(ライター:村上 健)
吉祥寺の「ハーモニカ横丁」は、JR中央本線沿線で人気の飲食店街。火ともし頃には、若者からオジサンまで、大勢の人が5本の入り組んだ路地へ吸い込まれていきます。
しかし、およそ60m四方しかない区画に飲食店を中心に約100軒。どうやって営業しているのかが不思議なほど小さな店も少なくありません。物は試し、狭小店舗の一つ、人気のカレー店へ入って見ましょう。
「2種盛りカレー、チキンとエビで」。定員5人、しかも2人は立ち席というカウンター越しに注文。コトコトと煮込まれた鍋に手が届きそうです。聞けば、店の広さは0・9坪!「2階に冷蔵庫があってハシゴで上がるんです(笑)」と店主。ナルホド。カレーを口に運ぶうちにお腹がいいあんばいになったせいか、お隣さんと肩を寄せ合っていても窮屈さを感じず、連帯感すら生まれます。確かに狭いけど何だかいいぞ、この感じ。
ハーモニカ横丁の人気は、案外この狭さが生んでいるのかもしれませんね。
村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。
月刊不動産流通2017年8月号掲載