暮らしのコト

土地の魅力が凝縮! 全国「道の駅」めぐりの旅

世界に誇る日本酒文化を今に伝える「道の駅 石鳥谷」

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全国の道の駅を巡る連載、今回は岩手県花巻市石鳥谷町にやってきました。岩手県の中部に位置する花巻市。その北部、紫波町と接する市境にあるのが石鳥谷町です。

自然あふれる地域で、その中でも美しい風景を一年通して見ることができる「葛丸川渓流」が人気です。夏は森林浴、秋になれば紅葉狩りが楽しめ、渓流釣りシーズンには釣り人が遠方からも訪れるスポットになっています。

そんな石鳥谷町には、もう一つ日本に誇る名物があります。それは「日本酒文化」です。

近年では若い世代から海外まで注目されている日本酒。その日本酒を作る最高責任者を「杜氏(とうじ)」と呼びますが、全国には「日本三大杜氏」と呼ばれる杜氏文化の里があり、新潟県の越後杜氏、兵庫県の丹波杜氏、そして岩手県の南部杜氏が並び立っています。

石鳥谷町には、その南部杜氏たちが多く住んでいました。そこでこの街では、「南部杜氏の里 石鳥谷」と自称し、その文化・伝統を後世に残し伝えようという運動をしています。その活動の中心となる施設が、今回ご紹介する「道の駅 石鳥谷」なのです。

所在地は、東北自動車道花巻ICから国道4号線を進むこと約10分の距離にあります。

国道4号線には案内標識が出ています。

国道4号線には案内標識が出ています。

和風な造りの建物が並ぶ「道の駅 石鳥谷」。

和風な造りの建物が並ぶ「道の駅 石鳥谷」。

道の駅の案内図を見ると、いくつもの建物がこの中にあるようです。まずはやはり南部杜氏について学ぶため「南部杜氏伝承館」へ行ってみましょう。

こちらが南部杜氏伝承館。入館料は一般400円、高校・大学250円、小学・中学200円。

こちらが南部杜氏伝承館。入館料は一般400円、高校・大学250円、小学・中学200円。

中へ入ると酒樽がたくさん積み重ねられています。南部杜氏は全国の酒造で酒造りに関わっていることから、全国各地の様々なお酒が並んでいました。

照明などの演出もあって、酒蔵の雰囲気を体験することができます。

照明などの演出もあって、酒蔵の雰囲気を体験することができます。

そもそも南部杜氏というのは全国最大規模の杜氏集団で、発祥は江戸時代と言われています。米作りだけでは生活が厳しい人々が酒造りを学び、農作業がない冬場に全国の酒蔵に出稼ぎに行っていたことが始まりと伝わっているそう。その文化は受け継がれ、北は北海道、南は山口県まで全国各地の酒蔵でいまも南部杜氏の方たちが活躍しています。

南部杜氏伝承館はそんな南部杜氏の歴史、日本酒の知識をわかりやすく学ぶために作られた資料館。この建物自体も実際に酒蔵として使われていたものを、解体・移築されたものだそうで、太い柱や梁に歴史を感じました。

巨大な桶はかつて実際に使われていたもの。階段を登って中が覗けます。

巨大な桶はかつて実際に使われていたもの。階段を登って中が覗けます。

館内中央には巨大な仕込み桶が置かれ、その周りには日本酒を造るときに使われていた道具類が展示されています。壁際には「南部杜氏の歴史」「杜氏たちの歳時記」「酒の神々」などのテーマ展示が据えられ、日本酒世界へ誘ってくれます。

建物の1階では日本酒作りに関しての展示が多かったのに対して、2階では日本酒にまつわる知識、雑学を紹介しています。「酒と肴」や「酒と健康」などより日本酒のことを好きになるきっかけを与えてくれる展示になっています。

さて、南部杜氏と日本酒に関して学んだところで、南部杜氏伝承館の隣に立っている物産品や土産品が売っている「酒匠館」に行ってみましょう。

酒匠館では買い物や食事を楽しむことができます。

酒匠館では買い物や食事を楽しむことができます。

入り口に入ると今回お話をお聞きする(株)石鳥谷観光物産の葛西さんが待っていてくれました。早速ですがこちらの道の駅の沿革についてお話を伺いました。

葛西さん「道の駅 石鳥谷は平成5年に道の駅の認定を受け、今年で23年目になります。実は、岩手県で初の道の認定を受けた施設なんです。その証拠に認定証の数字の末が『001』となっています」

岩手県で最初の道の駅となった当時の登録証。

岩手県で最初の道の駅となった当時の登録証。

こちらが県内初の道の駅だったとは、それだけ歴史のある施設なんですね。つづいて扱っている商品について案内してもらいましょう。

葛西さん「当道の駅は南部杜氏伝承館が併設されていることからもわかる通り、日本酒をテーマにしています。県内のものを中心としながら、東北地方のものや、南部杜氏が関わっている日本酒も多数取り揃えています。この酒類の売り場の広さは全国の道の駅の中でも最大規模だと思います。また、日本酒の試飲コーナーもあり、お客様には好評をいただいています。たくさんある日本酒の中でも特にオススメは、石鳥谷町唯一の酒蔵、川村酒造店さんの『南部関』です」

ずらりと銘酒が並ぶ日本酒コーナー。

ずらりと銘酒が並ぶ日本酒コーナー。

試飲コーナーでは常時5種類の日本酒を試飲することができる。

試飲コーナーでは常時5種類の日本酒を試飲することができる。

こちらが、葛西さんオススメの「南部関」。

こちらが、葛西さんオススメの「南部関」。

お酒以外ではどんな商品があるのでしょうか。

葛西さん「お酒以外の人気商品でご紹介したいのは2つ。どちらも日本酒を使った商品になります。一つ目は当道の駅オリジナルの『酒アイス』ですね。先程ご紹介した日本酒、南部関の特別純米酒を使用したアイスになっています。そして二つ目は砂田屋さんの『酒ケーキ』です。たっぷりと日本酒シロップが染み込んだカステラ生地のなめらかな口当たりが、やみつきだと販売当初から大人気の一品です。どちらもアルコールが含まれるのでドライバーやお子様、お酒の弱い方はご注意ください」

ジェラートコーナーで味わえる酒アイス(300円)、持ち帰れるカップタイプ(280円)も販売。

ジェラートコーナーで味わえる酒アイス(300円)、持ち帰れるカップタイプ(280円)も販売。

こちらが酒ケーキ(1,360円)。アルコール入りの大人のためのケーキです。

こちらが酒ケーキ(1,360円)。アルコール入りの大人のためのケーキです。

また、この酒匠館は昨年、売り場のリニューアルを行ったそうですね。

葛西さん「入り口を入ってすぐの正面が売り場を拡大した部分になります。もともとは事務所だったスペースを改装しました。現在は岩手県を代表するお土産品、南部煎餅を中心に販売しています。また先程ご紹介した酒ケーキもこちらで販売しています」

リニューアルされた販売スペースでは、南部煎餅の老舗「巖手屋」さんの商品がずらり。

リニューアルされた販売スペースでは、南部煎餅の老舗「巖手屋」さんの商品がずらり。

葛西さんに「レストランにも酒にまつわるメニューがありますよ」と教えていただいたので早速、レストラン「りんどう亭」さんにお邪魔しました。店員さんに酒にまつわるメニューについて聞いてみると「それはうちの人気メニュー“酒匠(さかしょう)ラーメン”ですね」との答えが。さっそくそちらを注文しました。

広々とした店内。三方がガラスなのでとても明るい。

広々とした店内。三方がガラスなのでとても明るい。

手作りで季節によって変わる漬物が常時3種食べ放題。これを目当てに来るお客さんもいるとか。

手作りで季節によって変わる漬物が常時3種食べ放題。これを目当てに来るお客さんもいるとか。

待つこと数分、やってきました!こちらが「酒匠ラーメン」(980円)です! 大きなチューシュー、カニとエビが乗っている豪華な一品になっています。

酒匠ラーメンのチャーシューは岩手県東野市のブランド豚「亜麻豚」を使用。

酒匠ラーメンのチャーシューは岩手県東野市のブランド豚「亜麻豚」を使用。

このラーメンにお酒が使われている部分は「スープ」。なんとスープのベースに、大吟醸の酒粕が使われています。ピリ辛の味噌スープを一口いただくと、最初は味噌の濃厚な味が広がりますが、飲み込んだ後にふわっと酒粕の香りがしてきます。麺は中細の少し縮れた麺にスープがよく絡みますね!

具として乗っているエビとカニからも出汁がでているので、スープに甲殻類の旨味も加わり、本当に箸が止まらない美味しさです。

食事の他にも、この道の駅にはまだまだ地元の魅力を体験することができる施設があります!

野菜の直売所「杜の蔵」は、地元産の新鮮野菜が充実しています。店員さん曰く、リンゴやブドウ、ナシ、モモなどのフルーツ類が多く出回るようになる秋が、狙い目とのことです。

杜の蔵の外観、外では野菜の苗などが売られている。

杜の蔵の外観、外では野菜の苗などが売られている。

青いケースがたくさん並び、その中に新鮮野菜が各種販売されている。

青いケースがたくさん並び、その中に新鮮野菜が各種販売されている。

東北北部ではポピュラーな山菜の一種「みず」。

東北北部ではポピュラーな山菜の一種「みず」。

南部杜氏伝承館と併せて楽しみたいのが、「石鳥谷歴史民俗資料館」です。入場は有料ですが、南部杜氏に関係する資料だけでも1,700点以上もあり、石鳥谷や南部杜氏についてさらに深く学ぶことができます。

そして酒匠館の向かい側には「市立石鳥谷図書館」も。こちらでも日本酒にまつわる資料や本を所蔵しているので、この道の駅を巡るだけで日本酒についてかなり深く学ぶことができそうですね!

石鳥谷歴史民俗資料館の外観。入館料は一般250円、高校・大学200円、小学・中学150円。

石鳥谷歴史民俗資料館の外観。入館料は一般250円、高校・大学200円、小学・中学150円。

他にも無料でクラブとボールを貸し出してくれる「パークゴルフ場」や、11月〜3月までアイススケートが楽しめる「石鳥谷アイスアリーナ」など、遊べるスポットも併設されています。これならご家族で来ても楽しめることでしょう。

道の駅 石鳥谷は、日本酒に関して学べるだけではなく、一日中楽しめる魅力的なスポットでした。また、石鳥谷町では、夏にむかっていろんなイベントが行われます。田んぼに稲で絵を描き出す「八幡田んぼアート」は秋の収穫まで楽しめ、8月13日に行われる「石鳥谷夢祭り」では北上川の水面を7,000発の花火が鮮やかに彩ります。ぜひ、まだ今年の夏休みの予定を決めていない方は候補に入れてみてはいかがでしょうか?

今年の八幡田んぼアートは宮沢賢治の童話「セロ弾きのゴーシュ」がモチーフ。

今年の八幡田んぼアートは宮沢賢治の童話「セロ弾きのゴーシュ」がモチーフ。

  • 施設情報
    ●道の駅 石鳥谷
    住所:岩手県花巻市石鳥谷町中寺林第7地割17−3
    営業時間:9:00〜17:30
    http://www.sakashokan.com/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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