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麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

宇都宮餃子の“うどん版”!? 栃木県宇都宮市の「餃子饂飩」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は栃木県宇都宮市にやってきました。駅舎から出ると、迎えてくれたのは餃子のモニュメント。ここ宇都宮は言わずと知れた餃子の街です。
「餃子像」は餃子の皮に包まれたビーナスを表現した石像です。

「餃子像」は餃子の皮に包まれたビーナスを表現した石像です。

下総国一宮「二荒山神社」。社号が宇都宮という地名の由来になったと伝えられています。

下総国一宮「二荒山神社」。社号が宇都宮という地名の由来になったと伝えられています。

餃子と聞いて連想する麺料理と言えば、やっぱりラーメンですよね! 誰もが納得するゴールデンコンビですが、話題のご当地ヌードルはラーメンではありません。今回の目的は市内の中華料理店「味一番」で提供されているという「餃子饂飩」です。それはうどんなのか、はたまた餃子なのか? どんな姿か想像できませんが、とにかく確かめに行ってきました!

■つけ麺として食べる餃子!?

宇都宮にはJRと東武鉄道の2駅がありますが、味一番があるのは東武宇都宮駅周辺の繁華街。1958年創業の老舗として、地元住民に愛されてきました。

餃子めぐりが楽しい宇都宮で、餃子が食べられる店舗のひとつとしても愛されています。

餃子めぐりが楽しい宇都宮で、餃子が食べられる店舗のひとつとしても愛されています。

座敷、テーブル、カウンターがあり、家族連れもおひとり様の姿もありました。

座敷、テーブル、カウンターがあり、家族連れもおひとり様の姿もありました。

案内してくれたのは、二代目の印東義雄さん。餃子饂飩は1日30食のみの限定メニューですので、早速いただきましょう!

「餃子饂飩」。うどんの器は結構ずっしり。

「餃子饂飩」。うどんの器は結構ずっしり。

運ばれてきたのは黄色く透き通ったスープに入ったうどん薬味、そしてひき肉とみそが入った器です。これは一体、どういう料理なのでしょう?

印東さん「餃子饂飩は“残皮”で作ったうどんなんですよ。餃子の皮は小麦粉の生地を薄く伸ばしたシートを丸く抜いて作るのですが、そのとき余った皮を練り直してうどんにしています

それで餃子饂飩というわけですね。餃子の皮の余りで作るなら、限定30食なのも納得です。それでは一口……と思いましたが、スープに浸してあるうどんはこのまま食べればいいのでしょうか? このひき肉はどうすれば……? 印東さんに食べ方を教えてもらうことにしました。

印東さん「まずうどんのスープを、ひき肉とみその器にれんげで5杯くらい入れてください」

スープをひき肉とみそに。もしやこの食べ方は!

スープをひき肉とみそに。もしやこの食べ方は!

印東さん「そうしたら、みそとひき肉をよく混ぜてスープとなじませてください」

見えてきました。ずばりこれはうどんにつけるための汁。つまり餃子饂飩は、つけ麺だったということですね!

うどんの量は230グラム弱という大ボリューム!

うどんの量は230グラム弱と、ボリューム大!!

うどんはやや細めの印象。スープに浸っているので、スムーズに持ち上げることができました。みそとひき肉を混ぜ合わせたつけ汁につけて、ずずっと勢いよくすすると、驚くほどつるつるしっかりとしたコシがあります!

印東さん残皮は練り直すと固くなってしまいますが、それが喉越しやコシになるんです。うちの餃子は自家製なので皮も一から作るのですが、いろんな粉を混ぜていて中力粉よりも固くなるような粉の配合をしています」

一般的にうどんは中力粉で作られるので、餃子饂飩は原料から普通のうどんとも違うようです。確かにうどんよりもやや固めでつるつるしており、餃子の皮の食感に似ている気もします。

油が浮いていて、食欲をそそられるつけ汁。

油が浮いていて、食欲をそそられるつけ汁。

食べ進めるうちにスープが薄くなってきましたが、味の調整ができるのも餃子饂飩のいいところ。薬味としてみそと辛みそが用意されているので、薄ければみそを足し、濃ければうどんのスープを足してつけ汁の味を自由に変えられます。うどんのスープは鶏ガラでだしをとっており、しっかりとしたうまみが感じられます!

印東さん「このひき肉や一緒に混ぜてある玉ねぎは餃子のあんと同じものです。炒めるときに、にんにくやしょうがを使っているのも同じですから、餃子と同じような材料を使った料理なんです」

餃子の魅力が、麺料理として味わえるということですね。まさしく、餃子饂飩の名にふさわしい1杯です!

■残皮の麺が評判を呼んで!

一風変わった餃子饂飩。ずいぶん前から扱っているそうですが、味一番は餃子の街の中華料理店。一番人気のあるメニューはやはり餃子とラーメンの組み合わせだそうで、最初はメニューとしては出していなかったそうです。

印東さん「元はまかないだったんです。残皮は練り直すと固くなりますが、餃子の皮はふっくらもっちりした感じのほうがいいと思うので、うちでは廃棄しているんです。しかし、棄てるのはもったいないということで、作り始めたものなんです」

「焼餃子」は200円ぽっきり。最近は酢とこしょうをまぜた“酢こしょう”で食べる人も多いとか。

「焼餃子」は200円ぽっきり。最近は酢とこしょうをまぜた“酢こしょう”で食べる人も多いとか。

始まりはあくまで、まかないだったのに、なぜメニューに載るようになったのですか?

印東さん「お客さんがお酒を飲んだ後に差し上げるといった感じの裏メニューでしたね」

今は食べ方もちゃんとメニューで案内してくれるのでご安心を。

今は食べ方もちゃんとメニューで案内してくれるのでご安心を。

ところが餃子饂飩は常連さんのなかでたちまち評判になり、やがて正式なメニューに加わることに。メディアで話題になってからは、限定30食が早々に売り切れることもあります。

印東さん「うちには餃子の食べ歩きを楽しむお客さんも来ますが、最近は饂飩餃子の問い合わせも多いですね。なかには餃子饂飩のことを餃子味のうどんだとか、うどんのなかに餃子(のあん)が入っているのだとか思う方もいらっしゃるみたいです(笑)。このちょっと変わったつけ麺を、自分好みのつけ汁を調合して味わっていただければと思います」

お客さんの期待に応えて、餃子饂飩を作り続ける印東さん。餃子と表裏一体の、餃子タウンならではの味をこれからも作り続けていってほしいものですね! 餃子の名店がひしめく宇都宮。もともと餃子をご飯やおやつとして気軽に食べる文化のある土地だそうで、一皿200円代という安さで食べられる専門店もたくさんあります。宇都宮に来たら、1軒だけしか行かないのはもったいない! せっかくなのでいろいろ店をはしごして、焼き餃子はもちろん、蒸餃子、水餃子、揚げ餃子を堪能した後のシメに餃子饂飩と、餃子フルコースをぜひ楽しんでみてください。

  • 店舗情報 ● 味一番 住所:宇都宮市江野町2-7 電話:028-634-8363 営業時間:11:00〜20:00LO(不定休) ※餃子饂飩は1日30食限定。

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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