地域で愛されているパンを探して、全国各地をゆく「地域密着 愛されご当地パン」。今回は、チャーミングな名前のご当地パン「なかよしパン」を求めて、沖縄県うるま市の「ぐしけん」を訪ねました。
1951(昭和26)年創業のぐしけんは、沖縄県の2大パンメーカーの1つ。沖縄県内にあるスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどに製造したパンを卸売りしているほか、石窯で焼き上げた手作りパンを提供するベーカリーカフェ「マルコポーロ」も経営していて、沖縄県民にはよく親しまれています。そんなぐしけんの看板商品が「なかよしパン」。一体どんなパンなのでしょうか。早速、拝見してみましょう!
思わず「でかっ!」と声が上がってしまうほど、想像を超える大きさのパン! ただでさえ大きいのに、ふわふわと柔らかい生地なので、両手で持たないと崩れてしまいそうです。
気になるのはパン生地に入った7本の線ですが、これは食べやすいように8等分にちぎるために入れられているそう。大胆な大きさのパンですが、意外にも繊細な心遣いがあるのですね。
早速ちぎって口の中に運んでみると、香り高いココアの甘みが広がりました。中にあるクリームは少量に見えますが、濃厚でミルキーな味わいをしっかりと感じさせて、パンにコクのある甘みを加えています。芳醇でスイートなミルクココアの味わいを楽しめる、甘党にはうってつけのパンです!
甘いと言っても、決してしつこい甘みではないので、食べ飽きることはありません。むしろ、パン生地がふわっと軽くて食べやすいおかげもあってか、次から次へとちぎっては頬張りたくなります。それでも、いくら食べても、まだパンが残っています……恐るべきビッグサイズ! 一人では食べきれないほどの贅沢なボリュームでした。
■特大サイズのパンが誕生したわけ
本州ではあまり見かけないビッグサイズのパンは、どうして生まれたのでしょうか? ぐしけんで工場長を務める照屋さんに聞いてみました。
照屋さん「沖縄では三世代にわたる大家族のご家庭が多いため、みんなでちぎって“なかよく食べてほしい”という想いから、1960年頃に『なかよしパン』が生まれました」
家族を大事にする県民性を意味して生まれた「なかよしパン」。クリームは、県民の好みをつかんで開発したと伺いましたが。
照屋さん「沖縄県民にはテビチやラフテー、またステーキなど脂っこいものが好まれます。また甘いものも大好きなので、バニラミルク風味のこってりしたバタークリームを使用しているんです。クリームをついている部分だけを存分に楽しめるように、パンの端っこは切り落としています」
“みんなでなかよく”をモットーに生まれたパンですが、1つ2つとどんどんちぎって食べられてしまうため、「気づいたら自分の分がなくなっていた」という残念な事態が生じることもあるんだとか。
そんな家庭内争奪戦を巻き起こすこともあるなかよしパンは、発売当初、本社工場がある沖縄県中部のスーパーマーケットでのみ販売されていました。それが、「店頭でひときわ目立つ大きな菓子パン」「大好きな甘いものがたくさん食べられる」など、口コミで少しずつ評判が伝わっていき、南部や北部にまで販売エリアが拡大されていったそうです。そして、今では沖縄全域で愛される定番商品になりました。
ちなみに、パンを運搬するトラックも知名度向上や人気の拡大に一役買ったそうです。
オリジナルキャラクターが大きく描かれたインパクトのあるトラックが沖縄中を駆け巡ることで、県民の目にとまる機会が増え、「なかよしパン」が身近な存在になっていったんですね。
■なかよしパンに仲間が登場!
なかよしパンの人気が定着したことで、のちに姉妹品も販売されるようになりました。沖縄では外国人居住者が多いことでチョコ系やピーナツ系のパンも人気なことから、「なかよしピーナツ」や、「なかよしPREMIUM メープルクリーム&チョコレート&ピーナッツクリーム」が登場。また、ジャージーミルクとカスタードクリームが別々に塗られた「なかよし ジャージー&カスタード」も、1つのパンで2つの味が楽しめると評判になっています。
さらに、「一人でも食べきれるサイズも欲しい」というお客さんの要望に応え、ハーフサイズも誕生。家族連れのお客さんが多いスーパーマーケットでは通常サイズが人気ですが、コンビニエンスストアでは一人用としてこのハーフサイズが支持されているそう。
沖縄では約60年も続くロングセラーのなかよしパン。最近では、さらに多くの県民に親しんでもらおうと、プロモーション活動に力を入れていると言います。
照屋さん「3年前から月に数回、ラジオ番組のCMで弊社の商品紹介を始めました。沖縄では車やタクシーなどでラジオを聴く方が多いためです。若い世代のリスナーさんにも『なかよしパン』の名が広がることで、激励の言葉をいただける機会が増えました。もちろん長年のファンも多く、『東京にはなかよしパンがないのは残念。沖縄に帰ったときは、いつもなかよしパンを食べます』とお便りをいただくこともありますが、航空輸送上の品質保証の問題から、本州にお運びすることは難しいんです。これからも沖縄限定のパンとして、この地で親しんでいただきたいですね」
“大切な人とのつながり”を象徴する「なかよしパン」。家族や友人と沖縄へバカンスに出かける際は、ぜひこのビッグなパンをなかよくシェアしてみてはいかがでしょうか。
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店舗情報 ●株式会社ぐしけん
住所:沖縄県うるま市字州崎12-90
電話:0120-113-564(お客様相談室)
HP:http://www.gushikenpan.com
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。