岡製パンの社長、高岡辰生さんに案内していただきました!

高岡製パンのネギパン

これが「ネギパン」。200円(税込)。弾力性の高い生地を半分に折りたたんでいるので、このように手で支えないとぱかっと開いてしまうんだそう。

「これが当店の傑作、ネギパンです」と高岡さんが差し出したのは、細切りのネギが散らされたパン。生地が白いので、ネギの緑色がよく映えています。パンはふわふわで、見るからにやわらかそうです。

ネギパンというからには、やはり中にもネギが……?

ネギパンの中身

と思ったら、なんと中にはカツオ節!?

パンの中身は、ソースをまとったカツオ節でした。パンの具材としてあまり出会うことのない、変わり種です。ソースはオーロラソースのように見えます。

ふわふわのパン、ソースで味付けされたカツオ節、そしてネギ。この3つは口の中に入ると、一体どのようなハーモニーを奏でてくれるのでしょか。いざ実食。

外見の印象通り、パンはふわふわとした食感。噛めば噛むほどもっちり感も感じられます。その中で、どこを食べても感じられるのが、ネギのシャキシャキ感。ふわふわ、もちもちのやわらかい食感の中で、小気味好いアクセントを与えてくれて、食感に飽きを感じさせないのがGOOD。

カツオ節にかかったソースは甘辛いですが、マヨネーズが加わっていることでマイルドな味わいです。また、少しキリッとした酸味もあります。もちもちした生地、カツオ節とソースという組み合わせだからか、まるでお好み焼きを食べているような気分になりました。

ネギはパンの表面にも内側にもめんべんなく散らされていますが、ネギ独特の辛みや臭みはありません。たしかにこれなら、ネギが苦手な人でも食べられそうです。

■ネギ嫌いのために生まれた「ネギパン」

ネギパンといえど、ネギの存在感は控えめ。それは、“ネギが苦手な人でも食べられるように”という思いで作られたからだと言います。

高岡さん「今から約20年前、当店の近くにある熊本マリスト学園の購買部でパンを売っていたときの話です。ある一人の学生から、『ネギ嫌いの友人にバレないように、ネギが入ったパンを作ってほしい』と頼まれました。その要望に応え、天かすとベーコンとネギをマヨネーズで炒めたものをコッペパンに挟み、食べてもらったんです。そうしたら、『おいしい!』と大好評でした。そのとき、ネギとパンという組み合わせで、おもしろいパンができると思いました。そして、ネギパンの商品化を目指したんです」

当初はネギをコッペパンにはさみこんで販売していたそうですが、2006(平成18)年からネギをパンに散らす現在のスタイルにしたそう。ネギとの相性を考えて試行錯誤した結果だそうです。

高岡さん「小麦粉には、熊本県産の『ミナミノメグミ』を選びました。生地がふっくらとやわらかく焼きあがるのが特徴で、ネギの食感を引き立ててくれます。ソースは、とんかつソーストマトケチャップ、そしてマヨネーズを混ぜています。まろやかで甘みのある、当店のオリジナルソースです。ソースは濃い口なので、ネギのいやな風味は感じないと思います。ただそれでは、ネギのキャラクターが立ちません。そこで、ネギは歯ごたえの良い熊本県産の『葉ネギ』を使用。そしてそれを損ねない、食感が控えめなカツオ節を選びました。カツオ節はソースとも相性抜群だと思ったんです」

ネギパンの具材

まずは、生地の上にマヨネーズをぬります。その上にカツオ節をふり、パンからすべり落ちるのを防止。そして、最後にオリジナルソースをかけます。

2006年(平成18年)年の発売当時は、地元の健軍町で認知される程度のパンでしたが、数年後に行われた“パンフェス”で、一気に人気を高めたんだとか。

高岡さん「2008(平成20)年の『第5回くまもと食品科学研究会大賞』で最優秀賞をとり、熊本市内のメディアで紹介されました。そして、2010(平成22)年の『全日本パンフェスティバル 第1回日本全国ご当地パン祭り』では2位を獲得。全国のテレビ番組や雑誌などから取材が殺到したんです」

これを機に、熊本市民や観光客から、ネギパンへの問い合わせが増えたそう。「ここまで反響があるとは、思いもよらなかった」と高岡さんは言います。そんな中、ネギパンの人気っぷりにもっと驚いていた人がいるそうで……。

高岡さん「あのネギ嫌いの学生が、数年前、里帰りに当店に来たんです。そこでネギパン誕生の経緯について話していたら、『あのときのパンが、ネギパンの先がけだったの!?』と大変驚いていました。本人は、当時自分が食べたパンがこのネギパンとは無関係だと思っていたみたいです(笑)」

■可能性は無限大! ニューネギパン

こうして一人のネギ嫌いのために生まれたパンは、今では熊本のご当地パンとして様々な地方の人々に愛されるまでに成長しました。

例えば、2011年(平成23)年には、大阪市中央区のローソン内のアンテナショップ「熊本よかもんSHOP」の1周年を記念して、2日間300個限定でネギパンを販売。お好み焼き風味のネギパンは、大阪府民から大きな支持を得たんだとか。

また、その同年に行われた「第2回日本全国ご当地パン祭り」では、当時風評被害に悩む福島でネギ農家を営む知人を支援するために、1日限定で福島県産ネギを使用したネギパンを販売。熊本県のご当地キャラクター「くまモン」が応援に駆けつけ、東京でのネギパンPRに一役買ったそう。

さらに、自社でもネギパンPRのために、イメージキャラクターを作ったと言います。

高岡さん「その名も『ネッギー』です。お客さまからは弊社を代表する看板キャラクターとして認知していただいています。以前、地元の新聞社さんから、『こんなに人気ならグッズを作ってみては?』と声をかけていただき、缶バッチを作りました。お子さまにお渡しすると、大変喜ばれます」

高岡製パンの高岡辰生さんとネッギー。

高岡さんとうつるのは、ネッギー。店先、店内、ネギパンのパッケージなどいたるところにネッギーの姿があります。

2012年には、ネギパンの姉妹品も登場。ピリ辛のタンドリーチキンにタルタルソースがかかった「ネギパン de チキン」は、2012(平成24)年の「第3回日本全国ご当地パン祭り」で4位を獲得した実力パン。さらにその後、熊本名物の馬肉やトマトを使用した「赤パン」も誕生しました。これらはネギパンに次ぐ人気商品だと言います。

高岡製パンの赤ぱんとネギパンdeチキン

「赤ぱん」250円(税込)、「ネギパンdeチキン」300円(税込)。

高岡さんネギと具材の組み合わせは無限大です。これから、ネギパン、ネギパンdeチキンを超えるパンを作ることができたらうれしいですね。次こそは、ご当地パン祭りで1位をとってみたいです(笑)」

ネギ嫌いでもおいしく食べられるよう、高岡さんが考えつくした「ネギパン」。ネギが好きな人はもちろん、ネギが苦手な人にもぜひおすすめです!

  • 店舗情報 ●合資会社高岡製パン
    住所:熊本県熊本市東区栄町1-11
    電話:096-368-2550
    営業時間:8:00〜19:00(月曜休)

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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