(OVO オーヴォより)

特薦?
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番《春》、第6番&第10番
ジャンルカ・カシオーリ、庄司紗矢香
Universal Classics & Jazz
e-onkyo music(FLAC 88.2kHz/24bit 3,200円)
HQM STORE(FLAC 88.2kHz/24bit 3,086円)
mora(FLAC 88.2kHz/24bit 3,200円)
VICTOR STUDIO HD-Music.(FLAC 88.2kHz/24bit 3,200円)
2009年12月にスタートした庄司紗矢香とジャンルカ・カシオーリ(イタリア)のベートーヴェン・ヴァイオリンソナタ全曲録音の掉尾を飾る名アルバム。同コンビの新世代のベートーヴェン表現は各方面で絶賛されている。先日の日本公演も素晴らしかった。
第5番「春」には名盤が多いが、本演奏は特に熱い感情が迸り、ロマンティックな香りが魅力的だ。ピアノのカシオーリが表情深い歌いを中心に演奏をリード。音色も庄司紗矢香のヴァイオリンがやや細く、表現も穏当だが、ピアノが太く華麗で美しい。第1楽章冒頭、カシオーリのへ長調音階の駆け上がりの微妙な揺らしは、まさに春の惑い。
第6番イ長調も表現意欲に溢れる。主役はここでもカシオーリだ。ロマンティックな歌いを中心に音楽を進め、本演奏を完全にリードしている。まるでモーツァルトのヴァイオリンソナタのように「ピアノが主でヴァイオリンが従」のような、音楽的な関係に聴ける。音色もヴァイオリンがやや細く、表現も穏当だが、ピアノは太く華麗で、音色も美的。最新録音だけあって、音質はたいへん鮮明。ピアノが醸し出す夢幻的な響きが美的。ヴァイオリンは鋭角的でクリヤーだ。ハンブルクで2011年9月に録音。
特薦?
BIG BAND SCALE〜甦るビッグバンドサウンド〜
角田健一ビッグバンド
ワーナーミュージック・ジャパン
e-onkyo music(FLAC 96kHz/24bit 2,571円)
VICTOR STUDIO HD-Music.(FLAC 96kHz/24bit 2,571円)
素晴らしい演奏と、キレのよい音で人気の角田健一ビッグバンド『BIG BAND SOUND』シリーズの第3弾だ。これまではスイング・ジャズだったが、今回はがらっと変わって「地下室のメロディー」、「危険な関係のブルース」、 「チュニジアの夜」、「スマイ」、……などのフランス映画やモダン・ジャズ、ラテン・ジャズ。どんな切り口にも即応できるこのバンドの実力は凄い。
素晴らしい音だ。バンド全体としてのマッシブで雄大なサウンドと、各パート、個々の楽器の描きの明確さが両立している。マクロとミクロのどちらも極めて高い次元なのだ。角田健一ビックバンドはかつてSACDで一世を風靡したが、リニアPCM・96kHz/24bitは剛直でノリの良い演奏の迫力と魅力を余すところなく伝えている。5曲目「テイクファイブ」のサックス隊合奏の透明感、同調性の高さには驚嘆。高品質なリズム感、弾み感はまさにハイレゾの矜持だ。2015年2月22.23日、ミキサーズ・ラボスタジジオで録音。オリジナルは96kHz/32bit。
特薦?
New Seasons – Glass, Part, Kancheli, Umebayashi
Gidon Kremer
Kremerata Baltica
Deutsche Grammophon
e-onkyo music(FLAC 192kHz/24bit 3,680円)
HQM STORE(FLAC 192kHz/24bit 3,600円)
フィリップ・グラスのnew seasonはまさに「アメリカの四季」である。冒頭のギドン・クレメルのヴァイオリンソロが細部まで解像し、強音の音の張り、弱音のニュアンスの豊かさ は格別だ。まるで二人で弾いているような重音のハイテクニックにも目を見張る。途中から加わるオーケストラも決して重くなく、軽快な進行。低減が爽やかな のだ。軽妙なソロに、これまた浮遊感の高い弦楽サウンドが加わる。現代音楽といっても決して高踏的、孤立的ではなく、パズルのような複雑な音模様と、それ を司るリズムの万華鏡が面白い。2013年2月、リトアニアで録音。
推薦?
The K?ln Concert[Live]
Keith Jarrett
ECM
e-onkyo music(FLAC 96kHz/24bit 3,200円)
mora(FLAC 96kHz/24bit 3,200円)
HQM STORE(FLAC 96kHz/24bit 3,086円)
VICTOR STUDIO HD-Music.(FLAC 96kHz/24bit 3,200円)
世界遺産的な有名作品のハイレゾだ。静謐で多色なピアノサウンド。響きが美的。滞空時間は長いのだが、決して基音に過剰な修飾を与えていない。直接音が 主体で、それに間接音が寄り添うという形だ。和音の各構成音の交わりが美しく、それを元に旋律(オブリガードと言ったほうがよいだろう)が紡ぎ出される様 子が、ハイレゾの深遠なまでの描写力で、赤裸々に明かされる。ピアノ音が空間に消え行くさまが実に神秘的だ。1975年1月24日、ケルン、オペラ劇場に てライヴ録音。
推薦?
Passion World
Kurt Elling
Concord
e-onkyo music(FLAC 96kHz/24bit 3,200円)
HQM STORE(FLAC 96kHz/24bit 3,086円)
mora(FLAC 96kHz/24bit 3,200円)
VICTOR STUDIO HD-Music.(FLAC 96kHz/24bit 3,200円)
暖かみと、少しのハスキーさ、そしてビロード的なゴージャス質感のヴォーカルだ。一曲目「The Verse」。シンプルにピアノひとつだけを伴奏に従える。音量バランスでは、ややヴォーカルが優る。控えめなピアノがラブリーだ。2曲目「after the door」。ここからベースとドラムスが加わる。バックは決して明瞭ではなく、ベースの輪郭が甘いが、量感は十分。一方、ピアノは明瞭度が高い。ヴォーカルは少しセクシーに、スモーキーに叙唱する。
推薦?
Currency Of Man
Melody Gardot
Decca
e-onkyo music(FLAC 44.1kHz/24bit 3,200円)
HQM STORE(FLAC 44.1kHz/24bit 3,086円)
mora(FLAC 44.1kHz/24bit 3,200円)
VICTOR STUDIO HD-Music.(FLAC 44.1kHz/24bit 3,200円)
冒頭「It Gonna Come」。ベースの量感が印象的。輪郭はキレがやや甘いが、押し出し力が強い。リズムが恒常的に刻まれストリングス、ブラスがオブリガード風に修飾す る。ヴォーカル音像はセンターにかなり大きめに定位し、まさにバックバンドを睥睨(へいげい)するという風の音場だ。量感と自信に満ち、堂々したヴォーカ ルの存在感は大きい。後半でストリングスが分散和音的なオブリガードをヴォーカルなしで、もっぱら奏して一時、主役になる。マスタリングはバーニーグラン トマンスタジオ。
推薦?
Schubert: The “Great” C Major Symphony, D. 944
Orchestra Mozart
Claudio Abbado
Deutsche Grammophon
e-onkyo music(FLAC 96kHz/24bit 3,200円)
HQM STORE(FLAC 96kHz/24bit 3,086円)
mora(FLAC 96kHz/24bit 3,200円)
冒頭のホルンに少しザラツキ感があり、それが音楽的な味わいを醸し出している。音場感が素晴らしい。広がりと深さがあり、ソノリティと楽器のテ クスチャーとの音楽的バランスが上等。編成があまり大きくないので、すべての音部をクリアに見渡すことができる。低域は量感たっぷり。ティンパニは膨らみ があり、切れ味が鈍いが、一方で弦、木管の中高域は実に明瞭で繊細だ。ピラミッド的な低域のスケール感と自然に沸き立つ木管の質感とが対比的に美しい。解 釈的には、スコアの細部まできちんと見せてくれる、とても明晰な演奏だ。
推薦?
眠りの森の少女
Mistera Feo
赤川音響
e-onkyo music(DSF 2.8MHz/1bit 3,000円)
Mistera Feo(ミステラフェオ)は15人の少女合唱団のヴォーカル。CDは2011年発売。1曲目「Mistera Songo en Arbaro」はNHKの連ドラ「ゲゲゲの女房」の作曲家、窪田ミナのオリジナルだ。シンセサイザーと女子組という編成は滑らかで、美的。メインヴォーカ ルはダブルで中央左よりと右よりに位置し、コーラスは2つのスピーカーいっぱいに拡がる。作品を構成する音要素が混濁することなく、クリヤーに自己主張し ている。2曲目「Pie Jeus(フォーレのレクイエム)」。まるで教会で聴いているような静謐で、神々しさ。コーラスが2つのスピーカーから、聴き手の位置まで飛び出して来 る。音場的な面白さを満喫。
推薦?
聖なるパイプオルガン
塚谷水無子
キングレコード
e-onkyo music(WAV・FLAC 44.1kHz/24bit 3,240円)
mora(FLAC 44.1kHz/24bit 3,240円)
VICTOR STUDIO HD-Music.(WAV・FLAC 44.1kHz/24bit 3,240円)
パイプオルガンの音はヒューマンだ。楽器が求められる音程と音色を出そうと頑張ってフル回転している様子が、出てくる音から伺えるから だ。本アルバムも、そんなパイプオルガンの魅力満載だ。パイプオルガンならてはの音場感と空気感が特にハイレゾに向く。音が2つのスピーカーの間を濃密に 埋めるだけでなく、高さ方向に低音は低い位置にあり、中高音になるに従って垂直方向に立ち登る様子は、まさにハイレゾが聴かせる音場表現力であろ う。:2012年8月26〜27日 オランダ・ハーレムの聖バフォ教会で録音。オルガンは1738年製。
推薦?
I Can’t Imagine
Shelby Lynne
Concord
e-onkyo music(FLAC 96kHz/24bit 3,200円)
HQM STORE(FLAC 96kHz/24bit 3,086円)
mora(FLAC 96kHz/24bit 3,200円)
VICTOR STUDIO HD-Music.(WAV・FLAC 96kHz/24bit 3,200円)
伸び鋭く、突き抜けるヴォーカルの鮮鋭な質感が上手く捉えられている。ベース、リズム、ギター、コーラスから成るバックの解像感が高く、明確で明 晰だ。ヴォーカルも一点も曇りがないようなクリヤーさ。明るく、粘るカントリースタイルは音的にも解像度が高い。2曲目、「バックドア・フロントポーチ」 の穏やかなバラードはしっとりとした味わい。センター位置への定位力は強靭だ。