暮らしのコト

長谷部 雅一さん「暮らしをデザインして住処を決める」

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2014年に家を買いました。住宅やアパート、マンションを借りたり買ったりする際、一般的には「エリアのブランド力」「勤務先までの通勤時間」「価格・家賃」といった条件を基準に選ぶことが多いかと思います。もともと私もそうだったのですが、長年アウトドアの仕事をするようになって、意識が大きく変わりました。

何よりも大切にしたのは、「どんな暮らしをしたいか?」ということです。

私は仕事柄アウトドアで過ごすことが多いのですが、プライベートでも自然を感じることを重視しています。現在神奈川県の相模原市に妻と5才の娘の3人で住んでおり、「海、川、山へのアクセスが良いこと」「家族みんなが泣いたり、笑ったり、叫んだりしても近所迷惑にならないこと」「日常的な暮らしに困らないこと」「人とのつながりがちゃんとあること」の4つを主たる選定条件として、この場所に辿り着きました。衣食住遊を揃える上で困らない程度の立地を大切にしつつ、外遊びも満喫できる環境です。
例えば、川でSUP(スタンドアップパドル)をしたくなったり、山に登りたくなったりしたら、車で家を出て1時間後にはフィールドで遊んでいます。カブトムシを捕りたかったら、家を出て歩いて10分後には1匹目をカゴに入れています。バーベキューがしたくなったら庭ですぐに始められます。料理中に香草が足りなければ小さな庭から摘んで使います。渋滞を気にせず好きな遊びができて、仕事もちゃんとこなせる暮らし。暮らしをデザインして場所探しをする、これはとても重要なことだとつくづく感じています。

全てが便利になっている昨今、現代病として子供は「遅寝遅起き」「ボディーバランスの低下」「視力の低下」「集中力の低下」「成人病の幼児期発生」などの危険性にさらされています。これは大人においても同じような状況です。
そのため欧米では、冒険とまではいかなくても、ピクニックや散歩レベルから暮らし方まで、自然に少しでも寄り添った暮らしが推奨されています。
その特効薬として実施されているのは、10日〜30日の長期休暇を充分にとり、そして家族や恋人、友人などと自然の中へ出かけることです。
しかし休日が少なく、大型連休などは地獄の渋滞が待ち構えている日本人にとって、そうした特効薬を実現させるのは非常に難しいでしょう。だからこそ日常的に自然に寄り添う暮らしができるよう、自分が住む場所自体を変えてしまうという考え方もあると思います。

個人的には、暮らしが便利すぎると「生きる力」が知らず知らず弱体化していく惧れがあると感じています。こうした気持ちは有事の際の初動の遅れや、もしもの時に助かる率に大きく作用します。こうした意味でも今の時代、自然の近くに暮らすことは推奨されるべきだと思っています。
例えば、「駅徒歩3分」よりも「小さな庭」。洋服など日常的に必要でない買い物の利便性は後回しにして、近所に散歩しやすい公園がある方を優先。このように、いかに自然を取り入れて、自分が幸せに感じる暮らしができるかを想像しながら場所を選ぶ。時にはそんな提案も“あり”じゃないでしょうか?

アウトドアプロデューサー
長谷部 雅一
1977年4月5日生まれ。(有)ビーネイチャー取締役。世界中を旅して、大都市から7000m級の山までさまざまな場所で人、文化、食、絶景と触れ合う。仕事はアウトドアイベントのプロデュースから安全管理や自然体験の指導者要請など幅広い。著書に「ネイチャーエデュケーション」(みくに出版)、「子どもと楽しむ外遊び」(地球丸)、「自作キャンプアイテム教本」(ブティック社)など。雑誌やWebにてさまざまな連載も担当するほか、テレビやラジオでも活躍中。

月刊不動産流通2018年1月号掲載ƒ

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