(ライター:村上 健)
在日米軍と海上自衛隊の基地がある横須賀で、すぐに思い浮かぶのは通称「ドブ板通り」でしょう。
戦後間もなくから進駐軍向けの店が立ち並ぶ通りで、ミリタリーショップや「スカジャン」が店先に吊るされた衣料品店、「外人バー」などが醸し出すアメリカンな雰囲気は、今も健在です。
一方、京浜急行「横須賀中央」駅を挟んで反対側にあるのが、昭和レトロな雰囲気を残す「若松マーケット」。こちらは戦後間もなく露天商の集まる闇市として始まり、次第に飲食店街へと変化したようです。現在は狭い一画に小さなバーや居酒屋が約70軒。こんなにたくさんの店がやっていけるのかしらんと心配になるほどの密集ぶりですが、灯ともし頃にはどこも賑やかに。

「横須賀ブラジャー」とはブランデーをジンジャーエールで割った名物カクテル
明治以来、軍港として栄えた歴史を反映して、「錨」「ポラリス」といった店名がチラホラ。仕事の疲れを癒やそうと路地裏をハシゴする千鳥足のサラリーマンと、背筋をシャンと伸ばして歩く制服姿の自衛隊員のコントラストも、横須賀ならではの光景です。
村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。

月刊不動産流通2016年4月号掲載