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地域密着 愛されご当地パン

偶然が生んだ宝石のようなパン! 富山県朝日町の「ヒスイパン」

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地域で愛されているパンを探して、全国各地をゆく「地域密着 愛されご当地パン」。今回は地元の名産物である翡翠(ヒスイ)のように輝く「ヒスイパン」を求めて、富山県朝日町の「清水製パン」を訪ねました。

清水製パンの工場

清水製パンの本社工場は、あいの風とやま鉄道・泊駅から車で約10分のところにあります。

清水製パンは1949年に創業以来、パンや和菓子などを製造販売しているほか、学校給食でもパンを提供しているため、地元では子どもから大人まで誰もが知るパン屋さんです。そんな清水製パンの看板商品がヒスイパンで、2010年に東京国際フォーラムで開催された「第一回 日本全国ご当地パン祭り」への出場をきっかけに、テレビや新聞などで全国的に取り上げられるようになりました。一体、どのようなパンなのでしょうか。早速、見てみましょう!

清水製パンのヒスイパン

これが富山県を代表するご当地パン、ヒスイパンです! 140円(税込)。

登場したのは、ライトグリーン色でコーティングされた、まん丸としたパン。表面は光沢があり、つやつやとしています。品のある黄緑色の輝きは、まさにヒスイのようです! 見た目からは想像ができませんが、どんな味なのでしょうか?

早速食べてみると、口の中に広がったのは二種類の甘み。ヒスイ色をしたコーティングの正体はようかん。そして、パンの中にはこしあんが入っていたのです!

ヒスイパンの中身

ヒスイパンは、表面にようかんをコーティングしたあんぱんでした。

あんぱんに加えてようかんと聞くと、甘すぎるのでは?と感じる人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。一見、味の主張が強そうな色のようかんは、意外にも甘さは控えめ。しっとりふわっとしたパンに包まれたこしあんも、ほどよく甘さが抑えられています。この奥ゆかしい甘みに加え、ようかんはきめ細かくなめらかな口あたりなので、上品な味わいが感じられました。また、表面にようかんがコーティングされているからでしょうか、まるで和菓子を食べているかのような気分にもなるので、お茶うけとしても活躍してくれそうです。

それにしても印象的なのは、鮮やかな色合いをしたようかんです。どのように作られているのでしょうか? 清水製パンの2代目社長である清水仁司さんに、その秘密を教えてもらいました。

ヒスイパンのようかん作り

ヒスイパンのコーティング作りの様子。ようかんを溶かしてなめらかになるまでかき混ぜます。

ヒスイのような色はどうやって出しているのでしょうか?

清水さん「寒天と白あんで作ったようかんに、クチナシやベニコウジなどの植物を使って色付けしています。色付けには、抹茶を使ったこともありましたが、ここまで鮮やかな色にはなりませんでした。また、パンの焼き色とマッチするように、日によってヒスイ色の濃淡を調整しているんです。パンが薄い茶色に焼きあがったら、ヒスイ色も淡くするという具合に」

ヒスイパンのようかんをコーティングするところ

焼きあがったあんぱんに手作業でようかんをコーティングしていきます。

なめらかな食感や上品な甘さを出すためには、いくつかポイントがあるのだそう。

清水さんようかんのダマや、温めたときに出る気泡が消えてなくなるまで、30分ほどかけてじっくりと混ぜることで、なめらかな食感が生まれます。また、ようかんの味わいであんぱんが持つ甘みやうま味を邪魔しないことも大切。そのために、パンの片面を薄く覆うくらいの量を心がけています。とは言っても、ようかんは正確な分量があるわけではなく、感覚的につけています。毎日の作業で、甘さがちょうど良くなる量を体が覚えました(笑)」

手間暇を惜しまない心と、長年の経験で培われた職人的な感覚によって、ヒスイパンの上品な味わいが作り上げられていたのですね。

■失敗は成功のもと!? ヒスイパンの誕生秘話

富山県朝日町にある宮崎・境海岸

富山県の最東部にあるヒスイの名所、宮崎・境海岸(通称、ヒスイ海岸)。

清水製パンのある富山県朝日町の宮崎・境海岸は、日本で唯一ヒスイの原石が打ち上げられることで有名です。それだけに、ヒスイパンはヒスイにちなんで誕生したのかと思いきや、実は違うんだとか。

清水さん「創業者である父がパン作りをしていた1955年に、食べ物を無駄にできないという思いであんぱんの焦げ目を隠そうとし、和菓子作りに使っていた緑色のようかんを塗ったことが始まりです。その時は、『ようかんパン』という名前でした。1984年に朝日町で開催された第1回ビーチボール交流大会で使用していたヒスイ色のボールを父が見て、自分たちの作るようかんパンに似ていると感じたようです。それから『ヒスイパン』に改名したことで、地元の人にとってより親しみ深いパンとなったと思います」

失敗から生まれたというようかんパンですが、甘いものが貴重だった時代ということもあり、たちまち地元で評判となりました。そして、のちに地元の名産品であるヒスイとリンクさせたことでメディアの注目を集め、結果的に60年以上も続くベストセラーとなったのです。

ちなみに、ようかんパン時代からのファンには、あんぱんからようかんをはがして分けて食べる人もいるんだとか。ようかんとあんぱんを同時でも別々でも楽しめるのが、一石二鳥というわけですね。

清水製パンの直売所、ピエールのヒスイパン売り場

清水製パンの直売所「ピエール」にあるヒスイパン売り場。

ヒスイパンは、富山県入善町にあるショッピングセンター、コスモ21内の「ピエール」や清水製パンのホームページで購入できます。また、夏季にはヒスイ海岸で開かれる海の家でも販売。ヒスイ拾いや海水浴をしにやってきた地元民や観光客から、おやつとして愛されています。

こうして、富山県を代表する名物として親しまれるまでになったヒスイパン。清水さんに今後の展開について聞いてみました。

清水さん「詳しいことはまだ秘密ですが、ヒスイ色以外に新しい色を増やして、いずれはバリエーション豊かなヒスイパンを展開したいと思っています。また、もともとうちは学校給食をメインとしてパン作りをしてきました。私もおいしそうにパンを食べる子どもたちの笑顔を見ることが好きなので、これからもその笑顔のためにパン作りにはげんでいきたいですね」

ヒスイにゆかりのある地で、子どもからお年寄りまで世代を超えて親しまれているヒスイパン。これからも地元のシンボルとして、輝きを放っていくことでしょう。

  • 店舗情報 ● 清水製パン直売所「ピエール」
    住所:富山県入善町橺山1336コスモ21内
    電話:0765-74-9106
    営業時間:10:00〜19:00
    公式サイト:http://shimizupan.com/company.html

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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