暮らしのコト

本多 さおりさん「収納を考えるときに一番大切なこと」

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私は整理収納コンサルタントとして、一般家庭向けの「整理収納サービス」を5年ほど行なってきました(子供が小さい現在は、しばらく休止しています)。よく家事代行のようなサービスと混同されがちですが、整理収納サービスでは、ご依頼主がむしろ主体となって、一緒に作業に取り組んでもらいます。

その流れを簡単に説明すると、まず作業場所(例えばキッチン)のモノを一度すべて出し、「使用頻度が高いか、低いか」「要るのか、要らないのか」などの条件で分類します。そして空っぽになった収納スペースに一からモノを入れなおしていく、というものです。入れなおす、つまり一つ一つのモノにきちんと住所を与えていくという作業では、「どこにどうやって収納すれば使いやすくなるか」をとことん考えます。

例えば、ご飯を炊くときの動線が短く、動作もラクにできるよう、米びつとざる、炊飯器をなるべく近くに配置します。併せて米を洗うのはシンクだからそこにもスムーズにアクセスできる動線に、という具合です。

また、「食器は食器棚にまとめねば」というような思い込みを取り払って、「家事がもっとラクになるには?」という視点を大事に考えてみるのも有効です。
持っている食器すべてを毎日順繰り使いこなしているご家庭はあまりないはず。どの家にも、毎日よく使う「1軍」(=毎日よく使うモノ)の食器が決まっていて、それは全体の2~3割程度であることが多いのです。その1軍食器だけでも、キッチン内の出し入れしやすいポジションに住所を設けてあげることで、毎日の食器の後片付けや、料理を盛り付ける時の動作が劇的にラクになります。

我が家では写真(左上)のとおり、シンク背面のラック上段に1軍食器を置いています。私だけでなく、夫やたまに来てくれる母にもわかりやすく、さらには遊びにきてくれた友人までもが「ここに戻せばいいんだな」と一目瞭然なので、自然と食器が定位置に導かれていきます。
その他の2軍食器(=たまに使う)はシンク上の吊戸棚に収納しています。このポジションでも決して動線が悪いわけではありません。けれども「扉を開けなければならないこと」「高い位置なので少し背伸びが必要」という点で、収納効率が1軍の場所より劣る場所なのです。
つまり我が家では「食器は1ヵ所に」という考えは持たず、1軍にはとびきり良い立地に住所を、2軍にはそれより少し劣る立地に、という具合に使用頻度によって収納場所に序列をつけています。こうすることで、1軍がとにかく快適に出し戻しできるようになるので、毎日の家事、後片付けはとてもラクになります。

私は職業イメージから、「さぞや丁寧で几帳面な性格なのだろう」と思われがちですが、実はとんでもなく面倒くさがりでラクすることが大好きです。だから収納を考える時に一番大事にすべきことは「1軍の住所を好立地な場所にする」ことだと思っています。実際にこの考え方のもとにモノを収納すると、実際に家事や片付けをしてみたときに「わ~、前よりラクになった~!」という感動が味わえます。

そしてさらには、生活のちょっとしたストレス(いつも使いたいときにはさみが見つからない、など)に敏感になり、それは収納のせいであるから収納を改善しようという姿勢が身についてきます。ここまで来ればもう、収納の試行錯誤は楽しいものになっているはず。
まずは自分の生活を自分自身で観察してみて、ちょっとした不便やストレスに敏感になってみてください。それこそが、良い収納アイデアが生まれる源なのです。

整理収納コンサルタント
本多 さおり
埼玉県在住。その人の暮らしや性格を重視し、片付けが続くための収納方法を提案する整理収納コンサルティングを手掛ける。自宅の収納術や一般宅での整理収納サービスの実例、暮らしのあれこれを綴ったブログ「片付けたくなる部屋づくり」が人気となり、2012年同タイトル本(ワニブックス)を出版。10万部を超えるロングセラーとなる。主な著書に『もっと知りたい無印良品の収納」(KADOKAWA)、『赤ちゃんと暮らす』『とことん収納』(共に大和書房)

月刊不動産流通2018年2月号掲載ƒ

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