街のコト

厚木VS海老名! 神奈川県の「中心」都市はどっちだ

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(Jタウンネットより)

全国に700カ所以上あるサービスエリア(SA)の中で、最も利用者数の多いのはどこだかご存じだろうか。答えは神奈川県海老名市にある海老名SAだ。上下線合わせて1日平均約6万人が訪れる。
東京に最も近い東名高速のSAで、江戸時代の5街道で例えるなら、品川・新宿・板橋・千住のようなポジションといっていいだろう。
東名高速と圏央道が交差する交通の要衝として、現在は物流企業が相次いで進出している。

一方、県中部の中心都市として長らく栄えてきた厚木市は、神奈川の母なる相模川の対岸に位置する。
かつて青山学院大学のキャンパスもあり、本厚木駅前は大勢の若者であふれていた。ところが都心回帰の流れを受けて2003年にキャンパスを閉鎖、賑わいも陰りを見せる。

厚木と海老名の中心駅(編集部撮影)
厚木と海老名の中心駅(編集部撮影)

Jタウンネットの地域対決シリーズ、今回は厚木と海老名のどちらが「神奈川のヘソ」にふさわしいか比較する。

ゆるキャラ人気がすごいのは?

両市ともゆるキャラを起用した町おこしに熱心だ。2014年のゆるキャラグランプリで厚木の「あゆコロちゃん」は県内最高の9位を獲得した。
一方、海老名の「えび〜にゃ」は、ネット投票の開始当初2位に付けたものの、じりじりと順位を下げ、最終順位が16位だった。
どちらも立派な成績だが、あゆコロちゃんの厚木の方が地盤は強力だ。

日に日にえび?にゃがお姉さんであゆコロちゃんが弟に見える♪( ´▽`) pic.twitter.com/290STcnHwb
– あやプラナちゃん (yurucharaLOVE) 2015, 4月 4

市の基礎力と人材も厚木が上

下の図は両市の基礎データを15項目で比較したもの。
人口密度や納税者1人当たり所得、従業員1人当たり製造品出荷額等など4項目で海老名が上回ったが、残り11項目は厚木市の方が上だった。早期に都市化しただけのことはある。

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注目すべきは主要事業所の欄にある下着メーカーのアツギ。本社は海老名にあるのだが、「厚木の方が有名だから」という理由で社名を決めた。

厚木は有名芸能人も多数輩出している。小泉今日子さんと榊原郁恵さん、いきものがかりの吉岡聖恵さん――どれだけ人材が豊富なのか。

自治体としての基礎体力と人材の豊富さは厚木が優れている。

海老名に厚木駅がある理由

「厚木駅」という名前を聞けば、誰もが厚木の中心駅だと思うだろう。ところが、同駅があるのは対岸の海老名だ。
そして相鉄線が開通した当初、海老名駅は存在せず、終点は厚木駅だった。しかも同駅は現在より約200メートル北に位置していた。

「小田急五十年史」「相鉄50年史」にそのエピソードが記されている。そもそも神中鉄道(現在の相鉄線)を厚木方面まで通す計画だったが、相模川の架橋は資金難で進まなかった。
厚木町助役は神中鉄道の重役でもあり、海老名村長は相模鉄道(現在のJR相模線)の重役。当時の両地域の政治家は財界人でもあった。双方の話し合いで海老名の河原口地区の駅を「厚木」とすることに決まる。
厚木駅と厚木中心部を結ぶ乗合自動車が走ったので、なるほど厚木の玄関口といえなくもない。

1926年〜1986年の厚木駅、海老名駅の変遷(編集部作成)
1926年〜1987年の厚木駅、海老名駅の変遷(編集部作成)

ところが1927年に小田急線が開通して厚木に電車が通った。間もなく昭和恐慌が起き、神中線の延伸計画は挫折してしまう。

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神中線は現在の厚木駅の位置に中新田口乗降場を設け、小田急線河原口駅で乗り換えられるようにした。これによって横浜方面から厚木まで鉄道だけで往来できるようになった。

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太平洋戦争直前、両路線の接続方法が激変する。海老名駅を新設して、そこで乗り換えるよう変更されたのだ。1941年に神中線海老名駅、1943年に小田急線海老名駅が営業を開始する。一方で神中線厚木駅は旅客営業を廃止した。

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1943年に神中鉄道は相模鉄道に吸収合併されるが、本家だった相模鉄道相模線は1944年に国有化される。皮肉なことに神中線が相模鉄道本線となった。いわば養子が本家を継いだというわけだ。
そして相模線厚木駅は小田急河原口駅の位置に南下し、河原口駅は厚木駅と改称された。

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相鉄線・小田急線海老名駅は1973年に現在の場所へ移転する。1987年に地元の全面出資で国鉄相模線海老名駅が開業した。

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そんな相鉄線は、西ではなく東に線路を延伸しようとしている。2019年をメドに東急東横線とJR線に乗り入れる予定で、新横浜や渋谷方面へ乗り換えなしでいけるようになる。

さらにJR相模線の厚木駅と海老名駅からは、リニア中央新幹線の停車駅になる橋本駅まで1本で行ける。これほどの好条件を備える場所は神奈川でほかにないだろう。

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交通アクセス面では海老名の大勝利だ。

ららぽーと海老名が今秋オープン!

海老名駅が現在の場所へ移転したのは1973年のこと。それまでは一面の田んぼで何もなかった。開発が遅れたのが今となっては幸いしたのか、駅前開発が急速に進んでいる。

2002年に小田急電鉄が手がけたショッピングモール「ビナウォーク」が開業した。約120の専門店がある巨大施設で、マルイも入っている。厚木の1人勝ちだった買物客の流れは劇的に変わった。

ビナウォーク
ビナウォーク

とどめは2015年秋に開業予定の「ららぽーと海老名」だ。こちらは約250店舗が入る。ショッピングモール業界では日本トップクラスの三井不動産が手がけるだけに、地元民の期待は熱い。

建設中のららぽーと海老名(2014年10月撮影)
建設中のららぽーと海老名(2014年10月撮影)

最後に両市で1万平米以上ある商業施設を比較した。厚木にも大きい店はあるのだが、2008年にパルコが撤退したのが痛い。

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駅前の将来性は海老名市の方が明るい。

商店街が頑張っているのは?

飲食店の数では厚木の方がまだまだ上回っている。
ただし夜の繁華街の客引きがあまりにも強引すぎ、「安心して歩けない」という声が上がっていた。対策として市は、2014年4月に「県内一厳しい」客引き防止条例を施行した。「このままではファミリーが近づかない街になってしまう」という危機感があったのだろう。

厚木の繁華街
厚木の繁華街

条例効果で厚木は平穏を取り戻したが、今度は海老名駅周辺のキャッチが目立つようになった。市は来月から客引き防止条例を施行する。

話が脱線してしまったが、人通りの減った厚木に活気を取り戻そうと、地元商店街は様々なことにチャレンジしている。
その代表例が「厚木シロコロ・ホルモン」だ。B-1グランプリの2008年大会ではゴールドグランプリを獲得、その名前は全国に知られている。

厚木シロコロ・ホルモン探検隊公式サイト
厚木シロコロ・ホルモン探検隊公式サイト

筆者が昨年10月に厚木を訪れたとき、駅前の大型ビジョンにあゆコロちゃんが繰り返し映し出されていた。もう厚木で一番のタレントといって過言ではない。
「町を盛り上げるぞ!」という商店街関係者の熱意があるからこそ、あゆコロちゃんはゆるキャラグランプリで順位を上げたに違いない。

厚木パルコが入っていた建物は久しく放置されていたが、2014年4月に、映画館や多数のショップ、公共の窓口が入る「アミューあつぎ」に生まれ変わった。

商店街や市民の底力は厚木の方が上回っている。

厚木パルコ跡にできた「アミューあつぎ」
厚木パルコ跡にできた「アミューあつぎ」

以上、「ゆるキャラ」「市の基礎体力と有名人」「交通アクセス」「駅前の将来性」「商店街と市民の底力」の5つの角度から厚木と海老名を比較した。

結果は3対2で厚木が勝利。神奈川のヘソの座はまだ厚木にあるようだ。

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