全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。今回は夏休みの特別編ということで、なんと日本を飛び出し、台湾へやってきました!!
台湾は、日本から飛行機で約4時間と、アクセスの良さもあって、年間を通して多くの日本人観光客が訪れます。面積は九州と大体同じ大きさで、人口は約2350万人。お金の単位は「元」。台湾ドルとも呼ばれます。1元は3.5円前後(2016年7月末現在)です。
台湾は日本と同じ島国で、周囲を海に囲まれています。自然も多く、農業も盛んです。そのため海の幸、山の幸、野菜、穀物に昔から恵まれてきました。またそれらの生産物を飼料として、畜産も盛んに行われています。この潤沢な食材に、中国本土から伝わってきた各地方の料理の文化、台湾にもともと住んでいた16の民族の料理の文化が混ざり合い、独自の食文化が現在まで根付いています。
台北の国立故宮博物院には白菜を模した「翠玉白菜」、豚の角煮を模した「肉形石」という、世界的にも有名な宝物が所蔵されています。食を象徴する国宝があることからも、台湾の人々が「食」を大事にしてきたことがよくわかりますね。
そんな台湾の激ウマ肉グルメを、前・後編に分けてご紹介したいと思います。
前編は台湾人が“熱愛”する「伝統的肉グルメ」篇です。
日本から台湾へ訪れる際に利用する主な空港は二つ、台湾桃園国際空港と台北松山空港です。今回は台北中心部へのアクセスのしやすい松山空港に降り立ちました。
松山空港直結の松山機場駅から地下鉄を乗り継ぎ、まずやってきたのが信義線東門駅から徒歩5分ほどのところにある「永康牛肉麺」さんです。
台湾伝統肉グルメ一品目は、店名にも付いている「牛肉麺(ニューローミェン)」です!
牛肉麺は日本で言うラーメンのようなもので、台北だけでも牛肉麺を出しているお店は数え切れないほどあります。年に一回、台北で牛肉麺フェスティバルが開かれるほど台湾の人に熱愛されているグルメなのです。
こちらの永康牛肉麺さんは、牛肉麺を出すお店の中でも老舗の一店。今も当時の味を大事に守り、その味がお客さんをつかんで離さないという大人気店です。
牛肉麺とはその名の通り、牛肉が乗った麺料理です。定義はかなり広く、お店ごとにスープや麺、具もさまざまです。こちらの牛肉麺はどんなものでしょうか、早速地元の方に人気という「紅焼牛肉麺」を注文してみました。
写真の牛肉麺は、「小」サイズ。小でも十分すぎるボリューム感です。しっかりと煮込まれた骨付きの牛肉がゴロンと乗っています。スープの表面が赤いのはラー油が浮いているから。出汁の匂いに混ざって唐辛子の刺激的な香りがします。
一口スープを飲んでみると、辛すぎるというほどではなく、辛さが引くとともに牛肉のうまみが溶けだしたスープのコクとうまみをしっかり感じます。麺は、スープをよく吸い上げる中細ほどのストレート麺で、日本のラーメンのようなコシはあまり感じません。しかしその柔らかさがとても食べやすいです。
さて牛肉麺のメインともいうべき牛肉ですが、一つ一つがおおぶりなのが特徴です。一口で食べるのが難しいほどの大きさの牛肉は、箸で持ち上げるとずっしりと重さを感じます。
しかし、無骨なビジュアルからは想像できないほど、肉はとても柔らかいです。口に入れると簡単に噛み切れました。牛肉の臭みはなく、肉汁とスープのうまみが合わさってあと引く味です。
食べ進んでいくと唐辛子の効果で汗をかいてきますが、辛いものが苦手な場合は、辛くないスープの「清燉牛肉麺」もあるので安心。
おいしさの秘密をお店の方に伺いました。
店員さん「うちの牛肉麺の牛肉は地元の黄牛(こうぎゅう)を使用しています。黄牛はもともと荷運びなどに使われていた牛ですが、今は品種改良が進み、甘みの強い牛肉になりました。これを香味野菜をいれた牛骨スープで24時間煮込んでいます。それであの柔らかさになるんです。あと、うちは日本人のお客さんも多いのですが、それはきっとスープに八角を使っていないからだと思います。台湾料理の多くは八角を使うのですが、日本人の方は苦手な人が多いようで。決して日本人の方向けに八角を使っていないわけではなく、屋台からのレシピを守っているだけなのですが、いまとなっては良い結果なのかもしれませんね(笑)」
続いて、地下鉄を乗り継ぎ、淡水線台北駅に向かいましょう。台北駅周辺は高いビルやデパートが立ち並びまさに中心街といった雰囲気です。
駅から徒歩3分ほどの場所に、台湾人が愛する「食べ歩き肉グルメ」のお店があります。それが「福州世祖胡椒餅」さんです。
ここで紹介するのは「胡椒餅(フージャオピン)」です!胡椒餅は食べ歩きグルメが数多い台湾の中でも1、2位を争う人気の料理です。店頭はオープンキッチンになっているので胡椒餅が作られる様子を見ることができます。
「もちろん肉も大事なんだけど、宜蘭名産の三星葱がこの胡椒餅のポイントなんだ」と、お店の方が教えてくれました。
店の前には焼きたてを求めて多くの人が。早速一つ購入しました。紙袋に包まれた焼きたてアツアツをいただきましょう!
中はどうなっているのでしょうか、まんじゅうのような皮を二つに割ってみると、割るときの手応えは「バリッ!」とこんがり焼き上がっていることがわかります。中から肉餡が顔を出し、スパイシーな香りが鼻をくすぐります。
かぶりついてみると、パリッとした表面の皮はフランスパンのようにしっかりとした食べ応えがあります。表面にまぶされたゴマも香ばしさをプラスしています。肉餡は日本の肉まんのふわふわした食感とは違い、しっかりとしていてジューシーなハンバーグを食べているよう。その味はガツンと胡椒が効き、溢れる肉汁もますます食欲をそそります。
生地がしっかりしているので、食べ進んでいくうちに下の方へ肉汁がたまっていきます。店の近くで食べていた男性が「この胡椒餅は最後の一口が最高においしいんだ!」と笑顔で教えてくれました。
肉まんよりも生地がしっかりしていて、肉餡も食べごたえがあるので、小腹が空いた時には最適な一品ですね!
さて、台湾の伝統肉料理はまだまだあります。次は台北駅から地下鉄に乗り、新荘線中山國小駅へ向かいます。駅からローカルな雰囲気の街並みを歩くこと10分。次の目的地は「欣葉」さんです。
1977年の創業以来、チェーン展開しさまざまなジャンルの料理店を営業する欣葉グループの本店です。夜は混み合うので、予約をしてから行くことをオススメします。
メニューは小皿料理、点心、炒め物からフカヒレなどのメインディッシュ、そしてデザートまで500以上のメニューがありますが、今回の目的は二つの肉料理です。
その1つがこちらの「三杯鶏(サンペイジー)」です!
三杯鶏は、もともと中国本土の江西省の料理ですが、そのおいしさから台湾に根付き、いまや台湾料理の代表的な一品となっています。この料理を上手に作れなければ、一人前の台湾料理人ではないと言われるほど、人々に愛されてきました。
名前の由来は諸説ありますが、醤油、酒、ごま油の三つの調味料を同量ずつ使って味付けされることからというのが有力な説です。
できたての三杯鶏は、鍋肌がふれあいジワジワと焼け付く音がしています。音とともに醤油と砂糖が混ざり合ったような、あまじょっぱい匂いが広がり、鍋肌に焼きついたソースが料理全体に香ばしさを加えています。
鶏肉を1つ持ち上げてみると、骨つき肉でした。つやつやっとした照りがたまりません! さまざまな部位の肉が入っており、小サイズの鍋でも、ひとりでは食べきれないほどのボリュームです。
鶏肉にかじりつくと、プリッとした心地よい弾力とともに甘辛い味付けが口いっぱいに広がります。この料理の特徴でもある、香り付けの「台湾バジル」の爽やかな風味が、濃いめの味付けの料理の後味をさっぱりさせています。そして、まるのままたっぷり入ったニンニクがコクを加え、スライスされたショウガのピリッとした辛さが味を引き締めています。
バジルが入っているせいもあり、タイ料理のガパオに近い印象ですが、ガパオよりも味はまろやかで日本人好みの仕上がりになっています。単純な味付けに見えて、絶妙にバランスをとった肉料理なんですね。また、ご飯との相性が抜群なので、ぜひ一緒に食べてみてください。
さて三杯鶏を食べていると、もう一つの肉料理がやってきました。台湾に来たら外せない料理、それが「魯肉(滷肉、ルーロー)」です。日本風に言えば豚の角煮です。冒頭でも紹介した台湾の国宝の一つは、この豚の角煮を模ったもの。とくれば、食べないわけにはいきませんね!
台湾の角煮は日本で多く食べられるものと違い、皮付きのものが一般的です。沖縄の豚の角煮「ラフテー」は皮付きのものが多いですね。そういったところから、琉球と台湾の歴史のつながりを感じてしまいます。
豚肉は台湾産の厳選されたものを使用しています。甘みの強い豚肉本来の味を生かすため、最小限の調味料で味をつけているとのこと。肉は歯がいらないほど柔らかく、ほろほろと口の中で肉の繊維がほどけます。ゼラチン質のプルっとした皮が、和食の角煮にはない食感のアクセントになっていますね。
もちろんご飯との相性は言うまでもないですが、「割包(クーパオ)」とよばれる中華まんの皮のような蒸しパンに挟むとまた格別! ぜひお試しあれ。
最後に台湾で最も愛されている肉グルメを求めて街を移動しましょう。淡水線中山駅から歩くこと10分でやってきたのは台北中心部の「寧夏路夜市(ニンシャールーイェスー)」。300mほどの道に100軒以上の屋台が立ち並ぶ屋台街です。その中にあるのが「方家鶏肉飯」さんです。
こちらも店名に料理名が入っていますが、最後の肉料理はご飯もの。「鶏肉飯(ジーローハン)」、そして「魯肉飯(ルーローハン)」です!
この二つを外して台湾料理は語れない。それほど台湾の人々に浸透しています。台湾人は、それぞれお気に入りの店が必ずあると言われるほど。食事として、またおやつとして、台湾の人々の胃袋を支えているファストフードなのです。こちらの鶏肉飯は屋台ながら、「台北一おいしい」と言われるほどのもの!
ひとつずつ注文してみましたが、とにかく出てくるのが早いです。15秒ほどででてきました!
見てわかる通り、とてもシンプルな料理です。鶏肉を細かく裂いてご飯に乗せている方が鶏肉飯。豚ひき肉が甘辛く煮付けたものを乗せている方が魯肉飯です。サイズは片手に収まるぐらいの小さめなお茶碗なので、小腹がすいた時のおやつにも、夕食や晩酌の後シメでもペロリと食べれます。そして値段が激安!1杯日本円で100円ほどです。
鶏肉飯はさっぱりとしつつ、鳥のおいしさをしっかり感じられます。かけられた塩ダレのような特製ダレがさっぱりしすぎないようにコクを加えています。お客さんたちに話を聞いてみると、魯肉飯と鶏肉飯どちらも人気でしたが、女性には鶏肉飯が好きという方が多くいました。
魯肉飯は鶏肉飯と逆にこってりとした味です。豚の甘い脂に醤油と砂糖の甘辛い味付けがマッチしています。魯肉飯は子どもや男性が好きという意見が多く見られました。
鶏肉飯と魯肉飯は、台湾が誇る料理ですが、一方でお店によってかなり味が異なる料理でもあります。特に魯肉飯は違いが顕著で、肉の大きさ、使用している肉の部位、椎茸やたけのこの有無、八角の風味が強さなど……。お店ごとに個性が出ています。台北を旅行中、小腹が減った時に食べ比べしてお気に入りの店を探すのも楽しいでしょうね。
さて今回は、台湾人熱愛の伝統肉グルメをいくつか紹介してきました。もちろんこのほかにも紹介しきれない肉グルメが数多くあります。しかし、もし台湾に初めて行くという場合は、今回紹介したメニューからまず食べてみてください。そうすればきっと台湾のグルメが好きになることでしょう。そして好きになったら、自分でどんどんおいしいものを発見してみてください。
それでは次回は後編。夜がふけた屋台街をさらに散策し、台湾の魅力の一つ「夜市で味わえる肉グルメ」を探求していきましょう!
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店舗情報
● 永康牛肉麺
住所:台北市金山南路二段31巷17號
電話:02-2351-1051
営業時間:11:00~15:30/16:30~21:00
定休日:なし● 福州世祖胡椒餅
住所:台北市重慶南路1段13號
電話:02-2311-5098
営業時間:11:30-22:00
定休日:旧正月● 欣葉本店
住所:台北市雙城街34−1號
電話:02-2596-3255
営業時間:11:00~00:00
定休日:なし● 方家鶏肉飯
住所:台北市大同區寧夏路44-2號(寧夏路夜市)
営業時間:18:00~3:00
定休日:なし
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。