暮らしのコト

満腹御礼 ご当地肉グルメの旅

滋賀の“ココイチ”限定の「鹿カレー」に溶け込んだ、環境保全と地元愛

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全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。今回は滋賀県長浜市にやってきました。

長浜市は琵琶湖北部の湖北地方の中心地で、羽柴秀吉が築城した長浜城を中心に戦国時代から城下町として栄えてきました。最近では、旧市街地の歴史ある建物を再建し、カフェや博物館、ギャラリーなどに再整備した「黒壁スクウェア」が観光地として大人気で、年間300万人が訪れています。

長浜のシンボルの長浜城。天守からは琵琶湖や長浜の町並みを一望できます。

そんな長浜市で、今回訪れる肉料理のお店は、なんと“ココイチ”こと「カレーハウスCoCo壱番屋」! 国内外に1400店舗以上展開するカレーショップですが、実は店舗によってオリジナルメニューが存在することをご存知ですか? 今回は全国に複数あるオリジナルメニューのなかでも、特に珍しいカレーをご紹介します!

なんと滋賀だけに「しか」を使った、「鹿カレー」です!

訪れたのは、長浜駅から車で10分ほどの場所にある「長浜8号バイパス店」。


お店は国道8号線沿いにあり、大きな駐車場もあるので車で気軽に立ち寄れます。

お店の外には風にはためく、鹿カレーの旗がありました!

滋賀県内でCoCo壱番屋をフランチャイズ展開し、今回のメニューの開発者でもある株式会社アドバンスの川森慶子さんに、「鹿カレー」についてお話を聞きました。

川森さん「CoCo壱番屋では、平成21年から地域に根ざしたメニューを開発・提供しようという動きがはじまり、私たちも滋賀県らしいメニューを考えることに。第1弾は地元の農業高校とコラボし、ソーセージカレーを作りました。そしてその第2弾として考えたのが『鹿カレー』なんです」

滋賀と鹿、どんな関わりがあるのでしょう?

川森さん「現在、日本全国で野生動物から受ける農作物への被害は問題になっていますが、滋賀県でもその被害は甚大です。獣害として処分されることの多かった鹿を、肉料理としておいしく加工したいと考え、鹿カレーを考案したんです。長い開発期間を経て、平成22年5月から販売を開始しました」

「鹿害(ろくがい)は農家の皆さんにとっては本当に大変な問題なんです」と話す川森さん。

チェーン店で獣肉メニューを発売するのは、全国的にもこの鹿カレーが初めてだったそう。メディアを通じて、全国で知られるようになりました。

川森さん「鹿肉は、メニュー開発と同時期より滋賀県蒲生郡日野町で活動する日野猟友会の有志が設立した『獣美恵堂(じびえどう)』にお願いしています。全国チェーンの厳しい審査をクリアしたお肉をいつも届けてくれる、なくてはならない存在です」

そんな全国でも知られるようになった滋賀県限定の「近江日野産 天然鹿カレー」をいただきましょう! ココイチ自慢のカレーベースの中に、しっかりとおおぶりな鹿肉が投入され、煮込まれていきます。

おなじみのココイチのカレーが、社会貢献のオリジナルメニューに早変わり。

近江日野産 天然鹿カレー(927円)。

ごろりとルーの中から顔を出す鹿肉が存在感があります。ベースはココイチの一番人気であるポークソースを使用していますが、もちろんココイチなのでソースはお好みで変更可能です。肉以外にも、タマネギとニンジンが入っています。

純白のライスと一緒に食べてみると、野菜と肉の旨味がつまったカレールーと心地のよいスパイスが口の中に広がります!
メインの鹿肉を噛み締めてみると、赤身の多いモモ肉らしく適度な歯ごたえがありながら、中からはカレーと中和した肉汁が染み出しました。カレーの風味に負けることなく、鹿肉の旨味が主張してきますね!

ジビエに馴染みのない人には「獣肉特有の匂いなどがあるのでは?」と気になるかもしれませんが、鹿肉自体の新鮮さなのか、ココイチのカレーとの相性なのか、嫌味はありません。むしろ、カレーのスパイスの香りと相まって、カレーのコクや深みを底上げしてくれている印象です!

肉は食べ応えのあるサイズの角切りになっていいます。

川森さん「最初にメニューを開発したころは、きっと獣臭さが敬遠されるだろうと予想して、匂いを完全にとってしまったんです。すると、ある地元のお客様から『鹿肉の風味がなくて、ほかのお肉と変わらない』というご意見がありました。そこから思考錯誤して、匂いと旨味のバランスが取れる絶妙な処理を施したものをご提供するようになりました。お客様の反応も好評です!」

さらにもうひと口食べてみると、先程食べた鹿肉とは少し違う食感を感じられました。より柔らかい歯ごたえのお肉です。この違いは?

川森さん「獣美恵堂さんが狩猟した肉を全量購入しているため、性別も年齢もさまざまな鹿肉が集まります。そんな中でも味の均一化を図るために手作業で肉を詰め分けし、ひと皿でさまざまな食感の鹿肉を味わえるようになっています」

機械では肉の硬さなどは判別が難しいので、今も手作業で袋詰めをしているそう。

鹿カレーはシリーズ展開されており、年間を通して食べられる「天然鹿カレー」と地元余呉町の食肉加工処理施設から購入している冬季限定販売の「鹿カツカレー」があります。天然鹿カレーは県内11店舗での発売、鹿カツカレーは長浜8号バイパス店のみの販売です。

川森さん「過去には期間限定で、鹿ミートボールカレー、鹿焼肉カレー、鹿龍田揚げカレー、鹿シチューなどの販売を行ってきました。これからも限定メニュー開発は続けていきたいと考えているので、楽しみにしてください!」

最後に、鹿カレーについて今後の展開を聞いてみました。

川森さん「地元ではすでに定着し、給食のメニューにも採用されています。もともと環境保全のためにと始めたメニューですが、いまではその味を気に入っていただき、毎週のように食べに来てくださるお客様もいらっしゃいます。鹿肉がおいしいことをちゃんと伝えていけば、鹿肉の流通量が増え、鹿の頭数の減少、鹿害の縮小へと繋がっていくと信じています。これからもカレーを通して、地元が盛り上がるような活動をしていきたいですね」

鹿カレーのメニューの裏には鹿害や携わる猟師さんの話も掲載されています。

これから、本格的なジビエのシーズンを迎えます。炭火焼、鍋、フレンチなど、さまざまな食べ方がありますが、日本の国民食「カレー」とともに味わってみてはいかがでしょうか?

  • 施設情報
    ●カレーハウスCoCo壱番屋 長浜8号バイパス店
    住所:滋賀県長浜市八幡東町83-1
    電話:0749-63-8722
    営業時間:11:00~24:00、年中無休
    http://group-adv.co.jp/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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