(ライター:村上 健)
「オニーサン、プロ?」「いやあ、プロっていうか何ていうか……」。
日本語のたどたどしい女性から、お兄さんの上にプロかと聞かれ、つい調子に乗って普段より描き込んだのが上のスケッチ。JR「大井町」駅東口からすぐの「東小路」入口付近です。
戦後すぐから小商いの店が立ち並び始め、最盛期の昭和40年代には約200もの飲食店が軒を連ねたという路地に、今も洋食、寿司、モツ焼きの店、スナックなど50軒以上がひしめきます。
駅周辺が広々と整備された割に、再開発の手が入らなかったここは、両手を伸ばすと壁に届きそうな狭さ。その分、昭和の香りをギュッと詰め込まれたようで懐かしさが募ります。

やたらに目立つ洋食店の看板。キャッチフレーズも直球です
スケッチを終えて、腹ごしらえに洋食店へ。カウンターで評判のメンチカツ定食を待っていると、コックさんと店員の女性がやりとりしているのは、何と中国語です。うーん、「インバウンド」の当節は、メンチカツも外国人の手になるのか。ただしこの路地には、「グローバル化」より「無国籍」という昭和の表現がピッタリですが。
村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。

月刊不動産流通2016年5月号掲載