(ライター:村上 健)
「緑被率」をご存じですか? 自然の緑地や公園、河川などが地域に占める割合を示す単位です。その緑被率で全国の大都市中トップクラスにあるのが今号の仙台市。戦災復興の区画整理で中心部は整然としたまち並みを形成し、仙台城跡のある青葉山公園をはじめ、定禅寺通や青葉通の並木の美しさも印象的です。
そんなまちに、猥雑で懐かしい風情の横丁などなかろうと考えるのは早計。「稲荷小路」「虎屋横丁」「名掛丁センター街」など、戦前・戦後から続く横丁が数多く生き残っています。
「文化横丁」もその一つ。二本の路地をつないで新旧の飲食店が軒を連ね、火ともし頃には、勤め帰りのサラリーマンで連日賑わいます。通り一本隔てると「壱弐参横丁」もあって、こちらは飲食店に青果や精肉、雑貨の店が入り交じり、大型スーパー誕生以前の昭和30年代そのままのレトロぶり。「杜の都」は、緑だけでなく横丁の多彩さも全国トップクラスなのであります。
村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。

月刊不動産流通2016年6月号掲載