街のコト

そっとしておきたい昭和の空気漂うまち(広島県広島市/エキニシ)

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(ライター:村上 健)

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「これってありですか?」。見知らぬまちを歩くと、気になる風景に遭遇することがあります。広島駅の近く、南区大須賀町の飲食店街「エキニシ」もそんな一つです。

2階を堂々とせり出した住居兼用の木造モルタル3階建てが約70軒。そのため路地は昼でも暗く、空き家もあってひっそり。高層ビルが並ぶ周辺のまち並みとはまるで異次元の空気が漂います。ところが灯ともし頃ともなれば、昭和ムードたっぷりのスタンドバーや小料理店からお好み焼き店まで、どこも店内はオジサンだけでなく、若い女性も混じってけっこうな賑わいよう。

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仕事を終えて立ち飲みの店で盛り上がる出張の人たち

そんな店の一つ、立ち飲みの店のノレンをくぐります。すし詰めの店内で、カウンターの奥から出される串焼きやチューハイは常連客からの手渡し。初対面だって、よそ者だって気にしない。他愛のない言葉を交わしながら適度な一体感が生まれます。中には、以前の店の屋号のままのテントを出す店などがあって、この気取りのなさも愛されるゆえんでしょう。

せわしない毎日に、つかの間の潤いを与える「エキニシ」。まちの発展は大切ですが、こういう一画はそっとしておいてほしいものです。

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村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。

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月刊不動産流通2015年7月号掲載

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