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地方移住の魅力語るフォーラム くまモンも移住の勧め

地方移住の魅力語るフォーラム くまモンも移住の勧め

 地方の活性化をテーマにした「地方創生フォーラム『地方で暮らす、日本が変わる』」(主催・日本経済新聞社、共催・内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局、内閣府地方創生推進室)が5月31日、東京都内で開かれた。約800人が参加し、石破茂地方創生担当大臣と漫画家の弘兼憲史さんの対談や地方に移住した人の現場報告に耳を傾け、地方への移住を増やす方策を考えた。 石破担当大臣は冒頭の基調講演で「東京に人口が集中し、地方の過疎化が止まらない。このまま放置すれば、人口はどんどん減る」と指摘。 その上で「アンケートでは東京に住んでいる人の約4割が地方での暮らしを検討している。政府としてできることは何でもやっていく」と決意を示し、移住情報を網羅したウェブサイト「全国移住ナビ」の開設など地方への移住を促進するための国の各種支援策を説明した。 石破担当大臣と弘兼氏との対談では、58歳の2人と同世代の人たちの地方志向に着目。弘兼氏は「我々の世代では故郷に帰るUターンが増えている。やはり故郷の空を見て、故郷の風を感じながら、過ごしたいというのが人情ではないか」と述べ、廃校を介護施設に変えるなど介護体制の充実が、地方移住の呼び水になるとした。 石破担当大臣は「首都圏では今後、医療や介護の施設、人材が全く足りない事態が起こる。一方、(需給ギャップの)ピークを越えた西日本ではこれから、介護の施設、人材の余裕が出てくる。東京の高齢者の方が余裕のある所に自発的に移っていくというのは国全体としてはあるべきだと思う」と話した。 地方へ移住した人が成功体験を話したパネルディスカッションは、平将明内閣府副大臣を進行役に、江面陽子・農家民宿えづらファーム代表(34)=北海道紋別郡遠軽町=や奥田麻依子・隠岐島前高校魅力化コーディネーター(28)=鳥取県海土町、小松洋介・NPO法人アスヘノキボウ代表理事(32)=宮城県女川町=の3人がパネリストを務め、大南信也・NPO法人グリーンバレー理事長(62)=徳島県神山町=が現地からインターネット中継の大画面を通じて参加した。  28歳で脱サラし、夫とともに北海道に移住して大規模農業を始めた京都市出身の江面さんは「家族と過ごす時間が得られた。子どものそばで働けるのはとても幸せ」と振り返る一方で「小さな町で、人と接する機会が少なく、有益な情報が得にくい。ビジネスチャンスを逸する」と過疎地ならではの悩みも明かした。 「地域おこし協力隊」として海土町に移住し、現地の高校を起点に教育改革による地域活性化に取り組んでいる岡山県倉敷市出身の奥田さんは「若い人がやりたいことに挑戦できる環境がある」と町の魅力を指摘。ただ「やりたいことにこだわり過ぎるとうまくいかない。地域の人へのリスペクトが大事」と移住者の心構えも説いた。 東日本大震災の災害ボランティア活動の中で女川町に出会い、同町で公民連携のまちづくりを推進している仙台市出身の小松さんは「町の人は温かく、コミュニティの懐が深い。若い人がやりたいことを応援してくれる。地域を良く理解し信頼関係をつくれば、若い人でも頼ってくれる」と町に貢献できる喜びを語った。 ITベンチャー企業のサテライトオフィスを出身地の神山町に誘致した大南さんは「考えすぎてぐずぐずするより、フットワーク軽く行動した方が良い。損得ばかり考えていたら地方への移住はできない。移住にはある程度の思い切りが必要」と移住の勧めを力強くアピールした。 平副大臣は「地方には経済指標でははかりきれない価値がある」と述べ、移住者が新たな視点で地方の価値、魅力を掘り起こす可能性に期待を寄せた。 会場には、熊本県のPRキャラクター「くまモン」が駆け付け、熊本名産のスイカを石破担当大臣にブレゼント。大きな経済効果を地元にもたらしている地方創生の“優等生”くまモンの激励に、石破担当大臣は笑顔で応えていた。