(ライター:坂本 千波)
日本でもミネラルウォーターとして販売されている海洋深層水。在住して約10 年になるハワイ島は、海洋深層水が湧き上がる、世界でも数少ないユニークな場所として知られている。
深海約900mから取水される水は、表層の海水に比べて水温が低く、陸水や大気からの化学物質による汚染が非常に少ない。約2000年もの悠久の時をかけ、大西洋からインド洋、さらに太平洋まで約5万・の旅を経てやってくる。そして、ここ20年の間、この海洋深層水を養殖業に生かそうと、さまざまな試みがなされてきた。
中でも特にユニークなのがアワビの養殖だ。ある会社では17年前に日本の三陸からやってきた蝦夷アワビの母貝を元に、今では約450万個のアワビを養殖している。
実はハワイの海水では暖かすぎて普通なら天然のアワビは存在しない。だから「南国ハワイでアワビ?」といまいちピンと来ない人もいるかも知れないが、水温を低く保てる冷たい海洋深層水のおかげでこれが可能となっているのだ。
清浄な水で育ったアワビの質は極上で、海産物大好きの日本人にとっては見逃せない。その他に、エビやカキの養殖も小規模だが行われている。

日本産蝦夷アワビの母貝を元に、約450万個のアワビを養殖
これら養殖については、観光客のために見学ツアーも行われている。ハワイというとフラダンスやビーチのイメージが強いかもしれないが、もしハワイを訪れる機会があるなら、こんなツアーに参加して、少し角度を変えたハワイを見てみるのも面白いかもしれない。
坂本 千波 (さかもと・ちは)
サンディエゴに18年在住後、2006年にハワイ島に移住。アメリカの大手水産会社にてマーケティングを手掛けている。