街のコト

モンゴルで進む定住化。 都市定住用のゲルも/ウランバートル(モンゴル)

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(ライター:片岡 恭子)

遊牧民の国モンゴル。伝統的な移動式住居は、モンゴル語でゲル、中国領内のモンゴル自治区(内モンゴル)では中国語でパオ(包)と呼ぶ。ゲルの組立てには2、3人がかりで1時間ほどかかる。まず、扉から入れることができない大きな家財道具を囲い入れるように、折畳み式の壁を広げて立てる。さらに壁に扉を取り付け、ゲルの中心に設置する天窓を2本の柱で支え、四隅から天窓と壁の間に梁を渡す。そして、内側、中間、外側の覆いをかければ完成だ。

平均的なゲルは直径4.5~6.5m

ウルフという布がかけられたトーノ(天窓)

現在、人口312万人のうち、140万人が首都ウランバートルに住むといわれる。日本の4倍もの国土の7割が放牧地だが、一説によればすでに国土面積の8割が砂漠化している。人口に占める遊牧民の割合は2割と減少傾向にあり、定住化が進みつつあるという。

そんなウランバートルには集合住宅が多いが、ゲルもよく見かける。牧草地を求めて移動する必要のない、都市に定住するためのゲルである。家賃が安いという理由でゲルに住む人もいれば、家の庭に建てたゲルにあえて住む人もいる。夏には遊牧を行い、冬には定住生活を営む遊牧民も増えてきたそうだ。

首都ウランバートルの街並み

食生活も変化している。モンゴルでは、ヒツジ・ヤギ・ウシ・ウマ・ラクダの五畜が、モンゴル人が「赤い食べ物」と呼ぶ肉と「白い食べ物」と呼ぶ乳製品をもたらす。元来、馬乳酒がビタミンとミネラルの供給源となり遊牧民には野菜、果物を食べる習慣はなかったが、都市部の定住民はロシアや中国から輸入された青果を食べるようになったという。

片岡 恭子(かたおか・きょうこ)
1968年、京都府生まれ。同志社大学文学研究科修士課程修了。スペイン留学後、3年にわたって中南米を放浪。2017年現在、50カ国を歴訪。著書に『棄国子女-転がる石という生き方』(春秋社)。

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