全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。
今回は沖縄県にやってきました。
沖縄のグルメといえば、沖縄風の豚の角煮「ラフテー」が有名です。しかし、今回ご紹介する肉グルメは「鶏の丸焼き」です。実は沖縄では、豚と並んで鳥の丸焼きが非常にポピュラーな料理として愛されています。県内には、多くの鶏の丸焼きの専門店がありますが、今回はその中でも老舗で人気店、浦添市にある「ブエノチキン浦添」を訪れました!
浦添市は沖縄観光の玄関口である那覇市のお隣。お店は「パイプライン通り」と呼ばれる国道251号線沿いにあり、沖縄都市モノレール「ゆいレール」の古島駅から徒歩15分ほどです。
お話をしてくれるのは、2代目にあたる浅野“ブエコ”朝子さんです。
ブエコさん「ブエノチキン浦添は、サラリーマンだった父が脱サラし35年前にオープンしました。アルゼンチン帰りの知人からレシピを譲り受け、暖簾分けのような形で始めたそうです。中々売れない時期もありましたが『こんなにおいしいチキンなのだから絶対に大丈夫』とその味を信じ続けました。すると少しずつ知名度が上がっていき、今では土地にしっかりと根付いた味にとして、県内・県外からも多くのお客さまがきていただけるお店に成長しました」
苦労しても味を信じ続けたからこそ、35年も続く店になったんですね。その「味」へのこだわりも気になります!
ブエコさん「現在の味は、最初に譲り受けたレシピからかなり変わっています。父は毎日試行錯誤し続け、今の味に固まるまで15年ほどかかったそうです。当初よりもお酢の量が増え、ニンニクにいたっては倍の量に増えました」
「鶏の丸焼き」というメニュー名からは想像できない、奥深いレシピ研究が行われてきたんですね。今回は特別に、企業秘密以外の部分の仕込みを見せていただきました。
ブエコさん「うちで使う鶏は、朝締めの沖縄県産『やんばる若鶏』のみ。味がしみやすいように下処理したら、ハーブをまぶし、粗めに刻んだニンニクを鶏の上にのせます。そして企業秘密の秘伝のタレをかけて一晩漬け込みます。翌日、ニンニクを全て鶏の中に詰めていき、さらに1日寝かせます。これで下準備の完了です」
仕込みに丸2日かかるとは驚きです! タレのベースにお酢を使い、漬け込むことによって肉を柔らかくする効果もあるそうです。
ニンニクは1日約8キロも使用し、すべて手作業できざんでいるそうです。むき身のニンニクや機械できざんだニンニクでは、今の味は出ないのだとか。
ブエコさん「肉を専用のロースターを使い、2時間かけて焼いていきます。長い時間をかけてじっくり焼くことで、余分な脂は落ち、中はジューシーに仕上がります。ロースターは何台かありますが、一番古いものは米軍の払い下げ品で40年以上前のものです。今も現役で毎日鶏を焼いてくれる欠かせないパートナーです!」
仕込みに2日、焼きも2時間とは、想像以上に手間と時間のかかる料理ですね。いい焼き色がついた鶏がロースターの中を回る姿は、見ているだけで食欲が湧いてきます。そして焼きあがったチキンがこちら!
チキンは食べやすいようにカットしたものが提供されます(カット前のチキンそのままの販売は要予約)。ハサミで肉を切っていくと、溢れんばかりのニンニクが顔を出しました。肉を割った瞬間にニンニクと鶏の脂が混ざった香ばしさの波が押し寄せます!
こちらがブエノチキン浦添自慢のブエノチキンです。
部位ごとに食べやすく切り分けられていますが、まずは人気の高い「モモ」の部分からいただいてみます。
口いっぱいにほおばると、ハーブの爽やかな香りを感じます。少し酸味のある特製ダレの風味と、あふれ出るジューシーな肉汁がたまりませんね。特製ダレは濃いものではなく、鶏のおいしさを引き出すような絶妙な加減です。また、これだけニンニクが入っていると匂いが立ちすぎるのではと心配しましたが、コクはしっかりと肉に伝わっているのに対し、匂いはそこまで感じませんでした。
ブエコさん曰く、これはお酢の力だとか。ニンニクをお酢ベースの特製ダレと一緒に漬け込むことで、匂いがマイルドになるのだそう。そしてこの粗みじんのニンニク自体もお客さんに大人気で、お肉を食べ終わった後に残ったニンニクをスプーンですくい、ご飯にかけて食べる方もいるのだとか!
「一番人気は『足』です!」とブエコさん。一羽でも2本、半身の場合は1本しかないので、家族で取り合いになりそうですね!
「足」は、モモよりハリのある肉質です。骨の周りにいくにつれ肉の味が濃くなり、骨までしゃぶりつきたくなる味です。これは確かに取り合いになりそう…!
一羽で3〜4人前ありますが、男性の中には1人でペロリと平らげる方もいるとか。また半身なら女性でも1人で食べる方がいるそうです。この味なら納得ですね。
しかし、鳥の丸焼きというと日本ではクリスマスのイメージが強いです。沖縄ではどういった人が買いに来るのでしょうか
ブエコさん「沖縄では、なにかお祝いや集まりごとがあるとチキンを食べるという習慣があり、ローストチキンやフライドチキンを日常的によく食べます。また家族親戚の人数が多いので、3羽や5羽も買われていく人も多いです。そして沖縄といえば長寿の県として有名ですが、うちのお客さまも下は0歳から上は100歳を超えるオバアまで、幅広い世代に利用していただいています」
長寿の秘訣は、もしかしたらヘルシーで高タンパクな鶏肉にもあるのかもしれませんね!
それでは、最後に今後のブエノチキン浦添について聞いてみました。
ブエコさん「もともと父と母の2人で持ち帰り専用のお店としてやっていたところに5年前、私が2代目見習いとして入りました。父が体調を崩したのがきっかけですが、それ以上にこのお店の一番のファンである私が、『もっとこの味をたくさんの人に食べてもらいたい』という思いが強くなったためです。そして2年前にお店の隣にブエノチキンの焼きたてを食べられる『ブエノキッチン』をオープンしました」
ブエコさん「また、現在は焼きたてを真空パックにして全国への配送も行っています。評判が全国に広がる中で、なかなか沖縄には来られない人にもこの味を届けたいと思ったからです。そして、今年の1月には『世界のブエノチキン合同会社』として法人化をしました。次は日本だけではなく、この味を世界に広めていきたいという思いです。もちろん、沖縄に来た際には、ぜひ『ブエノチキン』を食べに来てください!」
これから夏休みシーズン。沖縄旅行の予定がある人はぜひお店に立ち寄ってみてください。
真っ青な空とまぶしい太陽、そんな沖縄の空の下で味わう焼きたてのブエノチキンとビールは最高ですよ!
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施設情報
●ブエノチキン浦添
住所:沖縄県浦添市内間1-14-2
電話:098-876-0452
営業時間:11:00〜20:00売り切れ次第終了、月曜定休
http://www.buenourasoe.com/
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。