(ライター:堂本 かおる)

エスニック小物の露店はいつも人気
狭くて家賃が極めて高いアパートメントにきゅうきゅうと暮らし、平日は高層ビルの中で働くニューヨーカー。そのフラストレーションを一気に解消すべく、週末は日光を求めて一斉に外に出る。セントラルパークの緑濃い芝生にビキニ姿で寝そべって読書をしたり、レストランも店内席は避けて歩道にテーブルを並べた屋外席に陣取ったり。
NY名物のストリート・フェアも、そんなニューヨーカーの屋外好きを物語る風物詩の一つ。5~11月にかけての毎週末、市内のどこかで必ず開催され、年間の総開催数は80回を超えるというから驚く。
平日は交通量の多い通りを歩行者天国にし、道の両サイドにたくさんの露店が並ぶ。屋台で買った飲み物や食べ物を片手に、真夏の日差しや晩秋の肌寒さを気にすることもなくブラブラと散策する。

手づくり石けん1個4ドル。種類はシアバター、アロエ、アボカドなど
安いバッグやアクセサリーを大量に並べた露店もあれば、手づくりの1点ものの作品をアーティスト自らが売っていることもある。食べ物はトウモロコシ粉のパンケーキにチーズを挟んだ中米のアレパ、シシカバブをピタパンに挟んだギリシャのジロなど、ストリート・フェア気分を盛り上げるエスニック・フードがよりどりみどり。

シシカバブと野菜をピタパンで巻いたジロ
週末だから家族連れもいれば、ペットを連れて歩く人もいる。周辺に住む人がぶらりと立ち寄るフェアだから、顔見知り同士がばったり出会って「あら、元気?」などと会話も弾む。
華やかで洗練された側面ばかりがフィーチャーされるニューヨークだが、ガイドブックには載らないこんな素朴なフェアも存在する。
堂本 かおる(どうもと・かおる)
ライター。大阪出身。レコード業界誌の編集を経て1996年に渡米。以後、ニューヨークやアメリカの社会問題、マイノリティ文化などを雑誌、新聞、ウェブに執筆。著作(共著)に『<都市>のアメリカ文化学』(ミネルヴァ書房)他。
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